表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/39

第22話 星空の地下湖の激闘! 結晶魔獣クリスタル・リヴァイアサン攻略戦


 ──ザパァァァッ……!!


 星々の光を鏡のように映し出す広大な地下湖の真ん中で、推奨Lv.18のエリート・エリアガーディアン『クリスタル・リヴァイアサン』が荒れ狂う水飛沫を従えながら咆哮を上げた。

 その体躯は全長十数メートルにも及び、全身を覆う硬質な水晶の装甲は、周囲の満天の星空の光を妖しく乱反射させている。

 獅子やキメラとはまた異なる、神秘的でありながらも冷徹な殺意を湛えた巨大な水棲魔獣の出現に、配信のコメント欄は一瞬にして絶叫の弾幕で埋め尽くされた。


【キタキタキタキタァァァッ!!  レベル18のエリートエリアボスだと……!?】


【背景の星空地下湖のグラフィックが綺麗すぎるのに、ボスがガチのトラウマ級にヤバい件】


【魔法を屈折させるってことは、遠隔魔術師パーティーなら完全詰みじゃん……近接特化の主たちでどうやって攻略するんだ……!?】


【安倍ノ家:ほう。水晶リヴァイアサンの『全方向光学屈折フィールド』か。遠隔魔法を完全に無効化する上、生半可な物理特攻もシャットアウトする厄介なギミックだ。このガチ詰み状況をどう覆す、実に興味深い】


【またキタ!  伝説の検証ブロガー・安倍ノ家の実況解説キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!】


 数万人のリスナーが固唾を呑んで見守る中、リヴァイアサンの巨大な口元が青白く発光した。

 周囲の気温が数秒のうちに零下へと急降下し、空間の水分が一瞬で凍りついていく。


「……来るわよ!  広範囲の冷凍ブレス、正面は完全に死角なしだわ!」


 シオンが鋭く声を張り上げ、『アストラ・クリスタル・ブレード』を地面に突き立てて純白のマナ障壁を瞬時に展開した。


 直後、リヴァイアサンが放った極寒の奔流──〈クリスタル・アイス・ブレス〉が、湖畔の石畳を根こそぎ凍りつかせながら猛烈な勢いで押し寄せてくる。

 轟音とともにシオンの張った障壁が激しく軋み、氷の結晶が周囲に飛び散る。

 痛覚こそカットされているものの、肌を突き刺すような絶対零度の冷気と、押し寄せる質量的な衝撃がダイレクトに伝わってきて、思わず体がこわばる。


「ぐっ……!  まだよ、こんなの私たちの絆と防御の前では通さないわ……!」


 シオンが歯を食いしばり、愛剣に込められたマナ・クリスタルの光を限界まで輝かせてブレスの直撃を正面から押し返す。


「今です、マスター!  奴の体表の水晶装甲、ブレスの直後でわずかに魔力の循環が緩慢になっています!」


 ライムの鋭いアナウンスが、冷気に満ちた戦場に響き渡った。


 見逃すわけがない。俺はインベントリから、昨日ラボで精製したばかりの特殊な高熱触媒弾と、自身のアルケミストとしての魔力を限界まで練り上げた〈錬金創成〉の起爆デバイスを両手に握りしめた。


「リヴァイアサン……!  お前のその硬い水晶の装甲、俺たちの炎で綺麗に焼き尽くしてやるよ!」


 俺はシオンがブレスを弾き返したその瞬間のわずかな硬直を突き、凍てついた湖面を蹴って一気にリヴァイアサンの懐へと跳んだ。


 けれど、リヴァイアサンは伊達にエリアガーディアンを名乗っていない。

 巨体の背後に備えられた光る翼が不気味に明滅し、俺たちが放とうとした魔力や遠隔の投擲物をすべて鏡のように屈折させようと、多重の光の障壁を自身の周囲に展開した。


「っ……!  魔法も遠隔攻撃も、全部あの水晶の乱反射で曲げられる……!」


 通常の飛び道具やプレーンな錬成弾では、あの屈折装甲を突破する前に光の軌道が曲げられ、無力化されてしまう。

 遠隔攻撃が無効化されるという特性は、遠距離からのハッキングやサポートを主軸とする者にとって文字通り天敵だった。


「マスター、諦めないでください!  奴の屈折率は、特定の波長の共鳴周波数に同期させることで完全に相殺可能です!  私のハッキング回路を、マスターの〈錬金創成〉に直接リンクさせます!」


