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甲殻機動隊

 おや、この車輪スルーしてたけど、外周になにかがベルト状に貼ってある。

 車輪の幅は五センチくらいでベルトの厚さは三センチくらい。


「メリルちゃん、この車輪の外側についてるのはなんですか?」

「さて、なんですやら。***のかわのようですが」


 メリルちゃんが、タイヤの外周部分を押す。

 結構硬いようでびくともしない。

 ポカポカと殴り始め、やがてキックを、そして遂には体当りをかませた。

 なにやってるのメリルちゃん。なんか楽しそうだけど。


「******」

「******」

「******」


 ふう、と汗を拭う仕草をしながらメリルちゃんがケイトさんに聞いてくれたが、彼女は知らないようだ。

 代りに車輪の向こう側から顔を出している護衛さんが教えてくれた。


「×△*、きょうじんでしなやかなかわをもつどうぶつですが、そのかわに▲××**のじゅえきをかためたものをぬって、なんそうかにまいてあるそうです」


 うーん? 動物の皮と樹液を積層した複合材?

 石油製品との人工素材はなくても、謎生物が結構いい仕事してる様子。

 樹液ってのはいかにもゴムっぽい。

 やはり甲殻類のモンスターから採取した盾とか鎧とかあるんだろうか。


 しかしこの車輪、直径一メートルはあるから外周は一周でも三メートル以上。皮もブ厚そうだし、なんか超巨大動物な気がする。それとも途中で繋いだりしてるのか?


「そのどうぶつは巨大ですか?」

「おおきいですな。このばしゃのばいくらいのたかさがあります。ながさはさんばいくらい」


 それってドラゴンじゃん!



 なんかドラゴンの牧場が郊外にあるそうなので、そのうち連れていって貰うことにする。

 肉も美味しいし、骨や内蔵まで余すところなく使える動物だと。

 ドラゴンじゃなきゃ、くじらか。


 あまりのんびりもしていられないことを思いだし、箱馬車に乗り込んだ。

 ロンドンタクシーとかの対面式だ。

 後部座席の奥が俺、その手前にケイトさん。俺の向かいに女性の護衛。真っ直ぐに見つめられて照れるぜ。ケイトさんの向かいには男性の護衛が一人。

 あとの一人はなんと、箱馬車の外、後部に立っているらしい。

 御者は別に二人。

 ちょっと街へ行くだけで6人もの人間が俺に付くことになる。なんか大事だな。


 ゆっくりと馬車が走り出す。

 タイヤとサスのおかげかほとんど振動がない。


 ………………


 それにしても揺れなさ過ぎじゃないか。

 そこそこの速さ出ていると思うのだが。

 砂利や石畳で舗装しててももっと揺れると思うんだが。

 アスファルトで舗装した路を車で走ってる並みに揺れない。


「全然揺れないですが、道路は舗装してありますか?」

「おおどおりはせきかのまほうでかためてありますな」


 なんと、石化の魔法がでたよ。

 石化の魔法を道路の舗装に使うとは盲点。

 異世界ものだと道なんか酷いものなのが相場だけど、石化の魔法があれば舗装も簡単か。

 土を石化で固めるだけならコストは掛からなそうだ。そりゃあやるわな。

 窓から覗くと、大理石みたいなつるつるな感じではなく、素焼きのレンガっぽい一枚板が屋敷まで続いている。

 丈夫なのか、こまめに手入れをしているのか、路面にはひび割れや轍もなさそうだ。



 お、そろそろ騎士さんたちがトレーニングをしていた辺りだ。

 つい馬車の窓にかぶりついて覗いてしまう。

 朝方に部屋から見えた個人トレーニングとはうって変わり、今は30人ずつくらいの集団が二つ。隊列を組んで何かしている。

 あ? おや?

 なんか思ってたのと違うな。

 かぶり物は飾り気が無く、兜と言うよりもヘルメットだ。

 着ているのもいわゆる甲冑じゃない。盾は構えているが、むしろプロテクターを装備した機動隊みたいだ。

 手にした武器も剣じゃない。ちょっと太い警棒。

 訓練内容も暴徒鎮圧とかそんな感じ。


「彼らの着ているのは鎧ではないようですが、どんなものですか?」


 俺がメリルちゃんに聞くと、ケイトさんを介して男性の護衛さんが答えてくれたようだ。


「△*□○、かたいからをもつことでていひょうのあるいきものですが、そのからと▲××**のじゅえき、あと×△*のかわをせきそうしたいたをととのえたものだそうです。きんぞくよろいよりはるかにかるくじょうぶだと」


 うーん。甲殻類のなぞ素材ホントにあったよ。その上ドラゴンの皮とゴムを合わせた複合素材。アラミド繊維の防弾・防刃チョッキより丈夫そうな感じがする。


 あれ? あの警棒を突き立てられた藁人形みたいなの、吹っ飛ばなかったか?

 え? え? ただの警棒じゃないの?


「あの武器はなんですか?」


 俺の質問にメリルちゃんは知っていたのか、メイドさんに聞くことなく答えてくれた。


「あのぼうにはばくはつのまほうがつめられていますな。▲××**のじゅえきをまるくかためたものやてつのたまをうちだすこともあります」


 なんと、空気銃じゃないか。


 女性の護衛さんが何か言うのをメリルちゃんがふんふんと頷きながら聞いている。


「あのぶたいはおもにとしととししゅうへんのちあんいじをするぶたいだそうです」


 まんま機動隊か。


「館の方には剣や槍を持った金属鎧の人たちが居ましたが」

「*****」

「あのかたがたはきぞくのしていで、やかたのけいびをたんとうしていると。おかざりですな」


 お飾りって……。メリルちゃんがさりげなく毒を吐く。ああ、もしかして儀仗兵って言いたかったのかも。



 練兵場を過ぎたところで馬車が停止する。馬車の窓から頭半分出して前を覗くと、門があるようだ。


「*****」

「*****」

「*****」

「*****」


 外から御者さん、護衛さん、あと多分門番のヒトの声がする。


「*****」

「*****」


 そとの声に女性の護衛さんが答え、俺になにか話しかけてくる。

 何を言っているのかさっぱり解らないが、愛の言葉でないことだけは断言できる。


「なかをあらためたいそうです」


 なんだそんなことか、どぞどぞ。


 馬車の扉が開くと機動隊の格好をした若い男性が覗き込んでくる。

 門周辺は儀仗兵じゃなくて機動隊管轄なのか?

 男性の護衛さんとは顔見知りのようだ。お互い親しげに挨拶している。

 もしかしたら護衛さんたちも機動隊の所属なのかもしれない。

 女性の護衛さんとケイトさんにも軽い挨拶。そのあと俺のことを様子を伺うように見るので、俺は日本の社会人的態度で頭を軽く下げ挨拶の意を示す。

 門番の男性は門の方に何か叫ぶと一礼して馬車の扉を閉じた。

 まあ出るときの検査はこんなもんだろう。


 馬車が再び動き出す。

 さあ、いよいよ異世界探訪の始まりだ。

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