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アルケイア・アルケミスト  作者: 伝福 翠人


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6/13

ざまぁの始まりと偽物の錬金術師

 ――その頃、Sランクパーティー「暁の剣閃」は、深い苛立ちに包まれていた。


 リーダーである私、リディア・フォン・ヴァインベルグは、目の前のオークキングに舌打ちをする。かつては取るに足らない相手だったはずだ。それが今や、こちらの攻撃はことごとく浅く、仲間たちは皆、息を切らしている。


「くそっ、剣の切れ味が悪い!」


「ポーションがもう尽きたぞ! 安物はこれだからダメなんだ!」


 仲間たちの不満が、私の耳に突き刺さる。


 分かっている。全ての質が落ちていることなど。カイ……あの役立たずを追放してから、何もかもが上手くいかなくなっていた。だが、プライドがそれを認めることを許さない。私の判断は、常に正しくなければならないのだ。


「ぐずぐずするな! 私に続け!」


 私は魔剣に魔力を込め、強引にオークキングをねじ伏せた。しかし、その勝利には、かつてのような圧倒的な爽快感はなかった。ただ、疲労と焦燥感だけが残る。


 辛くもダンジョンを攻略した後、案の定、パーティー内で口論が勃発した。


「ちくしょう! カイの野郎が作ってたポーションなら、一瞬で全快したってのによ!」


 盾役のゴードンが、ついにその名を口にした。他のメンバーも、気まずそうに同意の目を向けている。


 そして、誰かがぽつりと呟いた。


「……カイがいれば、こんなことには」


 その言葉が、私の心の逆鱗に触れた。


「黙れッ!」


 私の怒声に、全員がびくりと体を震わせる。


「あの役立たずの話を、私の前で二度とするな! あいつがいなくなったから弱くなったのではない! お前たちの気合が足りんだけだ!」


 私は一方的に怒りをぶちまけ、最悪の雰囲気のまま、王都のギルドへと帰還した。


 ギルドで荒れたように酒を飲んでいると、一人の男が、ぬるりとした笑みを浮かべて私のテーブルに近づいてきた。


「いやはや、かの有名な『暁の剣閃』の皆様。近頃は、少々お疲れのご様子とお見受けします」


 胡散臭い、と第一印象でそう思った。男は自らを一流の錬金術師だと名乗り、甘い言葉を囁いてくる。


「もし、あなた方がお使いのアイテムの質に不満がおありでしたら……この私めが、至高の逸品を錬成して差し上げますよ。以前いたという役立たずとは、比べ物にもならないほどのね」


 その言葉は、悪魔の囁きだった。


 私の判断は間違っていなかった。カイなど、やはり三流の役立たずだったのだ。目の前のこの男こそが、私たちのパーティーに相応しい。そう信じたかった。


「……契約しよう」


 仲間の微かな制止の声を無視し、私はその場で、男と高額な専属契約を結んだ。


 契約書を手に、私は満足げに口の端を吊り上げた。これで、パーティーは再び最強へと返り咲く。


 偽物の錬金術師が、ほくそ笑みながら去っていく。


 それが、さらなる破滅へと続く道だということに、この時の私は、まだ気づいていなかった。

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