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白石たちは再びS:TARの会社へ来ていた。
「刑事さん、お話したいことって?」
会議室で早速、秘書の清水が訊いた。
白石は黙っていたが、少しして片桐が口を開いた。
「清水さんに、今回の事件の真相をお話ししようと思いまして……」
「事件の真相? 犯人が分かったんですか?」
「ええ」
「それなら、木下副社長や水田くんもお呼びした方がいいんじゃないです?」
それから、清水がそう言った。
「いえ、単なる推理に過ぎません。だから、清水さんに聞いていただくだけで結構です」
「……分かりました」
片桐は一度口を閉じ、再び口を開いた。
「単刀直入に……犯人は清水さん、あなたです!」
片桐は清水を睨み付けるように言う。
「え!? あたし!!」
清水は目を丸くして言った。「どうしてあたしなんです?」と、彼女は訊いた。
片桐は話を続ける。
「第一発見者は清水さん、あなたでお間違いないですね?」
「ええ、そうよ」と、清水は言う。
「あなたは、どのようにして社長を発見しましたか?」
「それは……私が社長室の鍵を開けて発見したんです」
「そうでしたね。つまり、その時、社長室の鍵は閉まっていたわけですよね?」
「はい」
「そういや、社長室の鍵は誰が持っていましたっけ?」と、片桐が訊く。
「私と……社長だけです」と、清水は答える。
「社長さんと清水さんのみですか……。社長は殺されてしまったわけですよね。となると、鍵を持っているのは清水さん、あなただけになります!!」
片桐がそう言うと、清水はハッとした顔をした。それから、彼女が口を開く。
「ええ……確かにそうなるわね。でも、あたしじゃないんです。もしあたしだとするなら、社長をどのように殺そうとしたんです?」
それから、清水がそう訊く。
「おそらくこうだと思います」
片桐はそう前置きして話をする。
「清水さんは社長を何らかの理由で社長室へ呼び出した。その時、清水さんは社長室のクローゼットに隠れていたんです。で、しばらくして、社長はやって来た。すぐにあなたはクローゼットから出て、持っていた凶器で社長を殺害した。彼を殺害した後、扉から出て自分の持っていた鍵で社長室の鍵を閉めて、そこを去った。そして、翌朝、いつも通り社長室の掃除をしようと社長室へ行き、鍵を開けて社長を発見した……という訳です」
清水は片桐の話を黙って聞いていたが、しばらくして口を開いた。
「片桐さん、でしたっけ? 残念ですけど、その推理は外れです!」
「え……!?」
清水にそう言われて、片桐は呆然とする。白石も目を丸くした。
「全く違うんですか?」
「ええ。犯人は私ではありませんし、その推理も違います」と、彼女は言った。
「そうですか……」
片桐は残念そうに言う。
「でも、確かに鍵は一つ、私が持っています」
清水はそう言って、カバンから自分の持っている社長室の鍵を取り出し、二人に見せる。それから、「それと、もう一つは社長が持っていました」と、彼女は言う。
「持っていました? ということは、今、社長は持っていないんですか?」と、片桐が訊いた。
「はい……」と、清水は小さな声で言う。「実は、社長の所持品を見せてもらった時に、社長が持っていた鍵が無くなっていたんです!」と、彼女は言う。
「え!?」
「うそ……!?」
片桐と白石は同時に驚く。
「そ、そ、それじゃあ……」と、白石が言う。
「誰かが持っていったってことか……」
それから、片桐がそう言った。
「おそらく……」と、清水が言う。「それから……」
ややあって、清水が口を開く。
「何です?」と、片桐は訊く。
「実は、以前、水田くんから聞いた話なんですけど……。社長って『愛人』がいらっしゃるそうなんです……」




