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第44話 「夢の国 蓮編2」

「この館には九百九十九体のお化けが――」

 

 ライドはゆっくりと中を進んでいく。うう、こういう雰囲気あんまり得意じゃないな……。

 

「ほらいっくん! 水晶の中に首だけ女だよ!!」

「や、やめてよそういうこと言うの!」

 

 もう……昔からこういうとこがあったっけ蓮ちゃんは。山で蛇を捕まえてこれ見よがしに見せてきたり、無理やり高い木の上に登らされたり……。

 そんな懐かしい思い出を振り返っているとライドはお墓のゾーンに来ていた。

 

「お、お墓かあ……」

 

 緊張感に支配されていたその時、ライドのすぐ近くのお墓の後ろからいきなりお化けが叫び声とともに飛び出してきた。

 

「ギヤアアア!!」

「ひいっ!」

 

 い、いきなり飛び出してくるなんて……怖かったあ……。

 

「うう……」

「いっくん、意外とダイタンだねえ」

「え?」

 

 気が付かなかった。驚いた拍子に僕は蓮ちゃんに抱き着いたような形になっていたんだ……。すぐさま僕は蓮ちゃんから離れる。

 

「う、うわあ! ごめん蓮ちゃん!」

「もう、ボクはそのままでもいいんだけどなあ」

「そ、そんなわけには……」

 

 すると再びお墓の後ろからお化けが飛び出す。と同時になぜかライドが停止してしまっていた。

 

「ひっ……! あれ、動かない……」

「なんだろう?」

「ただいまいたずら好きなお化けがライドを止めてしまったようだ。しばらくそのままでいてくれたまえ」

「ええ!」

 

 アナウンスが流れている間も飛び出してくるお化けと隣り合わせ。僕は怖くてもう蹲るようにしかできなかった。情けないのは分かってるけど……。

 そんな僕を蓮ちゃんはそっと手を握りしめてくれる。

 

「れ、蓮ちゃん?」

「これなら怖くないでしょ?」

「ご、ごめん……」

「ううん。たまにはこういう頼りになるところも見せておきたいしね」

 

 その後すぐにライドは動き出し無事にゴールまでたどり着いた。けれどその間ずっと蓮ちゃんは僕の手をぎゅっと握りしめていた。それは蓮ちゃんだけが与えることのできる安心感。

 

「結構楽しかったね!」

「うん。怖かったけど……」

「そうなると思ってたよ。だからこの後は気分をガラッと変えて楽しいとこ行こう!」

 

 そう言って蓮ちゃんが僕を案内したのはウエスタンリバー列車。確か機関車に乗って旅をするんだったけな。実は僕もこれには乗ったことがない。

 

「どうしてここに?」

「まあ乗ってみれば分かるから。さっ! 並ぼう並ぼう!!」

 

 

 

 ライドから降りた僕達は興奮していた。結論から言うと物凄く面白かったんだ。

 自然の景色を楽しみながら最後には恐竜時代へ。大迫力の恐竜達は僕の好奇心やワクワクを大いにくすぐったんだ。

 初めてだったこともあってか、この興奮はそう簡単に味わえるものではないと思う。

 

「凄かったね、最後の恐竜時代は!」

「うん!」

「乗れてよかったよ、ありがとう蓮ちゃん!」

 

 残りの時間が段々僅かになっていった頃、僕達はチュロスを口にしながらパークを散策していた。

 

「けど蓮ちゃん、今日が初めてなのによく色々知ってたね」

「そりゃあそうだよ! いっくんとディスニイなんて下調べには余念がないよ! 本当はユニバーススタジオの方ならもっと色々案内できたんだけどね」

「ユニバーススタジオかあ。僕行ったことないなあ」

「じゃあさ! いずれ二人で行こうよ!」

「うん!」

 

 あ、二人でなんて約束してしまって大丈夫かな……。昔からの流れでついオッケーしてしまったけど。でもこういうところも何だか安心してしまう。

 八年も離れ離れで、正直もう会うことはないとも思ったことだって一度や二度じゃない。けれど蓮ちゃんともう一度会えた。そして何より昔のままでいてくれた、それが僕は嬉しい。

 

 まあ、まさか僕のことをああいう風に思っていてくれたなんてのは思いもよらなかったけど……。

 

「どうしたのいっくん?」

「いや、蓮ちゃんが変わらないままでいてくれてよかったなって」

「ふふ、何それ。ボクはずっといっくんの相棒だよ!」

「……そうだね!」

 

 談笑しながら僕達は最後の目的地へ向かっていた。

 

 

 

 

 

『蓮ちゃんが変わらないままでいてくれてよかったなって』

 

 その言葉が嫌だったわけではない。ボクもいっくんが昔のままでいてくれたことは嬉しかったのだから。

 けど違うんだいっくん。ボクは昔のままじゃないんだ。


 

 だって、昔よりもずっと、ず~っと、いっくんが大好きなんだもの。こんなんでもボクは立派に恋する女の子なんだよ。

 本当は気づいて欲しいんだいっくん。ボクは昔のままじゃないってことに。

 ボクが今なりたいのは相棒じゃないんだってことに。

 

「蓮ちゃん?」

「……何でもない!」

 

 時間的にもこれが最後。ボク達はメジャーラビットのコミックスピンに来た。これは二人乗りでハンドルを回せばライドが回転するというもの。

 ボクが昔のままではないことにいっくんは気が付いていないのかな? だからそんないっくんにはおしおきとしてハンドルをたくさん回しちゃった!

 

 いいさ、これに関してはボクも確かに悪い。だからいっくんに何とかして気づかせないと!

 ボクがなりたいのは――――恋人なんだって!

閲覧ありがとうございます!


墓から飛び出るお化けの隣でライドが停止、これは自分の実体験です笑


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です!

次回もよろしくお願いします!

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