プロローグ1
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厚く垂れ込めた雲の下、怒号と悲鳴と爆音と剣戟が木霊する。
周囲には樹木も建物も何も無く、ただどこまでも荒野が広がるのみ。
その荒野で、万を超える人が、エルフが、竜人が、ゴブリンがオークがコボルトがオーガがヴァンパイアがアンデッドが、入り乱れて組み合い、斬り結ぶ戦場の只中で、2人の少年が対峙する。
白緑銀の豪奢な鎧に身を固め、眩く輝く剣を手に持った少年が、その瞳に敵意と憎しみをこめて睨み付けているのに対し、もう一方の平服を着て手に何も持たない少年は、ただ静かに乾いた目で見返すのみ。
やがて、鎧を着た少年が口を開いた。
「全部、お前が奪った」
絞り出すように言葉を放つ。
「水城も……岡田も……浅香も美笹も琢磨も!一緒に戦うと、故郷に帰ると誓った仲間が、お前のせいで!お前はもう、人類の敵になってしまった……!だから俺は、ここでお前を倒す。たとえ元クラスメイトであっても……俺は、勇者の使命として!!」
これに対して、平服の少年の口から放たれたのは言葉ではなく、咆哮。
「!!!!!!!!!!!!!!!」
耳をつんざく、地球上の、そしてこの世界のどの生き物のものとも違う絶叫が周囲に響き渡る。
ギリ、と歯を食い縛った鎧の少年が手に持った剣を強く握り締めると、剣からは強烈な光が溢れ出した。
その光を身にまとい、腰を落として剣を構える鎧の少年。
目をわずかに細めて、平服の少年がその光を受け止める。
勇者と名乗る少年は光輝く剣を振りかざし、平服の少年は無造作に、2人が駆け出したのはほぼ同時。
一瞬の後、両者の中央で、互いの剣と張り手が真正面から衝突した。
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