 ライムがその小さな両手を前方に突き出し、青く眩い無数のデータストリームを俺の背中へと直接叩き込んだ。

 ビビビッ!  と脳内に直接響くような電子音とともに、俺の全身を駆け巡る魔力がライムの超高速演算によって極限まで研ぎ澄まされていく。


「よし……!  ライム、そのデータを全部よこせ! 〈錬金創成〉、全システム・オーバーロード!」


 俺は空中で両手を合わせ、アルケミストの最上位固有スキルを解放した。

 俺の手の中で、シオンのマナの残光、ライムの演算データ、そして先ほどの戦闘で手に入れた『星詠みの錬金結晶』の欠片が混ざり合い、これまでにないほど禍々しく、そして美しく輝く純白の槍──『星詠みの融解槍(アルケミック・ランス)』へと一瞬で再構築されていく。


「シオン、トドメの足場を作るぞ!  奴の頭上へ私を押し上げてくれ!」


「任せてちょうだい、ユウ!」


 シオンが瞬時に俺の意図を汲み取り、自身の纏う純白のマナを足元に爆発させて、まるで砲弾のように俺をリヴァイアサンの巨大な頭部へと直接撃ち出した。

 空中で美しく舞うシオンの剣閃が、リヴァイアサンの視界と注意を完全に引きつける。


「シャアアアアァァァッ……!?」


 リヴァイアサンが慌てて頭上のシオンを狙おうと首を持ち上げたその瞬間、俺はその巨大な額の中央──ライムが解析し特定した『共鳴核』の真上に飛び乗り、手にした『星詠みの融解槍』を全体重を乗せて文字通り叩き込んだ。


 ──ガキィィィン……ッ!!


 硬質な水晶と錬金の光が激突し、周囲の空間が歪むほどの高熱エネルギーが爆発的に解放される。

 ライムのハッキングによる共鳴周波数の狂いと、〈錬金創成〉による熱エネルギーの直接注入が噛み合った瞬間、リヴァイアサンの誇る鉄壁の水晶装甲が、まるでガラス細工のようにパリパリと音を立てて盛大に砕け散っていった。


「ぐおおおおおっ……!?」


 リヴァイアサンが痛恨の悲鳴を上げ、その巨大なバランスを完全に崩して星空の地下湖へと盛大に沈み込んでいく。

 湖面が激しく逆巻き、周囲一帯に凄まじい水柱と光の粒子が降り注いだ。


【キタ━━━(゜∀゜)━━━!!  水晶装甲の完全破壊キタァァァァァッ!!】


【ライムちゃんのハッキングと主の錬金創成コンボが美しすぎて鳥肌が止まらん……!】


【シオンちゃんの突撃アシストも完璧だったし、このパーティー、お互いの信頼関係が深まりすぎててもはや芸術の域だろ!】


【安倍ノ家:……まさか、オートマタのハッキング周波数を触媒に逆用して、光学屈折の物理法則そのものを書き換えるとは……この主、アルケミストの枠を完全に逸脱した『現象改変者(ワールド・ワーカー)』だな。恐れ入った】


