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妖狐そ!【飯綱荘へ】 〜引っ越し先は妖怪のお助け所でした〜  作者: かなちょろ


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第貳拾伍話【夢現】

 笹の葉が風にサラサラと流れ、海と山の入り混じった匂いがする。

 そして段々と潮風の匂いが濃くなって来る……。

 ペタペタと裸足で何処を歩いているんだろう……?

 ゴウッと風が強く吹き荒れると、眠りから意識がハッキリとし始める。


「え? ええ!?」


 いつの間にか宿では無く何処かの崖の上、足元には絶壁の崖、波が高く荒ぶって波飛沫がここまで上がってきている。


「なんで? 私どうして……、……早く戻らなきゃ!」


 急いで後ろを振り返り走ろうとするが足が上がらない。

 足を見ると何かが……白い……人の手!?


「きゃあ!!」


 足首を掴んでいる白い手に引っ張られ倒れてしまう。

 そしてそのまま崖まで引っ張られる。

 必死に地面や草を掴むも引かれる力が強く、どんどん崖に引き寄せられ……腕で体を支えるように崖際(がけぎわ)にぶら下がった状態となる。


「誰か! 誰か助けてーー!!」


 周りに誰もいない……私は崖の先端にしがみつくも引っ張られ続けている。


「……お前も……こっちに……」


 耳元でボソボソと話して来るナニかは私を引き込むように海へと引っ張り……そして力無く私は海へと落下して行く……。


「智子ーー!!」


 薄らと目を開くと白君が飛び込んで私を抱き抱えた。


「邪魔だ!!」


 白君は耳と尻尾を生やし、私の足に絡んでいる沢山の手を炎で蹴散らした。

 ここで私は意識を失ってしまう……。


 数刻前……。


 ベンチに座って眠ってしまった私と奏。

 その時、聞こえてくる美しい笛の音……、……その音色に導かれるようにフラフラと私は歩き始めた。


「トモモがいないの!!」

「ん?」


 目を覚ました奏はみんながいる部屋に走って勢い良く扉を開いた。


「いないって……便所じゃねーか?」

「もう確認したわよ! それでいないから来たんでしょ!」

「そんな怒鳴んなよ……黒、何か感じるか?」

「う〜ん……よくわからないです。 それより灰兄さんと十字兄さん飲み過ぎですよ! 赤井兄さんを見習ってください!」

「うるせ〜な〜……お子ちゃまは黙ってジュースでも飲んでな」

「まったく……しょうがない兄さん達です……僕も探すのを手伝います」

「私も探して見ましょう」

「俺も行く」

「ありがとう、赤井さん、黒君、白君……それに比べてあの三人ときたら……」


 ジトっとした目で見つめる先にはスズメのお宿名物【雀の竹酒】を何本も空にして酔っ払っている狐ども……黒豆は既に酔って倒れているし……使えない騎士様だこと……。

 銀君は部屋にいないし……。


「私と黒は宿の中で色々聞いてみます。 奏さんはもし智子さんが戻って来た時のために部屋にいてください」

「は、はい……お願いします」

「俺は外を見て来る」


 宿の外は薄暗く重い妖気が漂っている。

 その中に感じる知っている妖気と、僅かに智子の気配……。


「ちっ! こんな所まで!」


 妖気と気配を辿って辿り着いたのは、今まさに崖から落ちて行く智子の姿。

 そして……落ちて行く智子を抱き抱え一緒に海へと落ちていった。


「……もこ……と……もこ……智子!」


 奏が呼ぶ声が聞こえる……。


「ん……ん〜! ……あれ? 私……確か海に……」


 崖から落ちてる所で白君が来てくれたのは覚えてるけど、そこから記憶がない……。


「トモモ〜! よかった〜!!」


 布団で目が覚めたら奏が抱きついて来た。


「奏……それにみんな……私……」

「智子さんは【シキ】と言われる幽霊に引き込まれていたんですよ」

「幽霊に……」


 あの声は幽霊が私を引き込もうと……。

 思い出すだけで身震いがする……。


「無事だったかトモすけ、いや〜よかったよかった」

「よかったじゃ無いよ! 十字は何にもして無いでしょ!」

「銀だって何もしてないだろうが!」

「僕はちゃんとやってました〜」


 睨み合っている二人をなだめて自分がどうなったのか話しを聞くと……。


