2話『女神様はいじわるです』
『おお、凡人よ、死んでしまうとはなさけない。』
上下左右も不確定な真っ暗闇の中、目を覚ました僕にかけられた一声がそれだった。
『あれ?反応ないわね?』
首をかしげる少女。なぜだか顔を認識する事が出来ないけど、長い黒髪を地面?まで垂れ流しているが外見は小学生ぐらいかな?そう言えばさっきから身動き出来ない!?......って、声も出ないし!?
しばらくして、少女は何かを思い出したのか、掌をポンと叩き、気まずそうに苦笑を浮かべた。
『......ア、アハハ......。そうだった。ここだと私の許可がない奴は何にも出来ないんだった。』
そっか、君の許可がないと何も出来ないのか......って、お前の所為か。速くなんとかしてくれ。このロリキャラさんめ。
思わずツッコミが出てしまった。少女はロリキャラ呼ばわりされた事が気に触ったのか見るからに不機嫌そうになる。
『誰がロリキャラよ。まったく、凡人の癖に女神様をロリキャラ呼ばわりとは、罰当たりもいいとこね。そんな事、言うと許可を出してあげないんだから。』
ちょ、ちょっとまって!。許可が出なかったら僕はどうなるの?!。
『さぁ?、ずっとそのままか。魂が消失するんじゃない?。あ、ついでに魂が消失したら転生も出来ないからね。』
て、転生出来ないって、まさか......。
嫌な汗が身動き一つ出来ない身体を伝って落ちて行く。
『そのま・さ・かであってるわよ。天上天下、唯我独尊、完全無欠に消えるよ。無に帰るって言えば解るかな?』
やっぱりかーーー!?
すみませんでした。本当に、真剣ですみませんでした。許してください。
てか、四字熟語は絶対ただ使いたいだけだろ!
『ぷっ、ハハハ......。ちょっと必死になりすぎ。お、おかし。ひ、笑い止まんないよ。』
イヤ、あの、こっちは消えるかどうかの瀬戸際なんですけど!?。本当、謝りますから許可してください。
自称女神の少女は必死な僕を尻目に笑い転げり、ひとしきり笑い終えると許可をくれた。
なんか、久し振りに大笑いさせてくれたお礼にロリキャラ呼ばわりは許してくれるみたい。
『まぁ、もともと貴方には用があって呼んだから、消滅させる積もりは無かったよ。ムカついたからただの脅かしただけだよ。ゴメンね。』
「ふざけないでください。こっちは本当に消えるかと思って、気が気じゃなかったんですよ。」
ニヘラと笑う自称女神にカチンときた僕は思わず怒鳴ってしまった。だけど、その際、声が出たから本当に許可をくれたようだ。何より、そんな事が出来るこの少女は本当に女神なのだと理解する。
そう言えば、声が出ない時も普通に会話してたな。
『だから、謝ってるじゃないか。涼風 佑樹君。あ、ついでに名乗っておくよ。私はティア。これから君が転生する世界 《オリエント》を管理するものだよ。』
ティア。その名前を聞いたとたん、彼女の顔を認識する事が出来た。大きな目に蒼い瞳、小振りな唇が絶妙なバランスで配置され、かなりの美少女だった。
「それで、ティアさん。僕はそのオリエントって世界で何をすれば良いの?」
ティアは僕に用があると言っていた。それに転生させるとも言ったのだ。なら、その世界で何かさせたいのだろ。
『うん、簡単に言うと魔王やって。』
「絶対にイヤです。」
即答である。
何が楽しくて、最終的に勇者に殺される魔王など誰が好き好んでやるものか。まぁ、なかにはいるかもしれないけど、少なくとも僕はイヤだ。
『って、話しぐらい聞いてよ。てか、やってよ魔王。』
涙目だ!?。女神としてのプライドはないのか、僕の回りを駄々を捏ねるみたいに転がっている。
しばらく転がっていたが、おもむろに立ち上がった。諦めたのかため息を付き「しょうがない」とか呟いてる。そして、僕に紙を突き出した。
『貴女がそこまで嫌がるなら魔王はならなくても良いわ。でも転生するにはこの書類にサインしないといけないの。だからさっさとサインして、転生すればいいのよ!?』
半ばやけくそなのだろう。また、涙目になってるし。でも、僕も魔王なんてやりたくないし、さっさと転生しちゃおう。
思えばこの時、もっと注意深く書類に目を通すべきだったと、このあと猛烈に後悔する事になる。
「はい、サインしたよ。」
『サイン......したわね。』
ニヤリと笑うティアを見て僕は咄嗟にヤバイと感じ差し出した書類を確認しようとするが、ティアに物凄い速さで引ったくられてしまった。
『まさかこんな手が使えるとは思ってなかったよ。魔王就任おめでとう。』