【安倍ノ家がここまで絶賛するの初めて見たわ……!  マジでこの配信歴史の教科書に載るぞ】


【同接続数……い、いま『15万5千人』突破してるぞおい!!  伝説の配信リアルタイムで見れてるの誇らしすぎるわ!!】


 コメント欄は、あまりの神がかった連携プレイに対する狂喜乱舞の弾幕で、もはや画面の文字が読めないほどのスピードで流れていっていた。

 同時接続数も『15万5千人』を突破し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大し続けている。


「はぁっ……はぁっ……!  やったわね、ユウ、ライム!」


 シオンが水飛沫を軽く払いながら、息を整えて俺たちの元へと駆け寄ってきた。

 その頬にはわずかに汗が滲んでいるが、その瞳には勝利の確信と心地よい高揚感が満ち溢れている。


「マスター、シオンさん、お疲れ様です!  リヴァイアサンの魔力炉心の活動停止を確認……!  完全に沈黙しました!」


 ライムも小さな体をぴょんぴょんと跳ねさせながら、嬉しそうに両手を叩いて微笑んだ。

 俺は息を整えながら、目の前でゆっくりと光の粒子となって消滅していく巨大な魔獣の跡地を見下ろした。

 そこには、これまでの地上エリアではお目にかかれなかった最高級のレアドロップアイテムの数々が、星の光を浴びてキラキラと輝きながら残されていた。


【システム通知:水晶魔獣『クリスタル・リヴァイアサン』の討伐に成功しました】


【経験値を獲得し、パーティーメンバーのレベルが上昇しました!】


 プレイヤー名:ユウ レベル:20 (+2 UP)

 プレイヤー名:シオン レベル:20(+2 UP)

 プレイヤー名:ライム レベル:19(+2 UP)


> 【システム通知:レアドロップアイテムを獲得しました】


・『リヴァイアサンの氷晶鱗』 × 5

・『水晶の双翼』 × 2

・『星詠みの純水』 × 3

・『星詠みの水鏡』(※エピックランク・特殊触媒アイテム)


「すげえ……!  推奨Lv.18のエリートボスだけあって、素材の質が段違いだ。特にこの『星詠みの水鏡』と『星詠みの純水』は、今後の装備クラフトや迷宮の奥のギミックを解くための鍵になりそうだな」


 俺がアイテムをインベントリへと丁寧に回収しながらそう呟くと、シオンが満足そうに腕を組んでうなずいた。


「ふふ、これで私たちの装備もさらに一段階強化できるわね。にしても、ユウのその〈錬金創成〉、ボス戦のたびに進化してない?  毎回見てて惚れ惚れしちゃうわよ」


 シオンの何気ないからかい交じりの言葉に、俺は少し照れくさそうに頭を掻きながら笑った。


「そりゃあ、最高の相棒二人と一緒に戦ってんだから、俺も負けてられないからな」


 クリスタル・リヴァイアサンを撃破したことで、星空の地下湖の対岸に広がっていた巨大な封印の門が、静かな音を立ててゆっくりとその重い扉を開き始めた。

 扉の向こうに広がっているのは、青く澄んだ光に包まれた神秘的な古代の祭壇──そして、この『星詠みの地下迷宮』の最深部へと続く、さらなる広大なエリアの入り口だった。


 冷涼な地下風が心地よく吹き抜ける中、俺たちは再びカメラに向かい、画面の向こうで待ち構える数万人のリスナーたちに向けて力強く語りかけた。


「みんな、観てくれたか?  これが『電脳遊戯部』の成果だ。だけど、俺たちの冒険はまだここで終わらない。この門の向こうに眠る古代の秘密をすべて暴き、この世界のてっぺんを絶対に掴み取ってみせる!」


 シオンが新調した剣を軽やかに一閃させ、ライムがホログラムのマップを前方へと鮮やかに投影する。


 その宣言に合わせ、同時接続数のカウンターはついに『170,000人』を突破し、ネット界の新たな伝説へと駆け上がる電脳遊戯部の冒険は、さらなる深層の闇と光が入り交じる未知の領域へと、力強く足を踏み入れていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