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偽物王女~引きニー少女マルガリーテと悪魔の契約  作者: 二次元の救世主
第三章 マルガリーテ、王女と戦う!?
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エピローグ

 ――この世に、悪魔は存在した。


 彼女は、魂を差し出せば願いを叶えてくれると言った。

 だから、魂をくれてやったのに、幸せにはなれなかった。


 ……これじゃ、怒られるかな。

 本当は、願いを叶えてもらって、望んだ人生を手に入れることができた。

 それなのに、何が間違っていたのか、そこに幸せがなかったのだ。

 望んだ人生が手に入れば、それだけで幸せになれると思っていたのに。

 でも、後悔はしていない。

 あの日、自分に殺されていたはずの命が、三日も多く生きられたのだから。

 最期の三日は、初めて精一杯生きられた。

 それまでの人生がもったいなかったと思うほど充実していた。

 ――これって、幸せだったのかな……?

 だとしたら、幸せっていうのは、意識して手に入れられるものじゃなかった……?


 この魂は、天国には往けない。

 悪魔との契約に従って、彼女のものになるのだ。

 それも、いいかもね。


 アミーのことも好きだったから――。





















 ……それにしても、何でこんなに頭がズキズキするんだろう。

 普通死んだら、魂だけになって痛みも苦しみもなくなるはずじゃなかっただろうか。

 少なくとも、今まで見た本にはそう書いてあった。

 ってことは、魔法だけじゃなくて、他の本にも嘘が書かれていたということだろうか。

 それに、さっきからうるさい。

 誰かが耳元で叫んでる。

 そんなに大きな声を出さなくても聞こえているというのに。


「……テ! お願い、目を覚まして! マルガリーテ!!」

「だから、うるさいのよ!! マリアンヌ!!」

「……へ……? い、今なんて……?」

 ……あれ? マリアンヌ?


 自分で言ったことなのに、よく理解できない不思議な感覚に襲われる。

 確かに耳元で声を上げているのはマリアンヌだ。

 しかしなぜここで、マリアンヌの声が聞こえたのか。

 それは、この目を開ければわかること。


「ん……」

 ゆっくりと、まぶたを開ける。

「おお、マルガリーテ」

「王女様……」

 マルガリーテの瞳に映ったのは、初めての友達であるマリアンヌ、父であるバルバロッサ、執事のロバートさん、そしてたくさんのメイドと執事たち。


「ここは……?」

「マルガリーテ! よかった……!」

 夢うつつのマルガリーテを、マリアンヌが強く抱きしめた。


 これが夢だったとしても、上等な夢だ。

 だけど、この力強さは、決して夢なんかではない。


「私は、助かったの……?」

「ええ、そうよ。エリーゼという方が、あなたを矢から救ってくれたの」

「ただ、まあその時のショックでマルガリーテは気を失っていたんだ。しかし、よかったじゃないか。こうして意識を取り戻したことだし。な、皆もそう思っているだろう?」


 マルガリーテを囲んでいた城の人たちはそろえたように首を振った。

 父さんは、これでその話は終わりと言わんばかりに「よかった」を連発していた。


「……もしかして、私の頭がズキズキするのと、何か関係があるの?」

「う……」

 全員の表情が固まった。


 案の定、真相はそれだった。

 ヘンリーが放ったボウガンの矢がマルガリーテに刺さる直前、押し倒されたエリーゼがマルガリーテの頭を蹴り飛ばして救ったのだそうだ。

 ……まったく、なんて王女なんだろうか、エリーゼは。




 それから数日後、頭の傷もすっかり癒えたマルガリーテは、まるで元の家にいたような生活に戻った。

 運命を変えた自分にはこの世界で生きていく権利があると思った。

 悪魔を召喚したことも、王女になったこともたいしたことではない。


 運命を自分の意志で変えた。


 だからマルガリーテは特別な存在だと自分自身に証明できた。

 特別な存在であるマルガリーテにはどんな生活も許されるのだ。

 存在自体が特別なのだから。


 好きなことを考えて、一番に思い浮かんだのは魔法の研究だった。

 王女として贅沢な暮らしには憧れてはいたものの、実際に手に入れてしまうとそれもたいしたことではなくなってしまったのだ。

 当たり前のことには興味など持てない。

 マルガリーテの中身は変わっていないのだから、趣味だって変わるわけはなかった。

 すでに、人間に魔法は使えないと悪魔に証明されてしまってはいるが、無駄なことだとは思っていない。

 悪魔にだって起こせない奇跡をマルガリーテは起こしたのだ、いつかは悪魔にも使えない魔法だって使えるかも知れない。


「なあマルガリーテ」

 ベッドに寝っ転がって魔道書を読みふけるマルガリーテを、アミーが覗き込んだ。

「何?」

「お前さあ、引きこもりに戻るなら別に王女じゃなくてもいいんじゃねえか?」

「馬鹿言わないで。私の家は一生何もしなくても生きていけるほど裕福じゃないのよ。王女だから引きこもれるのよ」

「……ってことは、お前一生引きこもるつもりかよ」

「さあ、どうかしらね?」


 今のところマルガリーテには不満は何もなかった。

 元々、魔法の研究には誇りも自信もあったから。

 華やかな家族の中にいると、周囲の目を気にして胸を張ることもできなかったが、今は違う。

 王女という立場がそういう気持ちにしたわけではない。

 自分の信じた道を追求することが、運命を変えたから。


「ハァ……、せっかく楽して魂が手に入ると思ったのに、ろくでもねー魂と契約しちまったよ」

「それはご愁傷様」

「ったく、お前の悪運はあたしが使うどの魔法よりも強力な魔法だよ」

「プ……アハハ……、違いないわ」

「でもまあ、お前のようなろくでなしは見ていて飽きねーから。お前と一緒だと、これからも退屈だけはしないですみそうだよ」

 そう言って、アミーは姿を消した。

 やっぱり素直じゃない。



 ここから先の人生は、まさに悪魔でも予想のつかないものになるだろう。

 まだ幸せはわからない。

 そこに不安はなかった。

 どんな未来が待っていても、意志一つで運命は変えられるのだと、気づいたから――。


            ――終わり――

これは、某新人賞に応募するために書いた数年前の作品です。

続きの構想もなくもないのですが、取り敢えず今回で締めさせていただきます。

最後までおつきあいありがとうございました。

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