勇気 凛々 beauty 藍鸞 nothing 5
にょきにょきと建物が増え、羽毛生やさなくても外を出歩ける気候になり、原住民がかえってホームシックにかかるんじゃないか、と心配なくらい快適になった。
そもそもが過酷すぎる土地だからそれでも寒いし漁は相変わらず命懸けだけどよ。作物も、見たこと無い規模の温室で作るみたいだし。寒すぎて滅多に雪降らない地域だから可能な四角四角した縦にも横にもデカイ建物で管理するらしい。コストかかりすぎでは、と思ったがこれも蜜蜂薄荷の超技術とやらなんだろう。便利だな。色んな意味で。
「凍土から露出しました。間違いありません。《聖者の山洞》です」
何かピコピコ明滅してる部屋で蜜蜂薄荷の始祖、リボルバーが受付のおねーさんに報告している。
「ふむ。信じたくは無かったな。……ところでリボちゃん。この機械、さっきから凄い音が鳴ってるんだがこれって正常?」
「異常事態ですね。何をしたのです女神官様」
「何もしてないぞ」
ナニしてんだおねーさん。
「うむ。このダンジョン、《聖者の山洞》を、我々は何としても攻略しなければいけないのだ」
カッコよいキメ顔のおねーさん。しっとり張り付いた髪がセクシーだぜ。いや、スプリンクラー作動しとるがな!
「なるほど、これが水耕栽培というものか。確かにこれは農業に革命が起きるな」
その前に蜜蜂薄荷たちが革命起こすだろこんなの。絶対部屋中の機械ぶっ壊したろこれ。
「設備は諦めましょう。それよりもマスター、皆様を集めてください。あのダンジョンについてご説明せねばなりません」
皆様って何処から何処までだよ、ああ、事前に言付けしてんのね仕事早いなアレも早いしな。とセクハラしつつ集合させる。
「お集まりいただいてありがとうございます。虹、どうぞ前へ」
リボルバーが用意した何もない個室にうちの兄弟連中、パーティーメンバー、召喚契約モンスター、あとクソガキ王子様の許嫁連中が集まってきた。大所帯だな。
「実はこの方、虹は、モンスターでもなければ忍者でもありません」
な、何だって!?モンスターはともかく忍者じゃないのかよ!確かに髪とマフラーが1万色くらいコロコロ刻々変わってて全然忍べてないけどよ。
「その正体は遥か時空を超えてやってきた未来忍者なのです!」
デデーン!と効果音付きで語るリボルバー。いや、やっぱり忍者じゃねえかよ。
「私は過去を変えるためにやってきた。みんな聞いてくれ。人類は滅亡する」
滅亡?何でだよ!
「あ、でも悪実だけ生き残る」
何でだよ!
「兎に角、私は時代を遡り人類の滅亡を阻止するために動いている。糞過密スケジュールで最悪だった!やっとここまで漕ぎ着けたもう嫌!」
凄く恨みを感じるな。何だよこっちみんな。見るならもっと熱を帯びろ目に。ピンク色の燃焼反応おこせよ目によ。
「ほい」
虹は髪とマフラーや頭に乗せてるバイザーだけでなく目の色も一万色くらいコロコロ変えられるらしい。
「じゃあ説明終わったのでほい」
「身ぎゃあぁあああ!」
オレの肩を掴んだかと思うとブチブチブチィと真っ二つに!死!?と思ったらあっという間にオレが2人に分裂した。
「仙道と盗賊スキルの合わせ技、《概念盗み》により善と悪に分離した」
オレ悪の申し子なんだけど善属性要素なんてあったのかよ。
「ほえ?ボクが2人いるです?」
「おい、マジかよ。オレの善属性最高にイラッとすんだけど!」
憤怒尊的な方じゃなくてな。青筋走るタイプのイラッ…いやこれも紛らわしいな。コメカミに青筋走るタイプのイラッとだな。何だよその毒気の無い目はよ。
「むむむっ。もう1人のボク、言葉遣い汚ないですよ。メッ!」
「ああ、もう殺そう」
「落ち着いてB兄ちゃん!」
いつぞやのように4人がかりで羽交い締めにされたよ。いや、今回オレ悪くなくない?




