第肆拾一話 【蘇る記憶】
天さんと金さん。
二人が飯綱荘へやって来た時、私は何故か目眩がして倒れてしまった。
目を覚ませば自分の部屋のベッドの上。
「あれ……? 私……どうして……?」
目を覚ますと、隣には白君と黒君がいる。
「二人とも……私……」
「あ、気がついた? 智子お姉ちゃん玄関で倒れるから部屋まで運んでもらったんだよ」
「そっか……ありがとう。 まだ貧血が治って無いのかも……」
「そうじゃ無い……起き上がれそうならこっちに来てくれるか?」
「う、うん……」
私は体を起こしてキッチンに向かうと、全員が座っている。
「皆さん……どうしたんですか?」
「これから説明させてもらう」
私は座っている天さんと金さんを見るとやはり少し頭が痛くなる。
そんな私を白君と黒君が支えてくれた。
「私が説明します」
赤井さんが話そうとすると、天さんと金さんが立ち上がり頭を下げてくる。
「ふ、二人ともどうしたの?」
「それはこれから説明します」
赤井さんから説明された事はとても信じられない事だった。
だってみんなの事を私は前から知ってるだなんて……。
そしてみんなが狐の妖怪だなんて……。
「みなさんでからかわないでください!」
「からかってなんていませんよ」
「そうだよ、トモちゃんもこれを見て思い出さない?」
銀君の頭にピコっと耳が生え、冷蔵庫が勝手に開き中のプリンがふよふよと銀君の前に飛んできた。
「え!? 手品? これって手品ですよね?」
赤井さんを見ると赤井さんにも耳が生えている。
そして白君や黒君にも……。
あ……また倒れそう……。
「智子お姉ちゃんしっかりして下さい」
「そ、そうだよね……みんなしてからかってるだけだよね?」
私がみんなの姿を見ても納得しないでいると、天さんが近づいて来て、私を抱きしめた。
「え!? ちょ! ちょっと!!?」
「これでも思い出しませんか?」
……なんだろう……私の脳裏に何かが浮かぶ……。
「白、ちょっと強くかけすぎたんじゃねえか?」
「そんな事はない。 軽く俺達の事だけをかけたはずだ」
俺達の事だけ? ……そうだ……私は……。
「そうよ……そうだ! 私は飯綱荘に来た時からみんなの事を知っている……」
「やっと思い出したようですね……それなら私があなたにした事も思い出しましたか?」
天さんにされた事?
「ハッキリとは思い出して無いですけど……みんなの事……少し思い出しました! そうだっ! みんな……、……お帰りなさい」
私は断片的だけどみんなと一緒に暮らしていた事を思い出した。
赤井さんが言うには白君が私の記憶を消したようで、なんで記憶を消さないといけないのかを聞いてみたら……天さんと金さんが庭に来て欲しいと言うのでみんなを連れて一緒に向かった。
「天さん、金さんここで何をするんですか?」
「我々を断罪して欲しい」
「え!? どう言う事です?」
「まだ思い出していないようですから言いますが、私はあなたを殺そうとしました……だからその罪を与えて欲しいのです」
「殺そうって……私、覚えていませんからそんな事は出来ません!」
「しかし……それでは……」
「もう良いんです! これからみんな飯綱荘に住むんだから、仲良くしていきましょうね。 罪を償うって言うなら夕飯の支度手伝ってください。 この大人数分を作るのは大変ですから」
「……、……わかりました」
みんなでワイワイ食卓を囲む……。
なんだか久しぶりで楽しい。
後片付けも黒君、天さん、金さんが手伝ってくれて早く終わった。
「あ〜、疲れた……」
楽しかったけどちょっと疲れたので縁側で涼んでいた。
そこに白君がやって来た。
「白君も涼みに来たの?」
「ああ……」
二人とも無言が続く。
「なあ……」
「あの……」
二人の声が被ってしまう。
「白君からどうぞ」
「あ、ああ……智子、お前覚えてるだろ?」
「え? な、なんのこと?」
「誤魔化さなくていい……あの天狐との戦い、そして最後天狐にされた事を……」
「……バレちゃってたか……覚えてるよ。 でも今は天さんも金さんも悪い事は考えてないでしょ?」
「そうだな……」
「あれからどうなったか教えてくれる? 私気を失ってよく知らないから」
「わかった話そう」
私が気を失った後、白君と天狐の戦いは続いた……でもその戦いは一方的に白君が優勢だったらしい。
天狐は私が気を失った後は罰を受けるように殴られてばかりだったみたい……。
そして、天狐を打ち倒した後、私の傷を治して記憶を消した……らしい。
「どうして私の記憶を消したの?」
「それは……」
「それは私達の事を覚えているのは良く無いと判断したからですよ」
「赤井さん!?」
顔を出したのは赤井さん。
聞いてたのかな?