「トモモが急にいなくなったからみんなに聞きに来たんだけどさ……この三人は酔っ払って使えないし……赤井さんと黒君と白君がいてくれて良かったわよ……ありがとうね」

「それなら銀にも礼を言ってやってくれ……いち早く異変に気がついたのは銀だからな……銀の力が無かったら直ぐには探せなかった」

「そうなの!? さすが銀君ね!」

「大した事じゃないよ。 僕は宿の結界が一時的に開いた事を白に伝えただけだし」

「四人ともありがとう」

「それに比べて……」


 奏は小さなミンクの姿になって正座している黒豆君と、灰さん、十字さんにまたも眼差しを向けていた。


「奏、せっかくの旅行なんだからそんなに怒らないで。 私は大丈夫だから……それよりもう一度温泉に入らない?」

「トモモ……強くなったわね〜。 こんな事があったのにまた温泉に行こうなんて……」

「いいじゃない……そうだ、黒君も一緒に行こうよ」

「ぼ、僕は遠慮します」

「な〜に恥ずかしがってるのよ。 うちの騎士様が頼りにならないから、代わりに私達の騎士様をやってくれないかな?」

「僕が騎士?」

「そうそう、人の姿が恥ずかしかったら妖狐の姿になったらいいじゃ無い」

「そう言う話しでは……」

「いいから、ほら、早くしないとトモモが風邪引いちゃうわよ」

「そうそう。 黒君も行こう」


 私は黒君の背を押して部屋に戻り着替えを持って温泉へ向かう。


「智子さんもたくましくなりましたね……、……それで、どうでしたか銀?」

「そうだね、特に動いてはなさそうだったよ。 ただヤコがいなかったからわからないけどね」

「なるほど、ミステリー小説ならヤコが犯人の仲間ってとこか」

「あの野郎……今度会ったらただじゃおかねぇ」

「やめときなさい。 今はまだね」

「キコの方は?」

「暇そうに働いてたよ」

「まだあの二人には注意が必要だな」


 お風呂に来た私達は、バスタオルを体に巻いてお風呂に入る準備は完了しているけど、黒君はモジモジとしていてまだ服を脱げていない。


「ほら〜、早く服脱いで来なよ〜」

「黒君、先に入ってるよ」


 暖かいお湯で体を流していると、黒君が妖狐の姿で腰にタオルを巻いて入って来た。


「あ! 来たわね! ほらこっちこっち!」


 奏が手招きするも黒君は離れた場所にいる。


「まったく恥ずかしがり屋ね〜、誰に似たのかしら」

「……私?」

「かもね……ふふ」

「もう、奏ったら……」

「それじゃ黒く〜ん! 体流してあげるわよ〜」

「い、いいです! 自分で出来ます〜!」


 奏に追いかけられてる黒君……。


「お風呂で走ると危ないわよ〜」

「だって〜」

「ほら、捕まえた……観念してこっちに来なさい」


 黒君を捕まえた奏は私の元に連れて来て、私達は黒君をわしゃわしゃと洗い始めた。


「くすぐったいです!」

「我慢しなさい」

「あとは流すだけだから」


 お湯で流すと黒君の毛並みはぺっちゃんこになってしまった。


「せっかくだから露天風呂に入ろうか」

「そうね……黒君も行こ」

「は、はい」


 女風呂より露天風呂の方がマシなのか、さっさと露天風呂に向かう黒君。


「やっぱりお風呂は最高ね」

「あんな事があったのにもう元気なんだから」

「だって私の周りには奏もいるし、みんなだっていてくれるんだもん。 心配なんてしないわよ」

「そうね〜、今の私達にもちゃんと黒君って言う騎士様がいてくれるし……ねっ? 黒君」

「…………」


 奏と私に挟まれてる黒君は口までお湯に浸かってぷくぷくと泡を出して大人しくしている。


「さて、そろそろ出ましょうか?」

「そうね、ご飯に間に合わなくなっちゃうし」

「スズメのお宿の夕食か〜……どんなだろうね?」

「器が全部お猪口サイズだったりして」

「逆に見て見たいわ」


 たわいの無い話しをしてお風呂を上がる。

 ドライヤーで髪と黒君を乾かしてあげると、黒君の毛並みがモッフモフになり、奏は急いで浴衣に着替え黒君の毛並みに顔を埋めていた。

 私も部屋に戻る間、黒君を抱っこしてモフモフを堪能させてもらったのは言うまでも無いかな。

 読んで頂きありがとうございます。

 不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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