3話『いきなり勇者に襲われました。どういうことですかこれは?』
「見つけたぞ。魔王!」
目をさますといきなりそんな事を言われた。本当にね、もう何が何だかですよ。頭が混乱しっぱなしだよ。何で魔王になって、何でいきなり勇者来てるの!?。意味がわからないよ。普通、魔王ってラスボスだよね。
とりあえず、深呼吸だ。落ち着け僕。大丈夫、何も問題ない。よし、辺りと相手を観察して見よう。
辺りは薄暗いが、この部屋は体育館ぐらいの広さがあり、石造りである事がわかった。自身から見える物と言えば、自身が座る玉座、そこから入口に伸びる赤絨毯、あと光源である燭台が多数あるぐらいの殺風景さ。何だろう、少しね涙出そう。こう言う部屋ってもっとさ豪華絢爛なんじゃないかな。勝手なイメージだけどさ。まぁ、質素の方が落ち着くけど、それにしても限度って物がさ。
ハー、それはあとで改善しよ。今の問題は責めて来た相手だよね。と言う訳で相手を見る。
どうやら相手は2人パーティーのようだ。
赤く塗装した鎧を纏い、鎧に覆われていない手や顔は、日焼けできれいな焦げ茶色をしている。茶髪の短髪、活発な雰囲気に似合う大きな瞳が特徴的な少年。背中に剣を背負っている事から、剣を主装としている事がわかり、彼が勇者なのだろうと推測出来る。
もう一人は長い銀髪を首の後ろで1つに纏めている。顔立ちは整っており、特に蒼い瞳は人目を引き付けるだろうが何故か、ぼろ布を着ており、覗く素肌は汚れや痣が浮かんでいた。極めつけに彼女は、何故か大荷物を背負っていた。
外見はわかった。あとは、具体的な強さを調べよう。とりあえず 《人物開示》で相手を見てみる事にしよう。
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名前:レミオス・バルーム
種族:人間 自称勇者 (人拐い)
レベル.15
筋力:14 持久力:13 体格:15 容姿:10
走力:8 精神力:12
体力:28 魔力:50
装備
・銅剣 (劣化ドロップ品)
・市販鎧 (カスタム:赤)
技能/魔術
・我流剣
・火球
・回復光
・硬質
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名前:ルリ・アインベルト
種族:人間 奴隷 (被害者)
レベル.3
筋力:6 持久力:5 体格:6 容姿:15
走力:3 精神力:4
体力:11 魔力:0
装備
・ぼろ布
・隷属の首輪
特殊
・《魔獣の種》
・《隷属契約》
ーーー
ん?勇者じゃなくて、自称勇者。しかも、人拐いって(笑)。相方さんは (被害者)って事は拐われたの!?勇者が犯罪者って、流石にそれわないよね。
「見つけたぜ、魔王!」
へぇ?
声がした方を見ると、入口からこちらに向かって歩いてくる、蒼い鎧を着込んだ、色白黒髪の男がいた。
なに?自称勇者の仲間か何かなの?。
疑問が尽きぬなか自称勇者が蒼鎧に向かって口をひらく。
「今頃来たって、兄貴の出番なんてないから引っ込んでな。」
「おまえこそ、俺よりも弱いのだから引っ込んでろ」
にらみ合う二人。えっ?この二人兄弟なの?。とりあえず《人物開示》。
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名前:レグルス・バルーム
種族:人間 自称勇者 (盗賊頭)
レベル.20
筋力:13 持久力:15 体格:16 容姿:13
走力:12 精神力:15
体力:31 魔力:70
装備
・鉄剣 (ドロップ品)×2本
・市販鎧 (カスタム:蒼)
技能/魔術
・盗賊剣
・水球
・氷柱
・激剣
ーーー
兄も自称勇者かよ!。しかも、盗賊の頭って。何でそんなのが自称とは言え勇者やってんのよ。
頭痛くなって来た。
ティアが言ってた事ってこう言う事なのか?。勇者を犯罪の免罪符にしてる連中がいて、周りがそれを利用する連中と、泣き寝入りする連中がいる。そして、この世界は圧倒的に後者が多い状態なのだろう。
考えれば考えるほど、頭の痛い話しだ。
こんなのが世界に溢れてるのか。正直、関わりたくないな。とりあえず、こっちをほっぽって殴りあい始めたから傍観してよ。
ーー
しばらくして、ボロボロにされた弟 (赤鎧)がまったを掛ける。
「すんません、兄貴。自分の負けでいいんで、まず魔王倒しません。」
あ、いちおう僕の事覚えてたんだ。ちぇ、そのまま忘れればいいのに。兄 (蒼鎧)はその話しに乗ったのか、鋭い眼光をこっちに向けてくるよ。
わっ!、いきなり、魔法の詠唱してるし!
