4話『初襲撃の後ですが、被害者の女の子と仲良くなりました。』
私、ルリと言います。
そこそこ裕福な家に、そこそこな身分の両親の元に産まれ、そこそこな十数年の人生を歩んで来た普通の女の子です。
それが数ヵ月前、私が暮らす街にある学院の帰り道、見知らぬ人達に身代金目的で拐われてしまいました。両親は色々と手を打っていたみたいですけど、結局身代金を準備出来ずに、私は人拐いに奴隷契約を結ばされてしまいました。
この奴隷契約というものが、また厄介なもので、主人を裏切るような言動をすると、奴隷に苦痛を与え、最悪死を招く事もあるみたいです。実際、無理やり奴隷にされた平民が、主人である貴族に復讐しようとして、奴隷契約によって死亡した例が過去にはいくつもあるそうです。
そんな事情から私は、人拐いレミオス様......本当は様付けなんてしたくないけど......に飼われて居ました。
それが、ほんの1ヶ月前ほどに、新しく魔王が出たから『俺は勇者になるぜ!』とかほざき、私を荷物持ちに旅に出ました。
勿論、旅先でもこの男がおとなしくしていた事などなく、立ち寄る村々では金品や食料を無理やり奪い、街では商店に脅して商品を安く手にしたり、若い娘さんを無理やり抱いたりしていました。
それでも自称勇者とは言え、本当に魔王を討伐してしまった後の事を考えると、逆らう訳にはいかず、泣く泣く従う人が多かったです。
勿論、私も奴隷になった際、所持品を全て奪われましたし、何度となく犯されました。正直、こんなの男、早く死ねと思っていました。
それが、魔王城?にたどり着き、魔王との闘う直前に、あの人の兄も現れ、兄弟ゲンカを始めてしまいました。ここに来て下げる評価なんて有りもしないのですが、さらに下げるような行動を、よりにもよって魔王の前でしているのです。
正に愚劣です。彼の魔王ですら関わりたく無さそうな目で御二方を見ています。
しばらくして、兄弟ゲンカも兄の勝利と言いますか、弟の見苦しい提案に兄が乗り、御二方で魔王に挑むようです。
巻き込まれたくない私は、そっと部屋の隅に移動し傍観しようとしましたが、魔王の吐き出す炎に驚き、気絶してしまいました。
そして現在、私の目の前にその魔王がいます。
外見は黒髪に黒い瞳、それに優しげな表情。身長も私よりも少し高い程度ですので、百六十エルト(1エルト=1㎝)前後でしょうか。
ですが、いくら優しそうに見えても、この魔王は自称勇者兄弟を一撃で燃やし尽くしたのです。さらに言えば、まだ力を隠している可能性があります。
「そんなに警戒しなくても、何もしないよ。」
「さすがに、魔王を前に警戒するなと言う方が無茶な要求かと思いますよ」
その言葉に魔王は『だよね...』と乾いた笑い声を出しながら、ガックリと項垂れてしまいました。
この反応はいささか、想定外です。
私なんて、あっという間に蹂躙されてしまうのだと思っていました。ですが、この魔王は一向にそれをしないどころか、私を気遣おうとすらしています。
私はそんな魔王に、興味がわきました。
学院でも、魔族は確実に滅ぼすべきと教育されていますが、目の前の魔王は、そんな対称に見えなかったからと言うのも、理由になります。
だから、聞いて見ました。何故貴方は私を襲わないのかと。すると......
「いや、無理や襲うとか、常識的に駄目だよ、そんな事。」
「では、貴方は私や他の人達を襲わないのですね?。 」
「当たり前だよ。ただ、殺されそうになれば反撃はすると思う。死にたくないし。」
魔族で、自分からは人間を襲わないと言うのは驚きです。魔族が悪とされる理由の中には、魔族は凶暴で、人間を殺す事に悦を見いだす種族だとされており、実際に過去には、いきなり魔族に襲われて滅んだ村がいくつもあったと言われています。
「(でも、死にたくないから反撃はする...って普通の反応なのに、この人が言うと何だか、おもしろいですね。)」
「ふふふ......」
思わず笑い声も出てしまいました。
そんな私を見てこの人は『やっと笑ってくれたね』と優しい笑みを浮かべています。
「(ああ.....この人は悪い人じゃない、信じられる。)」
いつの間にか、私はこの魔王......彼を信じていました。だから、これまでの経緯を私は彼に話した。彼は、私の話し黙って聞いていましたけど、話し終えるとただただ『そっか...』と一言だけ呟き、あとは頭を優しく撫でてくれました。
ーーー
「(思ってたよりもずっと重いな。)」
彼女.....ルリが目を覚まし、まずは警戒を解く事から始めた訳だけど、僕には女の子と触れあった経験なんて、妹の美夢ぐらいしかなかった。
だからと言って、下手な言葉や同情は彼女も望んでいないと感じられたから、結局僕にできる事は、美夢にするみたいに頭を撫でてあげる事だけだった。
「(そう言えば、美夢が泣きそうな時は、いつもこうして慰めてたな。)」
懐かしさを感じると同時に、最後の瞬間にはそれをしてあげられなかった事が悲しかった。
きっと、僕が死んで悲しんでくれるのは、妹の美夢ぐらいしかいないだろうから、その妹に最後の言葉も、慰めてあげる事もできなかったから。
昔の事を思い出しながらルリを撫でていると、奴隷契約の事を思い出した。《人物開示》に出ていた《奴隷契約》を《万物創作》でどうにか出来ないかと思ったからだ。
主人である、自称勇者弟が死んだので、もしかしたら消えている可能性もあるけど、油断出来ない。何せ、奴隷に苦痛や死を与える類い、つまり呪いの部類なんだ。主人が死んだ程度で無くなるとは思えなかった。
そして《人物開示》で確認して見ると、案の定残っていた。
それをルリに伝えると、僕に任せると言ってくれた。なら、あとは全力で彼女を助けるだけだ。
この《奴隷契約》と言う呪いだけど、調べて見ると構造は至ってシンプルで、大まかに分けて主人への害悪を感知する部分と、奴隷に苦痛を与える部分に分かれていた。なら、感知する部分と苦痛を与える部分を切り離してあげれば、害悪を感知しても、苦痛を与える部分へ信号を送れず、苦痛を与える部分は動作しないだろう。でも念のため、苦痛回路 (僕命名)をまるごと取り除く事にした。
「(時限式に彼女の身体に何かあったら嫌だしね。)」
作業事態は三十分も掛からず終わったけど、残りの部分......害悪感知 (僕命名)を組み換えて、彼女への害悪を抱く人の居場所ヲ感じる、いわゆるレーダーを作ってみた。
これは、彼女がまた厄介事に巻き込まれるのを、出来るだけ避けられるようにするためだ。事前に解れば対処出来る事も多いからね。
この後は、お城の中を見て回ろうと思う。
ルリにいつまでもボロ布を着せておくわけにもいかないから、布や服に使えそうなのがないか探しにいくつもりだからだ。
勿論、ルリもいっしょにつれて行く。このまま、この部屋に残して置くと、また自称勇者が来て、この子に危害を加えるかもしれないからね。
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以下オマケです。
ルリの奴隷解放後のステータス公開
名前:ルリ・アインベルト
種族:人間 上位平民
レベル.3
筋力:6 持久力:8 体格:6 容姿:15
走力:5 精神力:10
体力:14 魔力:10
装備
・ぼろ布
特殊
・《魔獣の種》
・《害悪感知》
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