ここはエルフの里?
半笑いで蜜蜂ぐるみの行進を見ていたら、服の袖を引っ張られた。
妖精さんが、俺の袖を引っ張ってる。
??
妖精さんの示す先を見ると、侯女ちゃんとメイドちゃんが手を振っている。
どうやら俺を呼んでいるようだ。
ケイトさんはまだお土産を選んでいるようすだし、辺りをウロウロしていたメリルちゃんを頭に載せて、侯女ちゃん逹のところへ移動。
二人の所へいくと、侯女ちゃんとメイドちゃんが嬉しそうな笑顔で何かを口に運んでいる。
ワッフルコーンのカップに盛られたアイス?
横からプシューという音がするので目をやると、侯女ちゃん付きのメイドさんが並ぶ屋台の向こうで、女の子がワッフルコーンにクリームを詰めて筒状の道具を差し込むと、プシューという音とともに、カップからクリームが湧き上がってくる。
小銭を払ってそれを受け取ったメイドさんが、俺に手渡してきた。
添えられた木の板で、クリーム?を掬って口へはこぶ。
濃厚な芋と蜂蜜の甘さが舌に広がる。
おおむね薩摩芋のソフトクリーム蜂蜜がけ。冷くはないので、ムース状のフワフワな芋きんとん?
あの筒状の道具は、前にシェフがフルーツムースを作ってくれた道具に似た物の様だ。
「*****」
侯女ちゃんが木の板を咥えながら俺に話し掛けてくる。
多分、「おいしいね!」とか言ってるんだろう。
いや、美味しいんだけど、さっき大学芋のデザート食べたばかりじゃん。
牧場でもソフトクリーム食べたよね?
おじさんは摂取カロリーが気になるんだよ。食べるけど。
三人でデザートを食べていると、会計を済ませたケイトさんとヒューさんがやってきた。
そしてヒューさんは屋台の前でデザートを暫く睨んでいたけど、結局買わずに戻って来た。
この世界にも、甘味は美容の敵という概念はあるようだ。
「時間、来る、しました。行く、しましょう」
イケメン使用人が呼びにきたので、馬車へと移動。
俺の回りを飛ぶ妖精さんの半数以上が、蜜蜂のぬいぐるみを抱えている。
嬉しそうに俺に見せ付けてくる。
よかったね。
店を出ると、護衛の騎士さんが馬車の扉を開いて待っていた。
妖精さんが俺を追い越して一斉に馬車へと突入していく。
俺はその後を追って、ヨイショっと馬車に乗りこんだ。
馬車の座席に座るとすぐに、馬車が動き始めた。
どんどんと山肌が近付いてくる。
ここからは暫く谷間を走るらしい。
蜜蜂ぐるみを抱えて転がりまわる妖精さんたちと戯れていると、妖精さんたちが一斉に後ろへ転がっていく。
どうやら山道を登りはじめたようだ。
窓をのぞくと、そこそこ急な坂道を馬車は勢い良く登っていく。
急な坂を登りきると、巨樹の森が待っていた。
広い谷間の底に立つ、10階建てのビル以上の高さがあるに違いない巨木の森を切り開いて作った道を、馬車が走っていく。
初めのうちは樹木の大きさに圧倒されていたが、十分も見ていればあきる。
窓際を離れ、ハンモックチェアに座ってゆらゆらと揺られていると、窓から入って来たのはテトラさん?
メリルちゃんが挨拶にいく。
この森に住むテトラさんと同じ樹木系妖精さんが偵察に来たらしい。
この馬車、妖精の気配が凄く濃いので目立つのだそうだ。
樹木系妖精さんはしばらくメリルちゃんと話をしていたあと、スーと窓から去っていった。
その間もエマさんたちは、蜜蜂ぐるみを抱えてコロコロしている。
よくあきないねぇ。
ヒューさんはハンモックに揺られて寝ている。
俺も次のトイレ休憩まで寝るか。
ハンモックチェアに揺られてうとうとしていると、四方から顔に柔らかい物が押し当てられて目をさます。
なんか妖精さんたちが蜜蜂ぐるみを俺に押し当てている。
??
「休憩する、します」
どうやらトイレ休憩のポイントに着いたようだ。
窓の外を見ると、馬車の停っている辺りは切り開かれているが、相変わらず巨樹の森の中。
たぶんヨセミテのメタセコイアの森とかこんな感じなんじゃないかな。
マイナスイオンとかに満ちていそう。
ヒューさんについて馬車を降り、ウーンと反り返って伸びをする。
あれ?木の上に家が建ってないか?
吊り橋や回廊みたいなのもある。
ここはエルフの里?
巨樹の、おおよそビルの5、6階位の高さのところに、小屋が付いている。
ツリーハウスほどしっかりした感じはない、蔦で編んだような造りだが、大きさはそれなり。
それがひとつの樹に2ー3軒。その小屋の間を、道として整備された枝や吊り橋が繋いでいる。
「この辺り、葉が積もるして、出来る、しました。地面、軟らかいデス。水が、出る、します」
ヒューさんによると、この辺りは湿原で、土魔法で基礎を作って家を建てるより、木工魔法でツリーハウスを建てる方が安上がりなのだという。
耳の長いヴィーガンの人が住んでいる訳ではないらしい。
ぐるっと見回すと、後方に連なる商隊の馬車からスルスルと荷物が引き上げられていく。
猿の人がウッドデッキからロープで荷を引き上げているようだ。
「*****」
「あの青い小屋がお店だそうデス」
メリルちゃんと並んで飛んでいる樹木系妖精さんが、辺りの案内をしてくれる。
デッキの横にある青い小屋が、生活者向けの万屋らしい。
奥の一角が商工会?
妖精さんの指し示す先で、一際大きな樹と樹の間を埋めるように、小さな小屋が密集している。
一軒の大きな建物が建てられないので、部署とかブースがそれそれ小屋一つ一つで独立して建っているそうだ。
「アレ、仕事、少し休む、します」
ガイドブックを片手にしたヒューさんが、単眼鏡を俺に渡しながら上の方を指さす。
指し示す先、巨樹の上の方を単眼鏡で覗くとハンモック?
ビルの20階位の高さにある枝と枝の間にハンモックが何台も並んでいて、結構な数が人で埋まっている。
猿の人じゃないよね?
ハンモックの下には転落防止に透明な魔法の壁が敷いてあるそうだが、人は馴れるものらしい。
ヒューさんの笑いも引き攣ってたけどね。
「*****」
「*****」
「*****」
いつのまにか俺の隣りに並んでいた侯女ちゃんが鼻息あらくハンモックを指差して、それをお付きのメイドさんに止められている。
ああ、君はあそこで寝てみたいのか。
ほら、メイドちゃんは首を竦めてプルプルしてるよ。
「*****」
「*****」
「*****」
ヒューさんも侯女ちゃんに話し掛けてるけど。
「彼女の友達が、学生時代に登って、以来気に入って、よく来るそうデス」




