blackwhite partynight paladinknight5
スーサイドは狗尾草の文化で育った人類だ。
彼女には狗尾草独特の、匂いに比重を置く価値観がわからなかったが、わからないだけで嗅覚自体は並みの狗尾草より鋭い。
ユニットワンの覚醒せよ装甲によってそれが何倍にも増幅された!
狗尾草でなくとも、人間は匂いによって記憶を想起されるもの。
吐瀉物に撒いた塩素消毒によって、プールで遊んだあの頃を思い出すように!
今!スーサイドはレーザービートルの匂いによって、幼少期、カブトムシにマズルをしがみつかれた記憶を思い出す!怒りが全身を駆け巡るッ!許せないッ、この嫌な匂いを消してやる!
「ワオーンガルガルガルッ」
「そこそこ芸達者」
審判のゴブマーリーがスーサイドを指差して褒める。
ユニットワンの能力上昇効果を最大限利用するなら牛額のモーモーとのコンビが一番善いのだが、あぐもんファイトは相性によっては完封されてしまう競技だ。
そのため器用に立ち回れるスーサイドを選出したのだが、それを戦闘前に見抜くとは流石の慧眼だゴブマーリー。
「いっけーユニットワン!ちょうおんぱカッター!」
スーサイドの手首から刃が進出。微細な鱗の集合体であるその刃が高速で振動し、切断力をぐーんと向上させる。その振動による鱗の偏向が地下あぐもんコロシアムの照明を乱反射させ、光輝く刃となった!
「ウナジュウ!しっぽぬめぬめ!」
ハンエイが指示を叫ぶ。ウナジュウの滑りによってユニットワンのパフォーマンスを低下させる魂胆だろうが、覚醒せよ装甲はスーサイドの再生力も強化している。状態異常系の効果も直ぐに回復してしまうぜ!そのまま切り裂け!
「くっ、ウナジュウ!私を庇って!」
「レーザービートル、俺はもうダメだ。俺の生体エネルギーを全てお前に渡す。これで、アイツを倒してくれ!」
「……わかった。仇はとるよウナジュウ」
「いや、モンスター達がしゃべってる!え、これ本当にあぐもん?さっきから知らない現象ばっかり起きてるのだけど!?」
ナニイッてんだサーマモン。あぐもんはしゃべるだろ。最初はしゃべらなかったけど。そのうちしゃべるもんだろ。
「レーザービートル!ねらいうちだー!」
ハンエイの命令。ウナジュウのエネルギーを得たレーザービートルは、黄金色に輝き、高出力のレーザーを打ち出してきた!
ねらいうちという割には全身からレーザーを乱射し、視界が土煙で塞がれる。…これは、時間稼ぎだ。
気温が急激に下がり、手袋が結露し、すぐさま霜に変わる。
地下あぐもんコロシアムの熱気を全て吸い付くし、物理的にも、会場が冷たく沈黙した。
「デカイのがくるぞ!迎撃だ!ユニットワン!破壊光線!」
「遺志を継ぐぞ、レーザービートル。いや、ネオレーザービートル!展翅熱線!」
エネルギーがぶつかり合う!光の奔流が消えて目が慣れるとそこには、
「どっちのあぐもんも消滅した?くっ、相討ちか!」
一方的に2体、先制で葬れるとおもったが、流石はチャンピオンの道。そう易々とはいかないか!
「いや、違う」
審判のゴブマーリーが否定する。
「出てこい!ネオレーザービートル」
ハンエイが叫ぶ。なんてこった!あいつ、羽で空を飛べるだけじゃなく、穴を掘って身を隠すことも出来るのかよ。万能じゃねえか!
器用さ、手数の多さこそあぐもんファイトの重点。俺のファイトタクティクスは間違っていなかったが、より器用万能なあぐもんによって上から押し潰されてしまったわけだ。
「くそッ。まだまだ研究が足りねぇぜ」
「研究。違うなB-T。足りないのは、あぐもんへの信頼と愛情の力だ!」
ムッキィー!!




