学食の日の夜②
学園都市の中にある各国の要人達が宿泊するホテルの一室。要人達がよく利用するホテルだけあって、使われているソファーやベット、テーブルはそれなりに高級なものが使用されている。明かりは、キャンドルの火は灯さず、月明かりと、テーブルの上にある一本のロウソクのみで、薄暗い。
また、要人達が、他の者に聞かれたくないようなことを話すにも適しているように、セキュリティは万全となっており、隣の部屋や廊下を仕切る壁には特殊な素材か魔法道具が使われているのか、外から部屋の中の様子はまったくわからないようになっている。だから、物音といえば、隣の部屋や窓の外の風とかはまったくなく、部屋の中の人の声か動いたときの物音や換気の音程度だった。
そのホテルの一室に、二人テーブルの椅子に座っていた。
一人は身長の高さが普通くらいで髪がショートで爽やかな印象を受ける9大魔王サタナキア様の同盟国の魔王マモンの次男シュウゲル。もう一人はシュウゲルと同年齢くらいに見える少女になる。
シュウゲルはいつも通りニコニコと穏やかな表情をしている。
一方で、少女の表情は緊張感や必死さ、跡がなさそうな様子がひしひしと感じられる。
椅子に座っている少女は慎重に言葉を選びながら、シュウゲルに話し出す。
「今回の仕事が無事に成功させることができれば……、」
シュウゲルは、『くすっ』と笑い、穏やかに、言う。
「大丈夫だよ。心配しなくても。
それにこれからやってもらう仕事は大仕事だ。
そんな硬くなってしまっては、ちゃんと力を発揮させることができず、失敗してしまうよ」
「ーー失敗……」
少女は急に青ざめ出しながら、ブルブルと震え、自分を抱きしめるようにする。
高級感のある椅子なく、重量感がなく、腕かけがなければ、転げ落ちてしまっていたかもしれない。
「失敗したって大丈夫だよ。次もあるからね。
今回の仕事は成功するまでやってもらうから」
「ーーえっ……、でも、前回、次に失敗したら、最後だって……、」
「そうだね、最後だって言ったね……、でも大丈夫。仕事が終わるまでは、君自身の最後はないから。
むしろ、ずっと続くことになるよ」
「ーー私自身の最後ない。ってことは……」
「う〜ん、あんまり短絡的には考えないことだね。
その時の働き次第で、状況って、いろいろと変わるんじゃないかなぁ?」
「ーーくっ……、」
「今日はもういいから、少しでも成功率を上げられるように早く戻りな」
「……、……わ、わかりました、」
少女はそうして、力なく肩を落とし、ゆっくりとシュウゲルがいる部屋から外に出たのだった。