第97話 「修学旅行 最終日」
修学旅行の帰りの飛行機。僕はただボーっとしながら窓の外を眺めていた。頭の中は今でも整理がついていない。
あの後、結局僕は一睡もできなかった。移動中のバスで熟睡してしまうほど眠気と戦っていて、あまり記憶に残っていないんだ。だって、あんなことがあったんだから。
『――――一和』
あの瞬間の記憶はきっと何十年経っても忘れることはないと思う。だって、思い出すだけで胸がこんなにドキドキして止まらなくなるんだ。
一日中考えていた、この気持ちは何なんだろう。
今までにも同じような気持ちは味わってきた。だけど違う。明らかに何かが違うんだ。それが何なのか僕自身うまくは言い表せられないけど。
でもこれは今までとは違うのは分かる。それが何なのかをずっと考えていた。
……だけどやっぱり答えは出なくて。
確かに簡単に分かるようなものなら苦労はしないんだけど。
「ふぁあ……」
長い飛行機の旅、僕は眠気に勝てずにすっと目を閉じ深い眠りに落ちていった。
◇
あの日、あたしは初めて彼を名前で呼んでみた。それはきっとあたしの中で変化があったからなんだと思う。
気が付けばもうあたし達が出会ってから一年も経ってるんだね。その一年の間に色んなことがあった。それは今にして思えばあたしの人生でもトップクラスに輝いていた日々だった気がする。
理由ははっきり分かる。きっと本物の恋を知ったからだ。
あの時、あたしの過去を少しだけ話してみた。本当に愛されたことなんかない、あたしの悲しい恋話を。それを聞いた時、隣にいるあたしはすぐに感じ取った。今までに見せたことのない彼の怒ってる感情。
「……」
『あたしと、や……ヤってみたい?』
あの夜、あの言葉。半分はイジワル、もう半分は――本気。
どんな答えでも受け入れる覚悟はあった。けどまさかガチ泣きしちゃうなんてね。
「ふふ……」
男なんてほとんど狼だと思ってたけど、まさに子犬みたいな男の子なんだね。逆にあんな反応されちゃったらちょっと後ろめたいけど。
「寝よう……」
あの夜はああいう結果になったけど。あたしの中では今も変わらない。
いつだって覚悟はできてるから。
一和。
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最近短めですいません。
ようやく修学旅行編が終了です。次回からは日常編になりますが、その後すぐに最終章が始まります。
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