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平凡魔王の善行日記  作者: 雪月華
魔王城周辺
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1話『こうして僕は死にました』

僕を一言で表すなら大半の人はこう答えるだろう。


平凡な奴と。


学業も、運動も、容姿も、全てが平凡。

何か取り柄がある訳でもなく、趣味も読書やRPGのやり込みぐらい。そんな平均値まっしぐらな僕には正反対の妹がいる。


妹は学業も、運動も優れ、腰まで届く黒髪に小柄な顔、平均より身長が少し小さいがバランスの取れた体型を持つ美少女なのです。

僕の一学年下ながら高校のミスコンでグランプリ取ったりして、高校のアイドル的な存在となっていた。


そんな妹がいると、両親は僕をぞんざいに扱い、いない者として扱った。それもそうだろう、こんな僕に労力をかけるより、優秀な妹へ労力をかけた方がよほど妹の将来の為に良いだろう。


でも妹、美夢(みゆ)は僕の事を慕ってくれていた。単純に嬉しく思うけど、高校も僕が居るからと同じ高校に入学しなくてもよかったと思う。両親は本当はもっとレベルの高い私立校に美夢を入れたかったらしく、この事を美夢のいない所でさんざん小言を言われ続けたけど、幸いな事に暴力を振るわれたことはなかった。


美夢が入学して1年が立った頃、その問題が現れた。

美夢の件に嫉妬した連中から虐めが起き始めたのだ。


最初の頃は大した問題ではなかった。それこそ、靴や小物類がなくなる程度だったし、その程度なら、小学校や中学校でも経験していたので気にしなかった。それが、虐めをしている連中には気に食わなかったのだろう。虐めはエスカレートしていった。


この事は、両親や高校に伝えるつもりはなかった。伝えた所で現状が変わる事もないだろうし、何よりも美夢に要らぬ心配をかける事になる。


そんな感じに虐めはエスカレートしていき、カツアゲや徹底的な無視等に発展していった。


そんな状況になると、僕も学校に行くのが億劫になり、やがて引きこもりになった。両親は僕が引きこもりになっても何も言わなかった。元々、僕には何も期待していなかっただろうし、美夢の将来に迷惑がかからなければどうでもいいという感じだった。


引きこもってしばらくは、担任が部屋の前まで来て何か話していたようだが内容は覚えてない。数ヶ月が立つ頃には担任も来る頻度が極端に減りだした。最初は一週間に一回が二週間に一回になり、月に一回になった。担任も僕よりも学校に来ている生徒の対応で忙しいのだろう。


そして、部屋に来るのは美夢だけになった。


僕が学校に行かなくなって数ヶ月たった夜、美夢は僕の部屋にやって来た。それまでは声をかけるだけだったけど、その夜は部屋のなかまで入って来た。


しばらくは僕が学校に行かない事で小言を続けていた美夢だったけど、次第に自分がどれだけ僕との高校生活を楽しみにしていたかになり、学校が別になりどれだけ寂しかったかへ変化していった。最終的には何かあるなら自分に相談してくれと泣きながら言われてしまった。


さすがに泣かれるのは予想外と慌てて自分が虐めにあっていた事を説明をする。美夢の人気の所為ということはうまく誤魔化せたと思う。


当然こんな事を説明すれば、美夢は怒るだろう。

まぁ...結論から言えば怒ってた。それも、今まで見たことがないくらいに。それこそ、虐めていた生徒達と学校にどう制裁するかを、小声でぶつぶつと永遠に呟き続けていたから。

