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第41話 「夢の国 るか編1」

「じゃあ三時間後にいったん集合ね!」

 

 そう言って彼女達は別方向へ向かっていった。残された私達は見送った後、立ち尽くしている。そう、一番手は私になったのだ。何という運のなさ……。

 

「じゃ、じゃあどこへ行こうか!?」

「せ、先輩? 大丈夫ですか?」

「い、いや? なにも!? いや、何の問題もないが!?」

 

 マズい、取り繕っても意味はない。そんなことではだめだ。まずは落ち着け、焦るからそういう反応になってしまう。そう思いながら息を整えた。

 そうさ、この日のためにネットや本でちゃんとリサーチをしてきたじゃないか! 何も臆することはない!

 

「じゃ、じゃあどこへ行こうか? あ、乗れないものとかあるかい?」

「い、いえ、特には! あ、でもホラー系のはちょっと……」

「そ、そうか。それじゃあそうだな……」

 

 あれ? そしたらどうしたらいいんだ?

 いきなり三大マウンテンはいくらなんでも厳しいだろうか? それならバブ・ライトイヤーへでも行ってみようか? いや、現在位置から近いスペースツアーズの方が――。

 ダメだ、考えがまとまらない!! どうすればいいんだ!?

 

◇

 

 先輩、何だかすごく困ってる……。そういえばここへ来たのは初めてなんだっけ。そうか、それならなおさら男の僕がリードしないと!

 そしたら最初は――。

 

「あれ……?」

 

 こういう時には……どうしたらいいんだろう? 張り切ってみたものの僕自身もう何年も来ていなかったんだった。しかも今までは家族としか来たことがなかった。そんな僕が女性の相手なんて到底できるわけがない。

 うう、どうしたらいいんだろう……!

 

「「う~ん……!」」

 

 二人そろって頭を抱える。このままじゃどこにも行けないよ……。

 

「い、いったんそこに座るか!」

「そ、そうですね!」

 

 近くにあったベンチに腰掛ける。さて、ここからどうしよう……。先輩を退屈させるわけにはいかない、せっかく練習の合間を縫って僕のお誘いに答えてくれたんだ。

 そんな焦りが頭の中を駆け巡っていた時のこと。

 

「……すまない」

「え? な、何がですか!?」

 

 突然の先輩の謝罪。僕はわけが分からなかった。先輩は何も謝るようなことはしていない。なのにいきなり謝られて困惑するしかなかった。

 

「これでも色々リサーチしてきたんだ。けどいざとなったら全て吹き飛んでしまった……」

「先輩……」

 

 そうだったんだ……。僕はそういったこともしてこなかった。けどそこまで先輩はしていたんだ。

 

「本当、格闘技じゃ勝ててもこういうのはまったくダメで……」

「僕だって……僕だって同じですよ先輩」

「えっ?」

 

 そう、僕も何をしていいか全く分からないんだ。こういう時こそ先輩をリードしなきゃいけないのに。情けないのは重々理解しているけど、本当にどうすればいいのか……。

 だから、僕も先輩とそう変わらない。

 

「僕も女性と一緒に来たことなんてなかったから……どうすればいいのか全く分からなくて……」

「一ノ瀬君……」

 

 それを聞いた先輩は――ふっと微笑んだ。

 

「先輩……?」

「いや、ちょっと嬉しくて」

「嬉しい、ですか?」

「ああ。二人そろってどうしていいか分からなくて、頭抱えて……」

 

 僕に向けたその笑顔は、今まで見てきた中で一番輝いていた笑みだった。そんな微笑みで先輩は口を開く。

 

 

「私達、似た者同士だな!」

「先輩……はい!」

 

 似た者同士、かあ。言われてみれば、僕達がそう感じたことは今までなかったかもしれない。

 出会ってから今日まで何から何まで違う僕達だった。だけど、初めて同じようなものを感じれたんだ。

 

 僕も、凄く嬉しく思う。

 

「さて、そろそろ行こうか」

「はい。でもどこへ――」

「それなんだけど……」

 

 先輩が口ごもる。どこか照れくさそうな様子で目も泳いでいた。

 何かを言いたそうにしているのは分かるけど、何だろう?

 

「なんですか?」

「その、今日のところは私が決めていいかな?」

「え、ええ。けど、いいんですか? 僕男なのに任せきりにしちゃって……」

 

 普通こういう時は僕が先輩をリードするものなのだと思う。なのに先輩に任せきりにしちゃって申し訳なさを感じてしまうんだ。

 ところが先輩はふっと微笑む。

 

「まあ、今は私の……ペットだからね。その代わり、もし君が私の……」

 

 何かを言いかけて顔が赤く染まっていく。髪の毛をいじりながら大きく息を吐いた。

 そして僕に向かい手を差し伸べる。

 

「こ、恋人になったなら、その時は君が私を引っ張っていってくれないかな……?」

「は……はい……」

 

 僕は差し出された先輩の手をそっと握る。犬飼さんとはまた違った柔らかな感触が僕の手を包んだ。それはすごく暖かくて、すごく滑らかで、すごく優しくて……。

 さっきまでの状況が嘘のように思えてきた。なんだか心が落ち着いてくる。

 

「じゃあ、行こう」

「はい」

「あ、そ、その……」

「はい?」

 

「て、手を繋いでいても……いいかな?」

「は、はい……」

 

 こうして僕達は園内を歩み始めた。繋がれた手は暖かさをもたらすとともに、よりいっそう僕をドキドキさせるんだ。

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