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庶民街へ

 門を越えると堀を渡り、広場に出た。あまり人の姿もない、まばらに木が植えられた広いだけの公園っぽい広場だ。その先にもう一つ堀が見える。この広場は皇居前広場みたいなところのようだ。皇居前広場も広い割りに、団体の観光客かランナーくらいしかいない。


 二つめの堀を越えたところからは、青い塀がずっと続いている。一区画が長い。塀を三区画ほど走った先で突き当たりを右に折れる。


「このあたりはちょうでかいおやしきばかりですな」


 メリルちゃんも同じ感想を持ったようだ。やはり普通の家がこのサイズなわけではないらしい。


「*****」

「*****」

「*****」


「こうしゃくいちもんの、きぞくのかたがたがおすまいだそうです」


 なるほど。門の前は武家屋敷か。

 さっきの角を曲がったところからは、お屋敷を出た辺りに比べると少し路幅が狭くなっている気がする。

 塀も心持ち高くなってないか?

 もう一度、今度は左に馬車が曲がる。一気に路幅が広くなった。路の真中に歩道の敷かれた分離帯もある。

 そうか。屋敷への通りが一直線で引いていないのは、攻城戦のあった時代の名残かもしれない。

 塀の色もくすんだ黄色と薄い桃色に変わった。どこも淡い色合いではあるけれど、とにかくカラフルだ。


「*****」

「へいのいろは、いえのかくしきをあらわしていると」


 俺が塀の色合いを気にしているのに気がついたのか、ケイトさんが教えてくれた。

 屋敷を出てすぐのあたりは青塀が続いていた。きっと青い塀というのが格式高くて、親族とか譜代とかそんな位置づけの屋敷なのだろう。この辺りの黄色とか桃色は上級官僚とか上級士官クラスだろうか。

 色が混在してるのは、家の格式が変わったときに塗り直したのか、それとも文官武官で違うのかな。

 なんにしても、塀の色で家の格式を表すってのはおもしろい。



 お屋敷街もいよいよ終り、これまた広い路との交差点に出た。

 交差点の真中で台の上に機動隊の人が立ち、交通整理をしている。

 震災で信号器が停電したとき、お巡りさんがあんなふうに交通整理をしているのを見かけたが、まだ信号に類する物が無いのだろう。交差点4箇所の信号が光るタイミングを合わせるというのは、魔法で制御するのは上級な気がする。

 市内の交差点をまとめて制御するには中央管制みたいなシステムが必要になるだろうし。

 魔法なんて便利なものがある分、連携とか遠隔制御とかに弱いのかも。


 これまで走ってきた路はお屋敷街の中だったせいもあるだろうが、人も馬車も疎らであったが、この左右に伸びる路は結構な馬車通りがある。

 あまり交通量が多いと詰まりそうだが、このくらいの交通量ならラウンドアバウトにするって方法もありじゃないだろうか。


 左右方向の交通量が多かった割に、我々の乗った馬車は止まることもなく交差点へと入り右へ曲がる。

 なんか交差点の進入に優先枠があった感じだ。

 馬車に印があって、印付の馬車に優先権があるとかなら、手信号方式もそれなりに有効か。

 身分を見分けて優先処理をする必要があるなら、人間系で処理した方がコストが掛からないのかも。GPSやETCないし。

 身分格差のある社会ってのはこんなところでもめんどくさいのか。

 そうだ、魔法でGPS作れないか? 衛星打ち上げは妖精さんに頼めばただ同然じゃないか!


「*****」

「さっきのこうさてんをまっすぐにすすむと、しょうめんからひだりにかけてがおかねもちのすむちくとのこと」

「*****」

「みぎてからおくへかけてが、ふつうのしょみんのすむちいきだそうです」


 ケイトさんの観光案内がはいる。

 庶民街に強いって言ってたから、実家はこの左手辺りなのか?

 でも大店のお嬢さんだって言うから、さっきの交差点の左側なのだろうか。

 それでお店が庶民街にあるのかも。

 馬車の左手、庶民街の方を覗くと、さっきまでと異なりかなりパステルチックでカラフルな2-3階建ての建物が並んでいる。

 今朝部屋の窓から見えたのはこの辺りか。


 馬車は庶民街と武家屋敷街をわける大通りを進んでいく。


「*****」

「きょうはこれから、しょみんがいのはずれにある、あさいちにあんないしてくれるそうです」


 感覚的に、皇居の正門から東京駅を経て中央通りから銀座4丁目交差点に着いたくらいか。

 馬車は大通りを外れて庶民街の方へと入っていく。

 この辺りは間口の狭い平屋作りだ。区画はそこそこの長さがあるので、京町家風のうなぎの寝床なのかもしれない。

 石造りだったり木造だったり。

 ただ全体的に壁の色がカラフルだ。


 馬車は一軒の衛視っぽいのが立つ町家の前に停まった。

 ひときわ目立つ赤い壁。日本の消防署のようなカラーリング。


「*****」

「ここはきしのつめしょ、にほんのかたがいうところのばんやだそうです」


 ケイトさんが教えてくれた。

 立っていたのはやはり衛視か。衛視ってよりも街のおまわりさん?


「番屋はちょっと言い方が古いですね。騎士の詰め所なら今風に交番でいいんじゃないかな」

「こうばんですか。こうばん。こうばん」


 やっぱりメリルちゃんの日本語は昭和というか明治?


 護衛の三人が馬車を降り、衛視っぽいのと何か話したあと、ケイトさんと俺に下りるよう合図する。


「*****」

「*****」


 辺りを伺っていた一緒に馬車の中に乗っていた男性の護衛が、ケイトさんに何か軽口を言っている。


「はしりさったこぞうをみたかと」


「*****」

「*****」


「このあたりをしきるもののつかいだそうです」


 うーん。護衛さんが気楽に見逃したってことは、「カモが来た!」と言う連絡じゃなくて、「手出し無用の要注意人物来訪」の連絡なのか?

 ケイトさんも気軽に軽口叩いてる雰囲気だし、そうであって欲しい。

 フラグじゃないよね?

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