しかも、やたらと暗い笑顔を浮かべてたし(汗)。


昔から美夢は身内や弱い者が困っていると、全力で助ける娘だったけど、どうやら高校生になってさらにパワーアップしていたようです。


「お兄様、安心してください。全てこの美夢に任せてください。」


兄としては妹の成長は嬉しく思うけど、この成長の仕方には心底不安しか感じません。


「美夢、僕の事は余り気にしなくても良いから、無茶はしないでね。」


取り敢えず、無茶だけはしないようにと釘を指したけど、それで聞くような娘じゃないし、絶対に無茶するだろうと言う予感はあった。そしてその予感は的中する事になる。


ーーーーー


美夢と話した夜から数日たった夜、珍しく母から声をかけられた。美夢が塾から帰って来てないが連絡はあったか?と言うものだった。

連絡はなかったと伝えると、母はお約束の小言をたれ、去っていった。


そういえば今、何時だろうと時計に目をやると、夜の22時になろうとしていた。

美夢が通っている塾の時間はとっくに過ぎていた。


美夢に限って寄り道をするとは考え難い。そうすると、何かに巻き込まれているのか?

考えられるのは僕の虐め問題で、よからぬ奴らに絡まれているということだが、そちらは余り心配していない。

美夢は小柄な体型に反し、合気道初段、空手黒帯と武道でもハイスペックなので、手を出した相手の方が危ないのだけど、多勢に無勢では分が悪くなるだろう。


(その際は、忠告通り逃げてくれる事を願おう。)


そして、時計が22時を指した時、僕の携帯が着信音を鳴らした。

相手は...美夢からだった。

僕は慌ててその電話に出ると、やはり美夢だった。


話を聞いて見ると、何人かの高校の怖そうな先輩(そういえば、校内で威張り散らしているのが何人かいたな。)数人に塾前で待ち伏せされたらしい。

その場で捕まえようとしてきたの美夢はその場から逃げ、人通りの多い道を中心に家に向かっていたが住宅地に入ると人通りはなくなり裏路地に隠れ、追っての隙をつき停止したバスに乗り込み、今町外れの横断歩道橋にいると言う話だった。


取り敢えず、迎えに行くと美夢に伝えると


「それでは、お兄様が危ないです。」


とか言われるが、妹を見捨てる兄が居るかと反論し電話を切った。


それから、窓から見える範囲に監視がいない事を確認し着替えを済ませる。服色は黒を中心に暗い色を選んだ。暗い色なら夜の闇紛れて相手に気取られられ難くなるだろうとふんだからだ。


母に出掛けて来ると伝えると驚かれたが無視して家から飛び出し、夜の町を駆けて行く。途中、何度か美夢を探しているとおぼしき人たちを見かけたが、見つからないよう迂回し先を急ぎながら、道中見つかる事もなく美夢のいる横断歩道橋にたどり着く事が出来た。


「お兄様、よくご無事で。」


美夢が僕の胸に飛び込んで来る。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。どうやら、僕が思っていた以上に心配を掛けてしまったようだ。


美夢の背中を撫でてやっていると、落ち着いて来たのか泣き止んだけど、その間に追っ手に見つかっていたらしい。歩道橋の左右の階段を塞ぎ、数人がこちらに向かって来る。


「よぉ、あんちゃんよ。その女。こっちに渡してくんねぇか」


一人の大男がドスのきいた声でそんな事を言ってくる。当然、僕の答えは渡さないだから、美夢を背に隠すように大男の前に立ちふさがる。

後方からも大男の仲間が来ているから余り時間を掛けられない。

なら産まれて始めてだけど、他者に力を振るおう。


大男の一瞬の隙をつき、金的を叩き込み体当たりをかました。大男はバランスを崩し膝をつく。その隙に逃げようと美夢の手を掴もうとしたけど、体当たりの勢いが強すぎて僕だけ階段に突っ込む羽目に!?。しかも、階段にいた手下達を巻き込んで階段を転がり落ち、あまつさえ、その手下の誰かに巴投げみたいに投げ飛ばされ車道へ。さらにそこに、トラックが通りかかり僕はひかれてしまった。


美夢の追っ手と手下達はその光景に我さきにと逃げ去り、美夢はよろよろと僕の方に近づいて来た。トラックの運転手はすぐさま、救急車を手配してくれたし、美夢が僕の側で何か言っていたが、その声は僕には届かなかった。それが僕が美夢を見た最後となった。








そして、僕は死んだ。

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