「「水球」!」
「「火球」!」
水と火の球が兄弟勇者から、こちらに向かって放たれる。始めて見る魔法が、殺しにかかる魔法とかやになるわ。2つの球を玉座から転がり落ちるように避けるが、変わりに玉座が粉砕されてしまった。自称勇者達は舌打ちをし、次弾の詠唱に入る。
『火球』、『水球』を修得しました。
なんか、頭のなかで聞こえた。これって相手の魔法を修得したってことか。これなら《万物創作》を使用出来る。なら、こっちも反撃の魔法を構築しよう。あっ、時間がないし、簡単なの創ろっと。
《火球》の魔法を基本に、頭の内でも構成を書き換えていく。形状は設定せず、ただ放出するだけにしよう。属に言う、『吐息』や放射に分類される魔法だ。個人的には吐き出す『吐息』より、掌から放射する放射系の方が格好いいから好きなんだけど、創ってる時間がない。って訳で今回は、『吐息』でいこう。放射系は今度、時間がある時にでも創ろうと思う。
魔法の完成イメージとしては、火炎放射器が近いと思う。もちろん、魔法の名前も設定済みだ。初のオリジナル魔法が犯罪者の撃退用と言うのは悲しいけど、このまま殺られるつもりは更々ない。
そんな事を思いながらも魔法は完成し、魔法を解き放つ。
「「海炎爆撃」!」
吐き出された炎は壁のように強大で部屋のほとんどをおおいつくした。自称勇者の二人も瞬く間に呑み込み、悲鳴をあげる間もなく丸焼きになっていく。
あっ!?そうだ、被害者の女の子は無事だろうかと、まだ炎が燃えているなかを見渡すと、部屋の隅で丸くなるように倒れているのを発見する。どうやら、気絶しているが無事みたいだ。
しばらくすると残炎も消え去り、跡に残ったのは黒焦げとなり、個人を判別する事も出来ない程崩れた、自称勇者の姿だけとなった。
その姿を見ると、気分が悪くなり、その場にへたりこんでしまった。いくら殺されそうになったから、仕方なくとは言え、相手を殺すなんて事を現代日本に暮らしている民間人に経験が有るわけもなく......。
「ウプ.........オエ......」
当選こうなるよね。
こんなの感じで、女の子が目を覚ますまでへたりこんでいた。
ああ......、バケツほしい......。
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以下オマケになります。
登場魔法説明。
・火球
...火の球を精製し、打ち出す魔法。配管工のヒゲが使うアレ。
・回復光
...ホ○ミ。とかケ○ル。怪我を治す魔法。
・硬質
...身体や物を固くする魔法。効果は低め。
・水球
...水の球を精製し、打ち出す魔法。
・氷柱
...地面に氷の柱をつくる魔法。視認できる範囲が効果範囲だが、距離が離れるほど使用魔力が増える。
・激剣
...バー○ーカー。自身を凶暴化させて力を上げる魔法。効果は短く、使用後の疲労度が高い。
・海炎爆撃
...主人公オリジナル魔法。火球をベースに放射系 (面攻撃)へと変貌させた。正に迫る炎の壁である。主人公のバカ魔力のせいか、規模と威力がおかしな事になっているが、通常の魔法使いが同じように魔法として作製してもこの1/3も威力・範囲はない。
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