blackwhite partynight paladinknight6
向こうはウナジュウが倒れ、ネオレーザービートルが生存。ただ、ビートルは展翅熱戦を放った影響で飛行能力を喪失。反動によりしばらくは大技も出せない。
こちらはユニットワンとスーサイドがどちらも消滅。数の上では不利だが、まだ逆転の目はあるぜ。
「いけ!ガスガー!」
我がライバル、ハンエイが選出した、ご自慢のハイパーあぐもんズ五人衆の一角、ガスガー。ガス状の体を持つゴースト系あぐもんで、ガスをたっぷり詰めたミサイルの一斉掃射、《滅びの歌》による味方をも巻き込んだ強力な範囲攻撃を持つ。
戦力が落ちたレーザービートルを壁にしてガスガーでこちらを完璧に仕留めるつもりだな。向こうはまだ裏に1体あぐもんが残っている。レーザービートルごとミサイルでこちらを撃破したら、そのままやつの勝ちだからな。
だが、そう簡単にはいかせない。ユニットワンだけが切り札、隠し球じゃあないんだぜ。
「こい!ミッキーマーティン!虹!」
「な!?どちらも、新採用のあぐもんだと?今の今まで隠し通してきたのか!しかも一体は這鼠刺じゃないか。どうやって人類圏の種族と契約した?だ」
ふふふ。驚いたろう。オレもビビった。
「別の世界線とやらでは、おれたち這鼠刺が人類に復帰する際にたくさん殉教したらしいんでさぁ。どおりで。ほとんど犠牲もなくすんなり美味しい思いをするんなんて、そんなのありえねぇですからね。つまり、この世界線では、その浮いた人命の数だけ、より良い明日の為に《投資》しなきゃ割に合わない」
伊達鼠のミッキーマーティン言ってる理屈はまるでわからないが、恐ろしいことに、本気でそう思ってるらしい。
こいつ、モンスターとしてオレに仕えるために、わざと神の勘気に触れて人類からひとり堕ちたのである。
言うて人間大好きな我らの母神はなにやった所で許しちゃう人なので、そんな心広い神から怒られるために、的確なポイントをマーティンは狙った。
《初心者の街》の宿屋のおねーさん。その管理する《倉》から千年分のデザートを盗み食いしたのだ。
千年分のデザートとやらが、1日1個換算なのか、1日の必要カロリー換算なのかは知らないが、とにかく、内臓破裂するまで食べ、死んだら初心者の街の奇跡でまた復活して空いた胃に食べ物を詰めを繰り返した。
罰としてというよりは、あの最恐たる宿屋おねーさん的には、面白い見世物のお礼として、マーティンはモンスターに落として貰ったのだ。
「マーティン!まねっこどうぶつ!!」
這鼠刺は勇敢で自己犠牲の塊だが小さく、弱い。弱いからこそ、強大なものに立ち向かうための技術を生み出した。
それは心を落ち着け、勇気を持って立ち向かうための呼吸法。
「コォォォォォ」
まねっこどうぶつはそこから更に発展させ、体術としてだけでなく、呪術、仙術としての呼吸を取り入れ発展したスキルだ。呼吸を真似ることで、その生命エネルギーの動きを擬似的に再現することで、達人クラスの這鼠刺ならば瞬間的にはドラゴンにも匹敵する!
「マーティン!シザハンズの呼吸だ!」
「なにぃ!確かにこの身のこなしは、まさしくうちのシザハンズ!」
ハイパーあぐもんズ五人衆、その速攻奇襲担当の接近戦闘のエキスパート、シザハンズを再現する。短期戦闘において最速を誇るシザハンズの脚力でガスガーとネオレーザービートルの間に割り込む。
「くっ、ガスガー!《滅びの歌》の準備だ!」
這鼠刺といえば、ことあるごとに殉教しようとする独特の価値観を持つ種族だ。そのために、彼らにとって命は安いのものなかと、当初は心配になっていた。
しかし、これは間違いだった。命が何より価値があるからこそ、彼らは殉教するのだ。何物にも替えがたい唯一無二のそれを捧げることで、いつも覚悟を示してきた。
彼らの大切な大切な命を救い、人類に戻したからこそ、マーティンは種族を代表してその命を永遠にオレに捧げると誓ったのだ。
再召喚で何度も甦る命だが、しかし、その重さ、その価値にいささかも狂いはない。
それをコストに事を成すことこそ、彼ら這鼠刺の祈りの形、信仰の顕れなのだ。
故に、
今回も、
最強のたるドラゴンの1種を模した呼吸によって、神に捧げるのだ。その命を。
「マーティン、続けてまねっこどうぶつ」
「OK、救世主さま。燃料気化爆ドラゴンの呼吸!」
「待って!そんな聞くからにやべぇー響きのドラゴンいるの!?」
うるさいぞサーマモン!!さあ、このまま大爆発だぜ!!
「イッゲェーッ!マーティン!!」




