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第77話【マザーの謎】

 ダダ様が【眠れ】と唱えた途端、ギースは糸が切れたように倒れたが──


「──雷帝!」


 そこからのヒーローは速かった。

 ギースの意識が喪失したのと同時に雷帝を発動。

 ギースが地面に倒れる前に抱えてダダ様の腕を掴んだ。


「雷帝!やっぱり!ライゼさん!」


 喜んでいるのか怯えているのかわからないダダ様に対して、ヒーローは抵抗できないように雷のパワーを上げる。


「っ!痛い痛い痛い!もうしません!でも大きくイジッたわけじゃないんですよ!?」


「俺は父さんじゃない!」


「でも……雷帝が!息子は能力なしだって……」


「父さんが死んだあの日に……使えるようになったんだ。ダダ様だってあの日の映像は見たんだろ?」


「ライゼさんが……そんな事が、本当に……」


 ダダ様は悲しそうにぶつぶつと何かを言っているが、声が小さすぎてヒーローには聞き取れなかった。


「ダダ様?」


「ああ、ごめんね。本当に君が息子なんだね?だとしたら能力についても色々調べたいしあの日のどの時点で能力が発現したかを明確に知る事で──」


 いきなりダダ様は速射砲のように息継ぎなしで喋り始めた。


「ダダ様!?いきなりどうしたんだ!?」


「あ、ああ、クセなんだ。い、いっぱい考えが浮かんで喋り出すと全部を話すまで止まらなくなる。ちゃんとまとめて話すようにってライゼさんに言われてからは一回置いて喋るようにしてるんだ」


「それであの口調に──」


 ヒーローが喋っている途中でギースが首を押さえながらむくりと起き上がった。


「いてて……」


「っ!な、な、なんで!?もう!?解除してないのに……」


 眠らせてから間も無く起きてきたギースにダダ様は驚いた。

 通常であればダダ様が解除しない限り起き上がって来ないからだ。


「ヒーロー、大丈夫か?」


 ギースはダダ様から視線を外さないようにヒーローの方を向いて気遣った。


「俺は何もされてないよ。ギースさんも大丈夫?」


「多分、ね。ダダ様、僕に何をした?」


 油断はあったが意識を喪失、ましてダメージまで受けている。

 学生の能力で可能なのか?

 ギースは険しい顔でダダ様に詰め寄った。

 あと数センチで額がぶつかりそうだ。


「な、ナノマシンを操作して眠らせただけ。焦げてるのは、ヒ、ヒーローが……」


 ギースはすぐにヒーローを見るが目を合わせてくれない。


(焦げてる……。事実か……)


「……能力は何だ!?」


「お、お、怒らないで」


「……微かに聞こえていた。ちゃんと話せるんだろ?話せ」


「わかった。普通に話せるようにやってみる」


 ダダ様は大きなタメ息をついた。

 普段は一文字置いて喋る事で要点をまとめるように心がけているが、集中する事でそれを可能にしようとしている。


「俺の能力は簡単に言うとハッキングみたいなものだ。厳密には違うんだけど、そう思ってくれていい。情報をちょいとイジッたりとかは得意なんだ。だからナノマシンに入って眠らせた。マザーの為にずっとここにいてさ、ライゼさんの子どもを見てみたかったからわざわざアイランドシティに──」


 ダダ様には無理だった。


「待て待て、落ち着け!これはどうだ?沈黙を会話の始めに入れるんだ!?」


 ダダ様から聞きたいワードが次々と飛び出し、逆にギースが焦ってしまう。


「…………」


 三人に長い沈黙が訪れる。

 ダダ様の弟に取り付けられた呼吸器の『シュコー』という酸素を送る独特な音がBGM代わりに流れていた。


 ヒーローはダダ様の口元に注目する。

 微かだが動きがある。


(喋ってるつもり……かな?)


「ダダ様?何も言えてないよ……?」


 ヒーローの言葉にまさかといった表情をするダダ様だったが──


「……!!……う、ぐ、ブハァア!!」


 息さえしていなかった。


 ギースはこのダダ様という男がどうにもわからなくなった。

 不気味だが要領の悪いこの人物、嫌いではない。


(仕方ない、当たりを弱くして話してみるか)


「ダダ様、僕たちに敵意はないんだ。ただ知りたいだけだから、座って話し合おう」


 ダダ様はチラリと上目遣いでギースを見た後、ヒーローにも同じようにして、何も話さず手振りだけで二人を司令室のような所へ案内した。




 ダダ様は二人をイスに座らせると、飲み物まで振る舞ってくれた。

 どうやら敵意がない事は伝わったようだ。

 二人はモニターがズラリと並んだこの部屋を物珍しそうに見回している。


「ギ、ギ、ギース。は、話すよ」


 ようやく話し合いらしくなってきた。ギースはダダ様に貰ったミルクを片手に質問を始める。


「さっきの話を聞く限り、ダダ様は僕らよりかなり年上なんだな」


「そ、そうだ。も、もうじいさん」


「そうは見えないがな。弟と違って見た目が若すぎる。本当の兄弟ではないのか?」


「兄弟、兄弟だよ。こ、個人情報を書き換えて学園に入学した」


「……ダダ様の能力ならそれが可能なのか?」


「あ、ああ、政府の奴らは顔なんか見ない。デ、データにそう記されてればそれが真実なんだ。お、弟は【マザーの使徒】じゃないから──」


「それだよ、本題は。新しい単語が出て来ても、マザーの事は何もわからないんだ。なぜダダ様が知っていて、ライゼさんとどんな関係なのか、一から説明してくれ」


 ダダ様は無言で両手の人差し指を二人の頭に向けた。


「ダダ様!」


 ヒーローが腕を掴んで注意すると、ダダ様は目を閉じて説明を始めた。


「ヒ、ヒーローのパワーを超えて操るなんて俺にはできない。あ、安心して、喋るより早い。お、俺の記憶を体験してほしい」


「ヒーロー……」


 ギースが首を振ると、ヒーローはゆっくりダダ様の腕を離す。


「い、いくよ」


 ダダ様がそう言った瞬間、二人に記憶が流れ込んできた。


(これがダダ様の──)



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