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第49話【抵抗】

 

 ついに西側へパワー計測値3万の個体たちが学園内に到着。


 続いて北、東、南と全方位囲まれていた。


 その姿はまるで悪魔そのもの。

 見るだけで震えてしまいそうな程、異形の面。

 個体差はあれど、皆恐ろしい姿をしていた。


「パワーショット!!」


 まずは様子見とばかりにギースが先制する。

 しかしあっさりかわされ、敵は一発だけ右のパンチを放った。


 あまりの速さに腕をクロスし、全力でガードするギース。

 咄嗟に後ろへ飛んだものの、凄まじい打撃音が響き、今まで食らった事のない衝撃がギースを襲う。


 足で地面にブレーキをかけて減速し、止まった時には約20mもの両足によるわだちのような跡ができていた。


(なんて攻撃だ!ただ右を振るっただけだぞ!?)


「ふぅーっ……」


 《左にパワーが集まっています!!》


 インカムからオペレーターの声が聞こえる。


 ギースはおもむろにガンを操作し、『ピーッ』と機械音が一回。オペレーターとの通信が途切れた。




 ━━ オペレーションルーム ━━


『No.3が回線切断!!』

『何!?ロストか!?』

『やられてません!自分から切断しました!』


『No.3は何を考えてるんだ!!』


 ドンッ!!


