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魔法使い見習いデビュー?

 雄大な眺めではあるが所詮麦畑。そうそうに車窓の眺めにあきた俺は、ふかふかの椅子に座り直す。

 すかさずメイドさんが飲み物を差し出してくれた。

 すっきりとした、香りの高いハーブティのようだ。

 あと30分くらいらしいが、どうしよう。

 少し腰を前にずらし、浅くゆったりと座る。

 腰の辺りに異物を感じまさぐると、覚えのある布ケース。

 甘い棒だ。甘いのと甘辛いの。

 甘い方を取出し舐めようとしてはたとする。

 これ、いま舐めてもいいの? 行儀的に。

 まわりの三人を見回すがわからん。

 止める様子はないんだが。

 舐めるべきか、舐めざるべきか。

 魔法の力でキラキラと淡く輝く甘い棒を手にし、ゆらゆらさせていると、妖精さんがやってきて棒に触れる。

 あ、なんかキラキラが抜けていく。

 むふーっとドヤ顔の妖精さん。


「そこで棒に、魔法を流すデス」


 メリルちゃんにいわれ、顔の前に指で甘い棒を摘むように持ち、俺の腕にまとわりついている魔法のキラキラが甘い棒に流れて行くイメージを作る。

 うーん。なんか上手く流せない。

 棒を胸元までさげたら、手にまとわりつくキラキラが流れるかな?

 おお、流れ込んでいく。

 残念ながら、流し込んでいる感じではなく、魔宝石に引き込まれていっているのが実情だけど。

 直に棒から魔法が溢れてくるが、妖精さんが空手の正拳突きのような仕草で応援して?いる。

 まだまだイケるらしいのだが、これ以上どう詰めたらいいのかわからない。

 とりあえず棒を横に振って、さらに棒の先端を親指で蓋して縦振する。

 おお、なんだか魔法が棒にさらに充填されていくっぽい。

 しかしあれだ、見た目的には魔法感ゼロ。

 何時の間にか妖精さんが、俺の摘んだ甘い棒のまわりに集って、うんうんと頷いている、


「うまく魔法が、詰められた、ようですナ」


 棒のキラキラ感も元にもどったんじゃないかな。

 甘い棒を舐めてみるが、試食のときと同じ甘さを感じるし。

 まだ溢れてる分が勝手に流れ込んでいるだけで、身体から湧き上がる魔法を充填しているイメージはないが。

 チャクラも熱い塊も感じないし。

 でもこれで俺も、魔法使い見習いくらいには成れたのか?


「これで、ウォシュレットは起動できる?」

「洗浄の水を出す、魔法石は、起動出来るでしょう」


 メリルちゃんが頷いてる。

 これで俺の懸念が一つ解消されるってわけだ。

 でも認められるのはウォシュレットの起動で、見習い認定はまだ?


「魔法石も持って来ればよかったね」


 上手く魔法を詰められたことに気をよくしてそんなことをメリルちゃんに呟いた俺に。


「*****」

「*****」

「そちらの方が、お持ちではないかと」


 魔法を魔法石に充填するという偉業?をなした俺を、万歳で褒め称えてくれていた妖精さんから指摘がはいった。


「俺の、魔法石、持つ、あるか?」


 メリルちゃんの口コピーでメイドさんに聞くと、メイドさんが軽く頷き座席下に置かれたカバンから魔法石を取り出す。

 受け取った魔法石はキラキラで、すでに魔法が詰まっているようだ。

 部屋に妖精さんが屯っている間に、充填されたらしい。

 一本を手にすると、また妖精さんが棒に触れ、魔法を抜いてしまう。

 よし、やるぞー。


 魔法石は甘い棒よりも容量が大きいらしく、倍近い時間をかけて一本を詰め終る。

 詰める間も時々外を眺めるが、ずっと大規模農場が続いているだけだ。

 この道は王都へ向う街道で、侯庁舎への分かれ道を越えても暫く、こんな調子で続いているらしい。

 農機もないのに良くこんな大規模農場が経営出来るモノだ。

 魔法か? やっぱり魔法なのか?

 遠くに森が見えるが、あれは油を取るための植樹林らしい。

 なるほど、あの植樹林はきっとボルネオとかの椰子園みたいなのだろう。


 と、急に馬車が右折。

 俺は体勢を崩し、メイドさんに支えられてしまう。

 あー、なんか肩に柔らかく当る。

 ラッキーなんだけど、わざとじゃないんですよ?

 シートベルトがないのがダメなんです。

 思わずメイドさんにペコペコしてしまう。

 メイドさんの控える場所が近いせいか、ちょこちょこラッキーな接触があるけど、ラッキーを感じる前にセクハラ認定に怯えてしまう社会人のサガ。

 これがラノベの主人公なら、顔からおっぱいに突っ込んでるよな。うらやましいことに。

 まあまあ、でも、いやしかし。的な挨拶を交して落ち着いた俺は、ついそんなことを考えてしまう。


 そんな事で時間を消費していると、また橋。

 橋の先は川に沿って崖が聳えている。

 これはタモさんの好きな河岸段丘か?

 橋を渡り、崖を切り裂いた急な坂をあがると、両脇に近代風装備の門番が立つ大きな門が聳えていた。

 検問はなく、門番は一応の警備だけっぽい。

 門の先には道の両側に5、6階建ての古風なビルが並んでいる。


「*****」

「*****」

「*****」

「この辺りの、建物は、侯領の、村?代官?の、出張所?」


 妖精さんが見える系の男性護衛が言うには、侯領にある市町村の出張所らしい。

 買物途中な人の出入りが見られるが、中に物産品を売るアンテナショップが入っていて、それぞれ人気の地域商品が買えるのだとか。

 帰りにちょっと寄ってみたいが、時間あるかな。

 直に馬車は通りを越え、大きな広場へとやってきた。

 広場の正面には、まわりの建物と比べるとやや低い、けれど重厚で“これぞ”という立派なつくりのビルが建っている。

 庇もドンと張り出してるし。

 これが今日これから訪問する侯庁舎ということらしい。

 馬車を降りて辺りを見回すが、ぐるりと周囲を高い建物に囲まれた、紀行モノで見るイタリアのなんとか広場って感じだ。

 侯都の城壁内にある建物は色合いこそカラフルだったが、装飾少な目だったのに対し、この辺りの建物は丁寧な装飾が施されている。

 動物やら植物をモチーフにした装飾が結構あるけど、あれは実在の生き物なのか、想像上の生き物なのか。

 先導するメイドさんにくっ付いて入口へ身体を向けると、玄関の奥からくすんだ黄色の上着を着た俺より少し年上のおっさんがやってくる。

 どうやらこのおっさんが、妖精が見える現地の担当者らしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 揺れる馬車の中につり革欲しいですね。舌噛まない用の紐も。
[良い点] 急に異世界言語習得しての意思疎通が加速しないところ。 [気になる点] 科学が発展して生活がより便利になりそうですが、戦争の火種にならないか。 [一言] ここまで持てる知識の価値や自身の有用…
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