「そ、僕達の記憶を消せばトモちゃんが普通に暮らせると思ってね」
「銀君……」
「だけどそれは間違いだったのかもな」
「灰さん……」
「まさか婆さんが亡くなった後も叱られるとは思ってなかったぜ」
「十字さん……お婆ちゃんが?」
「そうです。 白が天狐を倒し、私達は一つに戻りました」
「一つに? と言う事は……」
「はい、このように……」
みんなの姿が白い塊になると白君に吸い込まれて行く。
「これが俺達の……俺の本当の姿さ」
白君の体が変わり始め、尻尾が九本ある白狐となった。
「元に戻った俺は智子に関係する全ての人の記憶を操作した。 そして最後の別れをお婆さんに言いに行ったのさ。 そこで爺さんから一通の手紙を渡されて読むと……」
【この手紙を読んでるって事は元の九尾に戻ったんでしょう。 もう悪さはしないと思うけれど、孫を泣かせるような事をしてたんなら飯綱荘に戻りなさい。 そして謝る。 謝らずにあの世に来てごらん、私が地獄に送ってあげますからね。 あんたは良い妖狐になれるはずです。 だから孫をよろしくお願いしますよ】
「俺も地獄には落ちたく無いからな。 智子を泣かせたままいなくなるわけには行かなかったのさ」
「お婆ちゃん……」
「これからよろしくね智子お姉ちゃん」
九尾の姿が黒君へと変わっている。
「私の姿は自由に変えらるわ」
「もう飯綱荘から解き放たれてるからね」
ヤコ、キコへとコロコロ姿が変わる。
「そして、もちろんそれぞれの姿に分けることも出来る」
また九人になると、天さんが私の前に出る。
「これからは我々が智子さんを守ります」
みんなが私の前に跪く。
「ちょ! ちょっとやめてよ! 私は別に……」
「そうもいきません。 われわれはこれからまた妖怪達の相談所を始めるので智子さんにも危害が加わるかも知れません。 ならば我々でお守りする次第です」
「金さん……」
「そして、俺の稼ぎと赤井の稼ぎでカフェをやる予定でな。 そこで今度から仕事をする予定なんで、智子と奏も一緒にどうだ?」
「奏も……そうだ! 奏の記憶は!?」
「もう戻っているはずです。 黒豆に任せましたから」
「そっか、黒豆君も無事なんだね……」
「明日からは今まで以上に忙しくなりそうです。 智子さんもよろしくお願いします」
「わかりました! 頑張ります!」
私の日常が戻った……。
弥栄子ちゃんと吉良馬君、白君は同じ学校のクラスメイトとして、銀君は中学校に、黒君は小学校。
赤井さんは会社に行って、十字さんは大学へ。
灰さんは自室で小説を書いては引きこもっている。
天さんと金さんはカフェの立ち上げで忙しそうだ。
黒豆君も奏の鞄にくっついてたまに飯綱荘に遊びに来ては十字さんや銀君と戯れあっている。
もちろん妖怪のお助け所も始まり、たまに来る人ならざる物……つまり妖怪関係の相談やお助けをしている。
それには私や奏、黒豆君も加わり、忙しい毎日を過ごして行った。
「それじゃ写真撮りますよー」
「お願いします」
私と奏は高校を卒業した。
その記念に赤井さんに写真を撮ってもらい、奏は赤井さんとのツーショット、だけど奏の後ろに黒豆君が映っていて奏は黒豆君を追い回している。
私は……。
「ついに卒業だな」
「うん、白君もね」
私と白君は同じ大学へと行く事になっている。
これから先どのくらい一緒にいられるのかわからないけど、今の私は幸せだ。
だって……。
「ほら〜! そこの二人! こっちに来て写真撮るよ〜!」
「は〜い! 弥栄子ちゃんが呼んでるし、白君行こう!」
「ああ」
私は白君の手を取って最後の写真を撮りに向かった。
飯綱荘に戻ってからは私と奏、白君、弥栄子ちゃん、吉良馬君への卒業パーティーが開かれた。
「お姉ちゃん達卒業おめでとう!」
黒君から花束がプレゼントされた。
「みんなありがとう。 だけど、これからもよろしくだよ」
「もちろんです! それにもう一つ良い報告があります」
天さんから報告された。
「今月、カフェがオープンします! こちらは手の空いている者で回して行くのでよろしくお願いします。 それと、智子さん、奏さんもアルバイトとしてよろしくお願いしますね」
「はい! 頑張ります!」
「私も頑張ります! 私は赤井さんがいる時が良いです」
「……出来る限りそうします……」
春から大学生……新しい日常が始まる。
この飯綱荘に来てから色々あったなと三年間を振り返る。
その三年間で私と白君は……、……これはナイショ。
桜が咲き、飯綱荘も桜の花びらで彩られる季節、新しい入居者が飯綱荘にもやって来た。
それは……また別のお話しで……。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