 とデスクを叩き、悔しがるオペレーターの一同。

 これにより、ギースの戦いをモニターで見守る事しかできなくなってしまった。




 ギースはインカムを自ら切った。

 これはあの時と同じだ、一瞬でも気を抜くと危ない。

 そう判断しての事だ。と、自分を納得させたが、普段ケチってオペを入れてないので単純に慣れてなかっただけである。


 敵が前傾姿勢になり、左フックと右アッパーの2連打をギースに全く届かない位置で放った。


「ッ!!」


 ギースは驚き、目を見開く。

 まるで2連発のパワーショットだ。

 そのまま避けきれずに直撃、衝撃の途中で飛び上がり、上空で技を繰り出す。


駈歩キャンター……」


 空中からの振動が地上にいるHERO(ヒーロー)たちにも伝わってくる。


 信じられない事にギースは空中を蹴って超スピードで移動していた。

 まるでガービィのラビッツフットだ。

 ギースは自力で技を編み出していた。


 一瞬にして敵の真上に移動したギース。

 敵はあまりのスピードにギースを見失っていた。


「パワー……ショット!!」


 学園中に響くほどの轟音に、西側にいるHERO(ヒーロー)たちは耳をふさぐ。


 ラビッツフット同様、蹴り足で全身の力を乗せたパワーショットの威力は何倍にも跳ね上がり、敵を倒した。


「ようやく一体か……」


 ギースが目をやった先には、今の個体と同等かそれ以上のパワーを持つ個体が約二十体はいた──


「フッハ!あの時みたいだな。でも僕はあの時とは違うぞ」


 強がりを言ってみても、戦力差があるのは否めない状況だった。


 状況把握の為、ようやくインカムを起動してつけるが──


 《No.3!── ✕□▲□✕✕■◆△!!》


 オペレーターのあまりの剣幕に、ギースは一度インカムを遠ざけてしまう。

 そして改めてインカムをつけて謝罪をした。


「す、すいません。はい、集中できるかなって……。はい、言い訳です……。本当はオペ雇ってなくて、慣れてなくて……。はい、二度と致しません!」


 オペレーターから放送禁止用語でめちゃくちゃ怒られたギースであった。




 東側ではガービィとエイリアスが敵を一掃しようと連携している。


「まとめてくれエイリアス!」


「任せて!砂竜サンドラ!!」


 エイリアスの砂の竜が敵に巻きつくと、砂が爆発したように飛散する。


 縛ってまとめようとするもパワー差で押し返され、捕まえられない。

 舞い上がった砂埃からいきなり現れた敵の攻撃をまともに肩で受け、吹き飛ぶガービィ。


「ガイザビィズ!」


「ガービィだっ!!」


 ガービィは飛ばされながらも体勢を立て直し、両足を開いて両手を腰にやり、体全体が光り出す。


「ふぅっ、パワーアップ!──ラビッツフット!!」


 ガービィは目を閉じ、一考。目を開けると大声でいきなり謝った。


「すまん!校舎をちょっと壊す!!」


 これには生徒だけでなく、各メディアで見ていた人たちもビックリした。

 範囲の広いガービィの技は制御がしにくい反面、気にせず打つ事により威力が増す。


「パワー…………ショットォオ!!」


 敵に目映い光が当たった瞬間、地面が揺れたと思うくらいの衝撃波がガービィから波のように広がる。


 砂埃が収まると、校舎の一部ごと敵は三体倒れ、ヘビに戻っていた。


「ガイ……ガービィ、さすがね」


「そろそろガービィに慣れてくれよ? エイリアス。それにまだ三体だ、見ろ」


 眼前に広がる敵の群れ。

 東側だけ圧倒的に数が多い。

 そしてこの悪魔的な個体は今までのようなモンスターではない。

 まるで作戦があるかのような動きに、ガービィは違和感を覚えていた。



 南側でもHERO(ヒーロー)たちとサリー、サンディスが踏ん張っている。


「──キャアッ!」


「サンディス!掴まって!!」


 吹っ飛ばされるサンディスに手を差しのべるサリー。

 サンディスは手を取り、サリーの体をクルッと回るように着地。


「助かったわサリー、この個体は何なの!?」


「強すぎね……」


 砂竜サンドラでも捕まえられず、フレアもダメージはあるものの、平然と向かってくる悪魔のような個体に、サリー達も手を焼いていた。


「フレア!!」


 サンディスが特大のフレアを放つと敵に全て着弾。サリーは煙に一瞬視界を奪われる。


 敵は煙の中から手を伸ばし、サリーの足を掴んで投げ飛ばした。

 サリーは上空へ投げ出されながらも技を放つ。


「パワー……ショット!!」


 何も出ない。手を見るが光りもなく、パワーの欠片もない。


「光ってない!能力切れ!?こんな時に!」


 サリーは急いで他の能力を確認。


「砂は……」


 サラサラと地上から手に砂が収まった。


「まだ行ける!繋げる!!」


 サリーは諦めない。砂のパワーで何とか飛ぼうとする。


 《向かって左に敵が集中》


 インカムから状況が伝えられると、サリーは空中で体勢をわざと崩し、敵の方へねじれた。


「サンディス聞こえる?」


 サリーは砂で飛びながらサンディスとインカムを通じ、会話する。


「いちいち確認しない!こんな時に!」


「フフッ、懐かしい反応ね。気づかれないよう細かい砂を巻くから!」


「フレアを連発ね、目隠しするわ」


 考えが一瞬で伝わる。お互いに感じるこの頼もしさを懐かしんでいた。


 サンディスがフレアを連発、そこへ砂を巻き上げるサリー。


「完全に見えてない!今よ!」


砂竜サンドラ!!」


 敵五体を一気に締め上げ、地上から数メートル上に集めるサリー。


「フレアで援護する!特大のがあるでしょ!?サンディス!」


「あんたも撃ちなさい!技は【フレアボム】よ!」


 サリーは上空から、サンディスは地上から両手を目一杯敵に向けて伸ばし、同時に技を放った。


「「フレアボムッッ!!」」


 フレアから放たれる一つ一つがミサイル級のフレアボム。

 敵が集まった一ヶ所へ集中放火。

 それも二人同時に。


 無数の光が着弾する寸前、サリーが巻きついていた砂竜サンドラを解除。

 着弾するまでの一瞬の間に砂竜サンドラで敵を包もうとする。


「包みなさい、砂竜サンドラ!」


 サリーは手を握り、砂の竜はとぐろを巻いて球体のように敵を包む。まさしく一瞬でサリーはこの行程を終えた。


 その様子を見ていたサンディスがサリーの意図を理解して呟く。


「サリー、相変わらず恐ろしい事を……」


 球体の中でくぐもった爆発音がして、熱で赤く光る。


 包まれた事で二人のフレアボムは威力を増し、敵五体は見事に吹き飛んだ。


「ちょっとサンディス……」


「ハァ、ハァ、何よ」


「この技めちゃくちゃ疲れるんだけど……?」


「疲れるだけ?私はパワー切れよ……。あれだけ技を連発しといて、相変わらずなんてパワーしてんのよあんたは」


「フフッ」


 ──サンディスは思う。


(ああ、懐かしい。


 このやり取り、笑い方。夢を追いかけた若い時分はなんて楽しかった事だろう。あの時に戻れたなら──)


「サリー?あんたが結婚して、一緒に戦えなくなってから──」


 寂しかった、が出てこなかった。

 サリーは口ごもるサンディスの気持ちを察して返答した。


「私もよサンディス」


「言わせなさいよ。そんなとこはキライよ」


「フフッ言わないくせに」


「フッ……あれどうすんのよ?」


 眼前に広がる絶望的ともいえる数の敵。

そしてある事実が二人をさらなる苦境に追い込む。


「もうサンディスの能力しかストックがない状態よ……」


「──えっ?」


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