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猫と杓子がやたら強い。  作者: しゃもじ派
食の神 プウ
13/77

「里まであとどれくらい?」


俺は大樹が獲物を捕まえてくるまでの間、俺と四葉の2人になってしまった。ジジイも焔も大樹とセットだしな。草原を縦横無尽に走り回っているしゃもじを見ながら話しかけた。


「ん~あと半日ぐらいかな?今日はここで野宿になっちゃうと思う。」


半日……ひ弱な現代社会人には辛いな。とはいえあまり疲れてはいないんだけど。そういえばさっきから中々夕陽が沈まない。


「ちなみに半日って何時間だ……っけ?」


「24時間でしょ?そんな事まで忘れちゃったんだ……?」


半日が!?って事は1日は48時間か!?道理で中々陽が沈まない訳だ。え……待てよ。それつまり…


「1時間は何分だっけ?」


「ふふっ。60分だよ〜。1分は60秒でしょ?」


あぁそこは一緒で良かった。夜も24時間か。これは慣れるのに時間がかかりそうだ。


あ、しゃもじが何かを追い掛けている。しゃもじの前には、飛び魚みたいな群れが元気に跳ねていた。あぁ。いいなぁ…。イルカウォッチングに来たみたいだ……じゃねぇよ!!


「魚が草原でどうして何が!?」


おぉい!!言葉がおかしくなってしまったじゃないか!!


足鰯あしいわしの事?あれのダシは美味しいんだよ?」


煮干か!?調理法は一緒でも陸にいるぞ鰯が!!しかも結構な群れだ。いや…まぁいいか。慣れなきゃいけないよなこういうのも。


しゃもじが追い付いたと同時に前足を降り下ろすと、物凄い衝撃波が鰯の群れを襲い、彼方へと飛んでいってしまった。…あいつに細かい狩りは無理だな。強すぎる。


「あれ?いなくなったー?」じゃねぇぞしゃもじ!探さなくていいよ、ふき飛んだから!


「ねぇ……。」


おっと。遠くのしゃもじの行動に気を取られて、沈黙になってたみたいだ。気を遣うかのように四葉が声をかけてきた。


「何?」


「……どうして…嘘ついたの?」


あぁ。気付いたか。基本的に女性は勘が鋭いからなぁ。前の世界の友達も、浮気したの一瞬で奥さんにバレていたしな。


「『人』だからこそ、『人』のそういう部分を良く見てきた。って言ってたよね?……それは記憶が無い人の言葉じゃないよね?」


確かに迂闊うかつだ。女性じゃなくても気付きそう。他の奴等は流していたが。


「ん~。嘘をついたのは謝る。ごめん。でも話せない、って言うより何て言えばいいかわからないんだよね。現状が把握出来ていないんだ。」


「どういう経緯で獣神様と契約しているのかも?」


ああ質問されていたよね。幼い頃から育てている?気が付いたら隣にいた?嘘ではないけど、通る気がしないな。


「……じゃあ、いつかちゃんと話してくれる?」

俺が思考を巡らせていると、膝を身体に寄せるように折り曲げて座る四葉が、つまり体育座りの状態で首を傾げながら聞いてきた。耳の先が少しだけ垂れている……かわいい。


いい子じゃないか。でも内心はかなり不安なはずだ。『人』である俺を里まで連れて行くのだから。


「話せる事がないんだ。」


「どうして?」


「俺の料理には霊力を上げるという力がある。で、俺は料理をする為にここにいる、の他は俺自身でも解らないんだ。しゃもじが獣神とは知らないまま過ごしていたし。」


俺の言葉に困ったように眉を寄せる。理解が追い付かないか?いっそ別の世界から来て、神の加護をである杓子を貰い受けたと言ってみようか。……いやダメだ。


「そっかぁ。困らせてごめんね。……確かに霊力を上げる料理が出来る事も、話せる事じゃないもんね。」


そういう事だ。言い触らして、悪い奴に捕まって料理をさせられるとか堪ったもんじゃない!!仮に杓子が盗まれたりしたら大変だしな。


……考えなしにジジイと大樹と焔には教えてしまったが、大いに反省しよう。『人』が凶悪な存在である以上、秘密を通さねばならない。獣人だから、妖怪だから悪い奴がいないとも言い切れないしな。獣神が傍にいるとはいえ安心は出来ない。


「精霊や生物を動けなくしたり、封印したりする霊法はある?」


「あるよ。でも自分より霊力の低い者にしか効果がないから安心していいと思うよ?獣神様の霊力は圧倒的だと思うから、多分九尾様を含む里の全員でかけても効果ないと思う。」


良かった。とりあえずいきなり動けなくなるとか、しゃもじが人質(猫質?)になる可能性は低いという事だ。ちなみに俺には人質の価値がない。しゃもじはそこまで賢くないから多分見殺しになるだけだ!!はっはっは……。


「獣神様と契約すると、どんな霊法使えるの?」


興味津々といった顔だな四葉。生憎だが……。


「霊力の使い方がわからないんだ。」

宝の持ち腐れ、なんだろう。獣神とは糞が1000万になる程凄い精霊だから。


「教えてあげよっか?すぐ使えるようになると思うよ?」


「いいのか?『人』だぞ?」


「あはは。まぁ正直不安がない訳じゃない。けど知らないと自分の身を守れないよ?」


「俺が安全と信じる事が出来たら教えてくれ。」


……優しい子じゃないか。なんだこれ。惚れろって言ってるのか!?


「なおとーー。めしはー?」


いつの間にかしゃもじが隣で座っていた。はいはい。大樹が何を取ってくるかによるけどな。


「そういえば精霊の霊力を借りて、霊力切れで倒れるって矛盾していないか?」


俺がしゃもじの背中を撫でながら質問すると、四葉がゴホンと咳払いをし、目を輝かせて、身振り手振りを交えて説明をしてくれる。……教師に向いてるかもな。


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