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第38話 「誘ってみよう」

「デートの誘い方を教えて!!」

 

 夜、僕は勇気を出してお姉ちゃんに頼み込む。自分から積極的に動くと決めたんだ。これはそのために必要なこと。

 でもいきなりそんなことを言われたお姉ちゃんはというと――。

 

「……」

「お、お姉ちゃん?」

「――はっ!」

 

 数秒は固まっていた。

 そんなに予想外だったかな……? 確かに今までそんな気配もなかったけど……。

 

「あ、ごめんごめん。まさかあんたの口からそんな言葉が出てくるなんて夢にも思わなくて……」

「いや……僕も全く思ってなかったんだけどね……」

「で、どういう風の吹き回し?」

「実は――」

 

 今朝の出来事を説明する。そして僕がこのままではだめだということも。

 

「なるほどね」

「うん、それでいい加減僕の方から行動を起こそうと思って……。いつも受け身じゃダメだろうし、もしかしたらこの悩み続ける状況が変わるんじゃないかなって……」

「まああんたが自分から動こうとするのはいいと思うけどさ。それって三人とデートするってことでしょ?」

「え? ま、まあそうなるのかな……」

「それって超失礼だしやっちゃいかんでしょ」

 

 言われてはっとした。確かに複数の相手と続けてって、凄く失礼な気がしてきた。

 全く気がつかなかった、僕はなんと無神経過ぎたんだろう……。

 

「よ、よかった気が付けて……」

「本当ね」

 

 でもそれならどうすればいいんだろう。せっかく考えた案が水の泡になるなんて。

 

「じゃあどうすれば……」

「そうねえ。あ、じゃあいいものあげる」

「いいもの?」

 

 お姉ちゃんはバッグの中から何かを取り出した。これは……チケット?

 

「この前飲み会のビンゴで当てたんだけど、あいにくあたしには必要なくてね」

「これは……」

 

 お姉ちゃんが渡してきたのはあの有名なディスニイランドのチケット、それもペアが二枚分だった。

 つまり四人まで利用できるということ。

 四人……ということは……。

 

「来週からゴールデンウィークでしょ? 誘って四人で行って来たら?」

「で、でもいいの!?」

「いいって。あたしも彼氏も友達もみんな就活中だしね」

「お姉ちゃん……ありがとう!」

「まあ三人同時ってのもあれだけど、その子達仲はいいんでしょ? ならせっかくの機会だし、そもそもいきなりデートに誘えなんてあんたにはハードルが高いでしょ」

 

 確かにいきなりデートに誘うよりかは僕にはありがたいかも。

 これは思ってもいなかった大チャンス、三人をもっとよく知ることのできるいい機会。誰が一番好きなのか、僕自身の気持ちをはっきりさせることもできるかもしれない!

 誘うのはちょっと怖いけど、何とか勇気を出そう!

 

「ありがとうお姉ちゃん! 明日誘ってみるね!」

「はいよ」

 

 

 数日後。LIMEで放課後にみんなに集まるよう呼び掛けておいた。今からドキドキが止まらないんだ。だって、もし断られたりしたら……。そう考えると怖くて仕方なくなる。

 ホームルームが終わり、生徒達は帰路につく。そんな中僕と犬飼さんだけは教室に残っていた。

 そして他のクラスメイトがみんな帰宅した頃。

 

「お待たせいっくん!」

「すまない、遅れてしまって」

「いえ」

 

 こうして教室に三人とも揃う。僕の緊張も最高潮に達していた。

 でも怖がってなんかいられない!

 

「じ、実は……」

 

 緊張で震えながらもポケットからチケットを取り出す。

 

「それは?」

「実はお姉ちゃんがもらってきたんですけど就職活動中で行けないんで、もらったんですが……」

 

 三人はチケットに顔を寄せる。あまりの距離の近さに目を逸らしてしまう。心臓の鼓動が今にも爆発しそうなくらい早くなていた。

 

「これって……!」

「ディスニイのペアチケ!?」

「しかも二枚!」

 

 やはりみんな驚いている。当然だよね。

 

「なので……来週からのゴールデンウイーク。も、もしご予定が合うのならい、一緒に行きませんか……!?」

 

 緊張のあまり変に丁寧語になっちゃった。

 そのくらいドキドキしている。こんなこと人生で初めてなんだもの……。

 へ、返事は……!?

 

 

 

「ゴールデンウィークかあ。あたしはオッケーだけど?」

「ぼ、ボクも! いっくんと遠出なんて久しぶりだもん、断るわけないよ!」

「そうだな……私も一日くらいなら練習が休みの日に空けられる」

 

 各々の反応を耳にした瞬間ガチガチに固まっていた体の力が一気に抜けていった。まるで空気の抜けた風船みたいに。

 こんなに安堵したことは今まであったかな。

 

「じゃ、じゃあ……」

「おけまる!」

「私も」

「ボクも!!」

 

 こうして僕の人生でも間違いなく三本の指に入るほどのビッグイベントが決まったんだ。

 ああ、今から緊張してきた……。

 

 

 

 

「ただいま~!」

「お帰りなさい、遅かったわね」

 

 僕を出迎えたのはお母さんだった。そうか、今日はお仕事早く終わる日だったっけ。

 

「うん、ちょっとね!」

「どうしたの? いやにご機嫌じゃない」

「そうかな?」

 

 自分ではそんなつもりないんだけど、もしそう見えていたのならその通り。今は物凄くいい気分なんだ。

 だって……みんなで遊びにいけるんだもの! よくよく考えてみたら高校生になってから初めてだなあ。一年生の時はクラスに仲のいい人いなかったから。それは蓮ちゃんもそう。こっちに帰ってきてからは遠くに一緒に遊びに行くのは初めて。

 遠足前日のような高揚感が僕を上機嫌にしていた。

 

「そういえばお姉ちゃんは?」

「安里? 今日は新宿で説明会って言ってたけど?」

 

 説明会……お姉ちゃんは就職活動を頑張ってるんだ。しかもせっかく手に入ったペアチケットを僕に譲ってくれた。

 帰ってきたらちゃんとお礼言わなきゃ。ありがとうお姉ちゃん、僕のことを考えてくれて。

 

 

 

 

 そうして時間は経っていき、いよいよゴールデンウィーク目前になった。

 これは僕達四人の初めてのお出かけなんだ。

閲覧ありがとうございます!


夢の国編は少し長くなると思います。

ちなみにこの後書きを書いている時点では夢の国にはもう八年いっておりません。取材もかねて行ってみたかった……。


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です!

次回もよろしくお願いします!

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