第37話
おことわり
今回は暴力的な描写が出ます。
福岡事変から3日後。
祐介はみゆきと宮城にお土産を渡していた。
みゆきは辛党なので、辛子明太子(切れ子)と辛子明太子せんべいを渡し、甘い菓子の好きな宮城には、博多通りもんを渡した。
宮城さんは博多通りもんに限らず、甘いものが大好きなので、まるで子供のように喜んでいた。
その頃、奈央は小橋川と内密に話し合いをしていた。
「近くさる国の王室の第4位王位継承権を持った王女が日本に亡命してくる。魔女王め。こんな厄介な依頼をよこしやがって」
「仕方ないですよ。警察にも裏切り者がいるとなれば、信用できるのはうちだけと考えたのでしょう」
「段取りってのがあるんだ。ただ皇女を拉致してうちの本家や別宅まで逃げ込めばOKってわけじゃない。場合によっては英国王立魔術研究会が裏切る可能性もある」
「その可能性は否定できませんね。断りますか?」
「いや、受けよう。相手の手の平の上で踊らされてるかもしれんがな」
「そう来ると思ってました」
その夜
雨谷宅の近くの路上にて。
「雨谷祐介だな。お前には消えてもらう」
忍者装束の女が現れた。
顔は隠してるが声色と胸のサイズからして女であるのは間違いない。
「誰の指図だ?」
「言う必要などない」
「(間合いは、15メートル程度ってとこか。もう少し詰めろ)」
相手の女忍者が少しずつ間合いを詰める。
「(今だッ!!)」
祐介は、ポケットに入れた煙玉を使い、急いで逃亡する。
「あっ!待て!」
女忍者が急いで追いかける。
「(かかったな。そう来ると思ったぜ!)」
祐介は女忍者の顔面に毒霧を浴びせた。
「ううっ!ブゥオウウウエ!ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!」
女忍者は顔面に毒霧をモロに浴びてしまった。
毒霧は通常目潰しとして使われる。しかしこの毒霧は匂いがキツいため鼻までやられるという優れもの。
そして祐介は再度煙玉を使い、逃げ出した。
「ハアッ、ハアッ、急いで逃げなきゃ」
祐介は幹線道路に出た。
「あっ、タクシーだ。タクシー!」
祐介はタクシーを止めることに成功した。そして祐介はタクシーに乗り込む。
「運転士さん、西海リハビリ病院まで!」
「わかりました」
西海リハビリ病院、正式名称は西海リハビリテーション病院。この病院は、薬師寺家が運営する病院である。元々は怪我を負った戦闘員のリハビリはもちろん、高齢者の回復期のリハビリ支援のためにも開かれた病院だが、薬師寺家の戦闘員や関係者が襲われた時などの逃げ場にもなっている。
祐介はタクシーの中で、ある人物にメールを送っていた。
その頃
「クソッ、油断したわ…単なる一般人だから大丈夫だと思ったのに」
その時、女忍者は殺気を感じた。
「誰だッ!…オボッッ…」
女忍者は背後から殴られて気を失った。
「行きましょう」
「ええ。たくさん聞かなきゃいけないことがありますから」
覆面姿の3人組の女は女忍者をワゴン車に押し込んだ。
3時間後
女忍者は目を覚ました。
足には足枷がつけられ、手には手錠がつけられ。口には自殺防止器具がつけられた状態で。
「(誰!?)」
入ってきた女3人はそれぞれ覆面をしていた。
天狗面、猿面、般若面の3人は、女忍者を取り囲み、尋問を始めようかと言う姿勢でにじりよった。
女忍者は、左手小指の爪先を喉に突きつけようとしたが、爪が無くなり、絆創膏が巻かれている左手小指を見て愕然とした。
「その小指の仕掛けは剥がしました。あなたが眠っている間に」
天狗面の女が静かに女忍者に語りかける。
「(そんな…バカな…)」
女忍者は驚いていた。
「あなたは自殺することもできない。舌を噛み切られることを防ぐために自殺防止器具をつけたのは正解でしたね」
「…」
「さて、これからどうしましょう。女の身体に派手に傷をつけるのはご法度ですからね」
「ファンタジーの世界なら、指の骨を折って回復させてまた折るって手法もあるけど」
猿面の女はまるで今にも女忍者の指をへし折らんかという勢いで女忍者の手を触ろうとした。
「ダメですよ。そんなことしちゃ」
般若面の女は、猿面の女を諭した。
刹那、女忍者に喉チョップをする。
「何してんの!」
天狗面の女が慌てて般若面の女を止める。
しかし、流石は忍者。この程度では咳しかしない。
「せめて自殺防止器具を取ってからにしたほうがよかったかな?」
「そういう問題じゃない」
「顔はやめな、ボディボディ」
「やめて。そのセリフはなんか怒られそうだから」
そういうと、天狗面の女は女忍者の口に咥えさせていた自殺防止器具を外した。
「さあ、喋ってもらおうか。あのバカを殺そうと命令したのは誰?」
「言うわけないでしょ。そんなこと」
「そう?じゃあ身体でわからせてあげる」
お面をかぶった3人は女忍者の腹部をボコボコに殴り始めた。
「ほら、早く喋りなさい。でないといつまでもあなたがサンドバッグ状態よ」
忍者は羽交い締めにされ腹筋ボコボコにパンチを食らって苦しそうな顔をしても、なお喋ろうとはしなかった。
「流石は忍者ね。この程度じゃ喋らないか」
「『シンデモ ヒミツハ ハナシマセンデシタ』じゃ困るのよ」
「夜は深い。楽しくやろうぜ」
「そうね。じゃあドーベルマンでもけしかける?」
「いや、忍者は犬を手なづけるのが上手いと聞く。ここはやっぱり電気拷問だろうな」
「そうね。ある種のお約束だし」
こうして覆面女3人は女忍者を縛りつけ、電気拷問を行うことにした。
人の不幸ほど人間を楽しませるものはない。だから、尋問はまだまだ続く。
つづく
今回の尋問シーンにつきましては、全てを余すところなく描写しますと、倫理上問題が生じる恐れがある表現が多々あることから、一部見送りとさせていただきました。
なお、尋問シーンの完全版につきましては今後、ノクターンノベルズで出す予定はありますが、いつ出せるかは未定です。
次回も気長にお楽しみくださいませ。