やっぱりかこのヤロー。
『いやー。こんな古典的な手に引っ掛かるなんて、お人好しもいいとこだね。』
書類を何処かにしまい込み、にこやかにそんな事を言ってくるティアに軽く殺意が湧いたが、サイン済みの書類が向こうにある以上、何を言っても無駄だろうと、諦める事にした。
「それで魔王になって何しろって言うんだ。」
もう自棄である。魔王になる事が決まった今。下手に情報を隠されるより、出せる物は出してもらおうという心構えだ。ムカついていたから、じゃっかん語気が荒いのは目をつむってほしい。
『それがね......って、事なの。わかった』
ティアの話しを要約するとこういう事らしい。
世界に人類が産まれ、善悪が生まれた。だけど、次第に悪が強くなり、最終的に魔王を名乗る人類が世界を滅ぼそうとしたらしい。
ティアは、さすがにそれは不味いと勇者を作くり、自称魔王の一味を滅ぼした。......のは良いのだが、今度は逆に善が強くなりすぎて、正義という大義名分のもと、悪事を働く者達があふれた。......っで、今度は魔王を作ったけど善が強くなりすぎて惨敗した。
そこで、今度は強い魔力を持った人物を魔王にジョブチェンジさせようと考えた。そこに都合よく、死んだ僕をこの世界に連れて来たらしい。
そして、善悪のバランスを戻す為に働けって事らしい。
「何かの間違いじゃないかな。僕に強い魔力だなんて。」
『いやー、私も最初はそう思ったんだけどね。だけど見てみてビックリ。とんでもない数値じゃないかって事ですぐさま呼び寄せ訳さ。まぁ、論より証拠ってね、これを見てみて。 《人物開示》』
ーーー
ステータス
名前:涼風 佑樹 種族:人間
レベル.3
筋力:9 持久力:9 体格:9 ....
体力:9 魔力:10000000
装備
・普通服
技能/魔術/特殊
《女神の加護》
ーーー
僕って、見事に平均値だな。って、魔力だけ数値がおかしいんですけど!?。それと加護ってなんだ。
『君の魔力量は馬鹿げてるの。それこそ神話に出てくる現象を再現しても、お釣りがでるレベルにね。あと、加護は私の加護だよ。流石に何も渡さずに異世界にほっぽり出さないよ。』
うん。加護に対して突っ込んだのはそこじゃないからね。あと、そんなに、僕の魔力量って凄いのね。
『まぁ、具体的に私の力の一部と特殊な魔法を君に宿したの。魔法はさっきの 《人物開示》と 《万物創作》の二種類。力に関しては後のお楽しみってことで。』
そのあと、《万物創作》の魔法についての説明を受けた。この魔法は、対称構造の組み換えや、2つの対称を組み合わせるなどして物を創る魔法らしい。物だけに関わらず、事象も創れるらしい。
だけど、対称に設定するには自身がその魔法や概念を所持しているか目の前にある事が条件のようである。
どうやらこの魔法、余り使い勝手がよろしくないようである。
『私からの餞別はこんなものかな。てな訳で行ってらっしゃい。』
ガゴンという音と共に僕の足元に大穴が空いた。そうなると当然落ちる訳である。
「ふーざーけーんーなー!?」
落ちて行く僕を見送るように淵から覗きこんでいたティアがどんどん小さくなっていく。その顔は物凄い笑顔だったのが腹立たしかった。
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以下オマケになります。
一足先になりますが魔王状態のステータス一部公開です。
ステータス
名前:涼風 佑樹 →? 種族:魔王
レベル.1
筋力:45 持久力:45 体格:9 容姿:9
走力:45 精神力:45
体力:225 魔力:10000000
装備
・魔王服
・魔王の杖
技能/魔術/特殊
《女神の加護》
《人物開示》
《万物創作》
魔王にしては最弱じゃないでしょうかね?
まぁ、まだレベル1ですので、これからどう成長するやらです。
続いて女神です。
名前:ティア 種族:女神
レベル?
筋力:? 持久力:? 体格:? 容姿:カンスト
走力:? 精神力:∞
体力:? 魔力:?
装備
・?
技能/魔術/特殊
《人物開示》
《生命創作》
まだ、ほとんど全貌がわからないですねこの女神様。まだまだ魔法も技能も持ってます。って今後も出番あるかなこの女神様。
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ついでですが、この世界の平均値は9~11、体力、魔力は18~25、レベルが6~9となります。