諦めたグループ
無言で歩くダイスケも無言だった
しばらく歩いて立ち止まる
私はゆっくりと聞く
「ダイスケさん、今日のあれなんですか?」
ダイスケはうつむき加減で答える
「エインヘリャルのことなんだろう?前持って年齢性別は関係ないと言っておいたよね?仕方なかったんだよ」
私は納得出来ない強めに食いつく
「あんな小さな子が死にかけてるんですよ?何故助けてあげられないんですか?選定されし者だからですか?あんな女の子が?戦士?何かの間違いじゃないんですか?」
ダイスケは相変わらずうつむき加減で座り込む
「エインヘリャルは光栄なことなんだよ」
私はより強めに話す
「光栄なことって、あの子を見殺しにすることが光栄なんですか?まだ未来ある子供を見捨てておいて、なにが光栄なんですか?なにがエインヘリャルだよ!」
ダイスケは座ったまま口調が強めになる
「じゃあ助けたら良かったのか?あんなに酷い虐待を受けて生きろ。って言うのか?しかも神正会に反発して?あの子が80歳の老婆ならば納得したのか?納得しないだろう?僕だって助けたかったよ、でも助けちゃ駄目だったんだよ」
ダイスケも同じ気持ちだったのか
そもそもダイスケに当たっても意味はない
「すみませんダイスケさん、感情的になってしまいました」
ダイスケも少し穏やかな口調に戻る
「こっちこそゴメン、助けたかったのはお互い同じ気持ちだからね、まさかあんなに小さな子がエインヘリャルだと思ってなかったんだよ」
ここで怒りの矛先が神正会へと向かう
「神正会は知っていたんですよね?って言うか神正会が勝手に決めているんですか?」
ダイスケは力無く答える
「神正会が決めることじゃないんだよ。産まれた瞬間に決まることで誰にも変えられないし、そう言う運命だった。としか言えないんだよ」
神正会の責任でもないこの怒りは
一体どこにぶつけたらいいのか?
幻聴が女の子を助けられなかったことを連呼する
「ちょっと幻聴の薬飲んできます」
そう言うと私は薬を持ち水辺へと向かう
湧き水の近くで諦めたグループが談笑している
その中の一人の男性神様が話しかけてきた
「日本からエインヘリャル出たらしいね、おめでとう光栄なことだよね」
私は幻聴も怒りの矛先もであい重なって
「めでたくないよ、まだ子供だったんだよ!辛い思いして死んだんだ。どこがめでたいんだよ!」
他の国の神様に当たってしまった
言った直後に後悔する
何か言い返されてしまうかな?
しかしその国の神様は怒らず笑っている
「ははは、子供だったのか?ウチの国では子供が死ぬのは日常茶飯事だよ。生きていても食べ物もないし泥水をすすって生きている。死んだ方がいい場合もあるんだよ」
そうだった自分の価値観では子供は助けたい
でもそれは私の自己満足であって助けても
その子が幸せになるのかどうかは別の話だ
助けた方が地獄の場合もあるんだ
「すみません、感情的になってしまいキツい言い方でした」
また謝罪をする
発展途上国の神様は
「いやいや、良いことだと思うよ。私も最初は助けていたんだ。最初からこんなに諦めていたわけじゃない。でも命を助けてもウチの国では生きるのが辛いんだよ、生き地獄だからね。でも恵まれた日本の神様になるんだったらその気持ち忘れちゃいけないよ」
私は恥ずかしくなってしまった
諦めていることでどこか見下していたが
私よりも断然神様らしい
ちゃんとした理由があって諦めているのだ
私は一礼して逃げるように水辺へと歩いていく
一つ勉強になった