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猫と杓子がやたら強い。  作者: しゃもじ派
封印と芽生え
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飛膜板

「よつはうるさいぞー」


蝿の羽音を聞き分け、正確にその居場所を測る事が出来る程に耳が良いのが猫。家の外に居る飼い主の足音を聞き分ける程だし。大きい音が苦手だ。


「あっ!ごめんしゃもじ!」


「むー。ゆるすー。」


あ、許すんだ。俺だったら噛みつき攻撃されていそうなのに。


可愛すぎるしゃもじを見て我に返ったのか、表情が和らいだが……四葉。炎の壁がそのままだぞ?


四葉を怒らせると恐いな。実は水竜も倒せたんじゃないか?


「あっつい!」

「暑いよ暑いよーー」

「死んじゃう。」

「ごめんなさい!言うこと聞くから許してー?」


……ほう?何でも……とな?結果オーライというヤツかこれは。


四葉の紅蓮炎壁からは熱は感じるが、草木は燃えていない。


つまり実は熱くない。こんな微調整も出来るのか?


「形だけの霊法……『幻術(げんじゅつ)』じゃな?」


「御存知でしたか。流石花王様ですね。」


「うむ。……幻術は霊法の中でもかなりの高等技術じゃと聞く。器用な奴じゃなぁ。」


四葉の器用さが成す技らしい。意外に冷静なんだな。


大樹の娘だけあって天然な部分が目立つから、実は凄いって忘れてしまう。


紅蓮曰く「九尾族歴代最高の逸材ですよ。」との事だ。


うちの猫が気を許す程だしな。通常猫は臆病な生き物だから気を許すまでに時間がかかるのに。


……別に悔しくなんかない。





野衾族の集落は、樹に空いた穴の中にあるようで、俺らの中ではジジイしか入れない。


彼等の生業(なりわい)は『運搬』。空を飛ぶというのを利用した宅配便みたいなものらしい。


とりあえずジジイに集落の長と交渉してもらっていた。


「『飛膜板(ひまくいた)』で運べるのは6人まで!」

「ギリギリだねー!」

「黒漠までしかいけないよー?」

「『人』って普段何食べるの?」

「『人』なんだから、転移霊法で移動すれば良いと思うの。」


野衾族は30センチ程の体長に、樹木の葉を加工したと思われる服、身体と同じくらいの大きさのふさふさの尻尾、いちいちうるさいのが特徴だと言えるな。圧倒的なファンタジーの登場に感動してしまった。


『飛膜板』というのは魔法の絨毯のようなものだろうか?木々の間を滑空するムササビは、身体の飛膜を広げて飛ぶのだというが……。それを板にしているのか?


「そろそろめし?」


「お前……寝るか飯食うかしか考えてないのか……?」


「だめかー?」


なんかしゃもじの喋りも流暢になってきた気がする。


前の世界で観たアニメに出てくる猫は、セーラー服着て戦う少女に色々なアドバイスを出していたが……


「なぁ。しゃもじ。俺らはこれからどうするんだ?」


「しるかー。」


とまぁ、そんなに上手くはいかないみたいだ。


飯を作るにしてもこんな噂好きの種族の前では無理だ。そもそも材料がない。という訳で空間圧縮袋の中に入っている干し肉をしゃもじに与える。


「お、お姉ちゃんはすごい魔法が使えるんだね。」


おっかなびっくりな様子のレラが四葉に話しかけていた。うん。さっきの四葉は本当の怖かったよなレラ。


「ん……?うん。私達は霊法って呼んでるけどね。」


優しく微笑みながら言葉を返す四葉。


やはり『人』であるレラは、霊法ではなく魔法と表現した。


明確な違いは、その力の源。一方は精霊で、もう一方は悪魔だ。


俺が得た情報は殆どがジジイからだから、その知識に偏りがある可能性があった。


そもそも戦争というのは異なる正義のぶつかり合いで。


片方の意見だけを聞けば、「お前が正しい。相手が間違っている。」になってしまうのが殆どだ。当然、中には物凄く利己的な理由で、というのもあるのだが。


そういう理由もあって、俺も四葉も胡桃さんも、レラが魔力と表現するのを無駄に否定したりはしない。



「レラは魔法を使えるのか?」


「少しね。でもまだ『(スキル)』もないし。」


また新しい言葉が出てきた……。(スキル)ね……。有りがちな話だ。


(スキル)ってなんだ?」


(スキル)(スキル)でしょ?お兄ちゃんも物浮かせたりとか、見えない手とか出せるじゃん。」


ふむ。そのままの意味と取るならば、霊術のようなものだろうか。


魔力を使ったその『人』特有の特殊能力……?


まぁその内に解るだろう。ジジイにでも聞いてみるかな。


チラッと四葉を見ると、首を横に振られた。どうやら知らないらしいな。






「許可を得たぞ。黒漠まで運んでくれるそうじゃが…タダとはいかんかった。」


「報酬か?何か要求でもされたのか?」


しばらくしてジジイが戻ってきて、交渉成立を告げてくれたが。


―――緑双樹(りょくそうじゅ)の木の実3000個。もしくは蔓陀樹(まんだじゅ)の木の実50個。


それを報酬として持って来いと言われてしまったようだ。


良くは解らないがそんな木の実を集めるより、歩いた方が早そうだが…


「ふむ、まぁそのくらいなら今日中に集まりそうだな。」


と、胡桃さんが楽観視していた。


「いやむしろもう既に報酬は渡したぞい。儂が言いたいのは、妖法を使った分で消耗した霊力を…じゃな…」


あぁ。そういえば木の実とかならジジイが何とか出来るよな。つまり腹が減ったという事か。


とはいえここで料理をする訳にもいかないので。空間圧縮袋からお木の実焼きを取り出してジジイに渡して置いた。…腐ってはない、と信じたい。



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