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第45話 「夢の国 織姫編1」

「さて……いよいよ真打登場!!」

 

 楽しい時間はすぐに過ぎ去っていく。もう最後なんだ。

 さっそく二人と別れて二人きりに。

 

「さて、どこ行こっか」

「お、お任せします」

「おけ! 任せてよ!」

 

 そういえば何回も来てるんだっけ。となると僕達の中では一番熟知しているんだろうな。やっぱりお友達が多いとこういう場所にもよく来るのかな。

 

「う~ん、そうだな。あ、そういや先輩や蓮とはどこに行ったの?」

「えっとですね」

 

 僕は今日回った場所を説明した。一通り聞こえた後、犬飼さんは口に手を当て考え事をしている。既に行った場所以外の所へ行こうとしてるのだろう。

 そうして数十秒ほど考え込んだ後腕時計をチラッと見て指をパチンと鳴らす。何か思いついたみたい。

 

「じゃ、あそこ行こう!」

「あそこ?」

「いいからいいから! ほら、Bダッシュ!」

「びーだっしゅ?」

 

 僕の手を引き向かった先はとある広場だった。特に何もない場所のように見えるけど何人もの人が並んで何かを待っているように見える。何かあるのかな?

 

「ああ~やっぱもう人並んでたか~」

「あの、何かあるんですか?」

「うん。もうちょっとしたら始まると思うけど」

 

 そんな会話をしていると楽し気なアナウンスが流されて音楽とともに何かがやってきた。あれは……。

 

「あ、パレード!」

「そっ! ちょうどいい時間かなって!」

 

 愉快な音楽に乗せてキャラクター達がダンスをしたり手を振ったりしている。そっか、これが始まる時間だったのか。だから時計を見てたんだ。

 

「あ、グーピー!!」

「本当だ」

 

 

 パレードはあっという間に過ぎていった。実際には数分はいたはずなのになぜだかほんの一瞬のように思えてしまう。後に残ったのは余韻だけ。

 

「あ~チョー可愛いかよ~!」

「楽しかったです!」

 

 しばらくパレードの感想を語り合っているとチラッと犬飼さんが腕時計を見る。

 

「じゃあ、そろそろ次の場所行こ!」

「は、はい!」

 

 そこから少し歩いて僕達が着いた場所は蓮ちゃんとも来たフューチャーランド。今度はどこへ行くんだろう?

 そわそわしながら歩いていると目の前には大きな建物とそこに並ぶ長蛇の列。ここって確か……。 

 

「モンスターズ・カンパニーですよね?」

「そっ!」

 

 モンスターズ・カンパニーって確か十年くらい前にできたやつだったはずだけど、今でもこんなに並んでるんだ。待ち時間に目を移すとなんと三時間。こんなに長いと並んでいる間に時間が来ちゃうけど……。

 ところが犬飼さんはこれっぽっちも慌てていない。それどころか余裕な素振りを見せていた。

 

「こ、こんなに並んでたら時間が……」

「心配しなくても大丈夫! あたしこれ入ってるから!」

 

 そう言うとスマートフォンの画面を僕に見せてくる。そこにはなんとファストチケットの時刻が表示されていた。そんな、なんで!?

 

「こ、これって!?」

「知らなかった? 今ってスマホでもファストチケット取れるんだよ?」

「そ、そうなんですか!?」

「マジ! 超神ってるよね~」

 

 し、知らなかった……! そんなに便利になってたなんて。

 そうか、何度も来てるからこういうサービスだって使ったことあっても不思議じゃないよね。けれどもそのおかげで並ばずに乗れるんだ。

 

「じゃあさっそく行こう! 早くしないと時間がもったいないっしょ!」

 

 少ない待ち時間を談笑しながら過ごしいよいよ僕達の順番。二人で乗り込みライトを手にする。このアトラクションは街中に隠れているモンスター達をライトで照らして見つけていくというもの。モンスター達がかくれんぼをしているという設定だったようで、ライトに照らされると色んな反応を見せてくれる。

 

「あ、いたいた!」

「おっマイケルだ! かわたん!!」

「う~ん、見つけられない……」

「ほら、あそこあそこ!」

 

 アトラクションはほんの十分程度で終わってしまった。最後の部屋では映画のキャラクターであるロゼがいて、ゲストに話しかけてきていた。

 僕達の番になりライドがロゼの前で停止する。

 

「三台目のお嬢ちゃん」

「三台目ってあたし!?」

 

 三台目、それは僕達の乗っているライドだった。お嬢ちゃん……さすがに僕ではないと信じたい……! そんな中ロゼが何を言ってきたかというと――。

 

「隣にいるのは弟かい?」

「ぷ……ははははは!! 弟って!」

「う~ん……」

 

 まあ、仕方ないよね……。去年のクリスマスにも道行く人にそんなことを言われてたし……。けどここでも弟と勘違いされるなんて、僕そんなに幼く見えるのかなあ? ……見えるよね……。

 そんなことはもう慣れっこだし、気にすることもないや。そう思っていたんだけど――。

 

 

「違うよ~! あたしの彼氏だよ~!!」

「……!?」

 

 驚きのあまり言葉が出なくなってしまった。い、いきなり何を!?

 当然それにロゼは何も反応することなく僕達の乗っているライドは出口へと向かっていった。僕は頭の中が真っ白で固まってしまっていたけど……。

 

「あはは、言っちゃった~!」

「い、犬飼さん……」

「お気をつけてお降りくださ~い!」

 

 建物を出てからも僕は困惑している。だって、あまりにも突然だったから……。

 

「あ~面白かった!!」

「そ、その……」

「ああ、ごめんごめん! ちょっとバイブスアゲだったからさ~!」

 

 言ってることがよく分からないけどそれで済ましてしまう辺りがこの人の凄さを表している。僕なんて今でも頭が追い付けてないのに……。

 確かに周りの人は知らない人達だし、そもそも聞こえてたかどうかも怪しいから問題はなかったといえばそうなるのかもしれないけど。

 

「び、びっくりしましたよ……」

「いや、マジゴメンね」

 

 僕をあやすように頭を撫でてくる。こうされると本当に姉弟に見られてそうだよ……。

 そんな僕に犬飼さんは優しくささやいてくる。

 

「まあ今はパチコイてる状態だけどさ」

 

 ぱちこい……? この話の脈絡から判断するなら嘘を付いているということなのかな。

 

「いずれ本当にはしたいかな?」

 

 そう言った犬飼さんの笑顔は素敵で輝いていた。僕の心がドキッとしたのは言うまでもないと思う。

 いずれ本当に……か……。当たり前だけどそうなる可能性もあるんだよね……。今の僕は答えを出せていない。もうどれだけみんなを待たせているんだろう。

 それと誰か一人を選んでしまえば誰かを傷つけてしまうのかな……?

 

「どうしたの?」

「あ、いえ!」

「あ~……」

 

 犬飼さんは何かを察したように頬をかいている。もしかして僕が何を考えていたかを見抜いているのかな?

 

「まあ、なんか余計なこと考えさせちゃったらごめんね」

「いえ、そんなことは……」

「でもさ、今は……あんまりアレコレ考えずに楽しもう? あたしも楽しみたいから!」

「は、はい!!」

 

 そうだ、色々考えるのは今じゃない。今はせっかくディスニイに来てるんだ、楽しまないと! 一緒にいる犬飼さんにも失礼だ!

 

「時間はまだあるね。じゃあ、次のとこ行くよ!」

「はい!」

閲覧ありがとうございます!


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