お母さんただいま!
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スイーツメイドになったのはいいんだけど、ひとつ問題があるの!
ねえ、石ころさんはこれからどうするの!?
ええっ!? うそっ!? 本当に!?
『余はまだ何も言っとらんぞ小娘……』
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「ただいまー」
「あらおかえり。 遅かったわね」
家に帰ると、キッチンからお母さんが顔を出した。
どうやら、夕飯の準備をしていたらしく、味噌汁の匂いがする。
「うん。 ちょっと想定外の事件が起きてさ」
「想定外? あちっ!」
お母さんはおたまで掬った味噌汁を一口啜った。
「お母さんさ、『自分のこと"妖精"とか言う人には気をつけなさい』ってよく言ってたじゃん?」
きな娘のその一言で、お母さんの手がピタッと止まった。
お母さんの表情は、何か警戒するような顔つきに変わる。
「あなた……。 まさか……」
少し声を震わせながら話すのは、母の教えを娘が守れなかったからではない。
「もしかして……、これのこと――かな?」
素直なきな娘は、手にした”あるもの”をお母さんに見せた。
まるでスマホを持つように差し出されたそれ。
その瞬間、お母さんは諦め、そして悟った。
通って欲しくないと思っていた道に、娘が足を踏み入れてしまったことを。
「……久しぶりね、石ころさん」
お母さんは、呆れたように目を逸らし、その楕円形の小さな石の中にいる男へと冷たく呟いた。
「やはりお主だったか、先代戦闘型甘味娘」
「はぁ……。 なんてこと……」
料理の手を一旦止め、冷静にコンロの火まで消したお母さんは、額に手を当て渋々と現実を受け入れる。
「え? どういうことなの? もしかして……、知り合い?」
一方、話を持ってきた張本人のきな娘は、その話に置いていかれたようだ。
自分だけ理解できていない現状に、呆れた石ころが助け舟を出した。
「先代戦闘型甘味娘だと言っているだろうが」
「先代せ……え? なんだって?」
しかし、きな娘は3文字以上並ぶ漢字に弱い。
故に、8文字も並んだ漢字を理解することなど、到底難しい話だった。
「小娘。 もっと学問に励め。 母君をあまり困らせるな。あと余も」
「へへへ、ごめんごめん。 でも、つまりどういうこと?」
「はぁ……。 いいか? 小娘の母君は、先代・戦うスイーツ女子『戦うスイーツコギャル』だ」
――。
一瞬、静寂が訪れた。
きな娘とお母さんは互いに顔を見合わせ、やがて同時に叫び出す。
「えええええ! なんだってー!?」
「その名前はいわないでえええぇぇ!?」
そして、きな娘は驚きのあまり"ポン"っと石ころを空中に解き放ち、それをすかさずお母さんが両手でキャッチすると――
――シュッ!!
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
――ボフッ!!
大谷翔平もビックリするであろう豪速球をリビングのソファーに叩き込んだ。
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ねぇ。
お母さんが先代だったなんて聞いてないよ。
『この親にしてこの子ありだな……』
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