番外編① 争奪戦
「おい、いちご」
「……なんですか」
ある日の午後。
リビングで録り溜めたドラマを見ていたときだった。
「映画、観るぞ」
「え、ちょ、今私が観て…」
TOMAさんがリモコンを取り上げ動画サイトに変えてしまった。
「ちょっと、ずるいですよ。今日は私に主導権ある日じゃないですか」
同居を始めてテレビのチャンネル争いをしたことがあった。
その日から、テレビの主導権は一週間交代になったのだ。
で、今日はまだ私の主導権の日。
「どうしても今、観たい」
「だったら部屋でスマホで観ればいいじゃないですか」
「小さい画面は疲れる」
「そんなこと知りませんよ。話し合いで決めたじゃないですか!」
「キャンキャンとうるせーな」
「なんですって……!」
吠えまくる私に、TOMAさんは深いため息をついた。
「はぁ……ったく、わーったよ。なら……」
TOMAさんが私の脚の前で跪く。
「……?」
なにをする気なのかとじっと様子を伺う。
TOMAさんはそのまま私の膝の上に手を置いて。
「……っ」
もう片方の手は私の頬に添えた。
そして、上目遣いで私を見つめる。
「……………っ」
呼吸が止まりそうな時間。
ってか止まってるかも。
「苺依……お願い、いいだろ?」
「っっっっ!?!?!?」
推しに見つめられながら、こんなこと言われて「だめ」なんて言える?
「苺依?」
ああ、かっこいい。
「ずるいですよ! 今回だけですからね!!」
「いいのか?」
フッとTOMAさんが離れてようやく空気を吸った気分。
(はぁ、はぁ……死ぬかと思った……)
「いちご!」
「はい?」
「一緒に観ようぜ」
二ッと笑ったTOMAさんの笑顔は無邪気な子供のようだった。
「~~~っ………わかりましたよ」
「おっし。じゃポップコーン用意しようぜ」
「え、食べながら観るんですか?」
「映画にはポップコーンとコーラだろ」
「たしかに定番ですけど……」
「こういうのは楽しく観た方がいいんだよ。ほら、行くぞ」
(ま、たまにはいっか……)
キッチンに向かう彼の背中はどこか楽し気で。
私はその後ろを追いかけた。
「待ってください。私も手伝います」
Fin




