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第21話 「二人の考え」

連続投稿3話目です!

「ふう……」

 

 自宅でお風呂に入りながら、今日の出来事を思い浮かべていた。あ~! ついに言っちゃったんだあたし! 思えば自分から告ったのなんて生まれて初めてじゃん!

 その相手がわんこで良かったのは間違いない。

 

「……いつからだろう」

 

 変だよね、好きになったくせに自分でもはっきりとしたことは分からないんだもの。だってあたしは男子という存在ははっきり言って好きじゃない。

 それには理由がある。

 

 

 

 自分で言うのもあれだけどあたしは中学時代からそれなりの回数告られてきた。それ自体は凄く嬉しく思ってるし、実際何人かの男子と付き合ったこともある。

 

 ……だけどあたしが付き合ったどの男子も同じだった。みんなあたしという存在をただのステータスとしか見ていなかった。何ていうか、こんなに可愛い子が俺の彼女なんだっていう。

 言っておくけど自分で自分を可愛いと思ったことなんて一回もない。けど男子達はあたしを可愛いと思ってくれているようだった。だからこそあたしを自分達のステータスアップの道具みたいに思ってたみたい。

 

『俺の彼女、すげえ可愛いだろ!』

『いいだろお前ら!』

 

 何度そんな台詞を聞かされただろう。やたらとあたしが彼女だということを自慢してくる。まるで宝石でも自慢するかのように。本当にあたしに心が向いていたようにはこれっぽっちも見えなかった。

 もちろん頭では分かってる。世の中全員がそんな人達だけじゃないって。告白してきた中にはあたしを本当に好いてくれている奴だっていたって。でも……!

 

 あたしはもう男を信じられなくなっていた。

 

 高校へ入学した頃にはもう告られたって相手にしないようになった。男なんてみんなそう、どうせあたしを自分をカッコよく見せるアクセかなんかと勘違いしてる。きっとあたしのことなんて指輪かネックレスにでも見えてるんだ。

 だからもう恋なんかいい。幸いあたしには大切な友達ができた、みんながいればあたしはそれでいいの。

 

 

 そう思ってたある日、出会いは訪れた。

 彼をしっかりと意識したのはあの日。ちょっとした用事で一人帰るのが遅くなったあたしが廊下を歩いていた時、一人で教室の掃除をやらされている男の子が目に入った。

 初めは単純に可愛い子だと思った。何だか子犬みたいだなって思って。同時に一人でやらされてるのがあまりにもかわいそうだと思った。気が付いたらあたしは彼の掃除を手伝っていた。そして……。

 

『あたしのさ、ペットになってよ』

 

 思い付きにも近い発言だった。自分でもバカ? って思った。でもまさか本当になってくれるなんてね。そしたら女の子に対する免疫全然なくて、そこがまた超可愛くて!

 けどそれでいてちゃんと気遣いもできる。何で今まで彼女いなかったんだろうっていうレベル。ホント、あのクラスの女子達は見る目ないなあ!

 

 ま、あたしもそれに乗っかって、ちょっと調子乗っちゃったのは反省。だって可愛いんだもん。……でもわんこは嫌な顔も素振りも見せなかった。それで逆に不安になったあたしは家のお風呂で聞いてみたんだよね。

 

『……わんこは嫌じゃない?』

 

 もちろんこれを聞くのは凄く怖かったけど、自分だけじゃなくてちゃんとわんこの気持ちにも向き合わないといけない。だからあたしは聞いてみた、わんこの正直な気持ちを。もしかしたらって思うと内心怖くて……。

 けどわんこは言ってくれた。

 

『確かに無茶振りもあるけど……僕は一度も嫌だなんて思ったことないです!!』

 

 その返答は凄く嬉しかった。ま、その後にまさかあんなちっちゃいもの見せられるとは思ってもなかったけど! 今思えばこの頃にはもうわんこのことを特別な存在だと思ってたんだと思う。

 これが漫画とかだとあたしはチョロインってやつになるのかな。でもそれでもいいや。だって好きなんだから。可愛くて可愛くて、全部が愛しいんだから! 

 だから誰に何を言われようが、そんなの関係ない。きっと先輩だってそう思ってるっしょ。

 

「……先輩はどう思うかな」

 

 あたしが告って、しかもほっぺにチューしたことまで知ったら先輩はどう思うだろう。めっちゃ怒ってきたり?

 

「でも、これは勝負だし!」

 

 そう。負けたくない、それは向こうも同じ気持ちのはず。卑怯かなとも思ったけど、先輩の試合も終わったしこれからはガンガンアピってかないとね。先輩は優しいし綺麗な人だし、結構強敵な予感がする。

 けど負ける気はない。他の事では負けたっていい。でもこれだけは!

  

「はあ~いいお湯だったなあ……」

 

 お風呂から上がりリビングでのんびりしていると、携帯に通知が入っているのに気が付く。誰だろう?

 

「……先輩?」

 

 自分の目を疑った。まさか先輩から連絡が来ていたとは。一応アカウント交換したけど、まさか連絡が来ることがあるなんて。

 

『明日の昼休みは空いているだろうか?』

 

 すぐにあたしは返信を送る。

 

『空けられるけど?』

 

 数分後、先輩からさらに返信が送られてくる。そこに書いてあったのは――。

 

『すまないが付き合ってもらえるかい? 話しておきたいことがある』

 

「一体何の用よ?」

 

 誤解されてるかもしれないけど、あたしはあの人自体は嫌いじゃない。凛々しくて、真っすぐで、格闘技も頑張ってる。人としては凄いと思う。

 けどあたしからすれば恋敵――ならぬご主人敵になるのかな? だから仲良くしたりできそうにない。あたしみたいなのと先輩じゃ人種も違うだろうしね。

 そもそもの話、先輩はわんこのことどう思ってるんだろう?

 

「……まあいいや。絶対渡さないし!」

 

 絶対に渡さない。だって、あたしのペットなんだから!

 

 

 

 

「ふう」

 

 自室のベッドの上で寝転がりながらメッセージを送る。

 

「そうだよな……」

 

 そうだ、彼女にちゃんと打ち明けないのは卑怯だ。私より先に彼をペットにしていたのは事実だからね。

 だけど打ち明けたら彼女はどういう反応をするだろう? もしかしたら激怒してしまうかもしれない。もしくは彼に聞いたのだろうか?

 

「……」

 

 彼女がどう思うか考えれば考えるほど、言葉が出ない。彼女は決して悪い子ではないのだろう。普段の生活を知らないものの、少なくとも悪人には思えない。まあ本来は私が仲良くなれるようなタイプではないのは確かなんだが……。

 

「もう少し考えてから行動すればよかったのか……」

 

 悔む思いが沸き上がる。告白したことには後悔はない。だが彼女の気持ちももっと考えてからすべきだったのではないだろうか。冷静になった今だから思う。

 でもあの時はそんな余裕はなかったのも事実。なんせあんなに辛そうな表情を見せられてしまったのだから。

 

「それでも彼女のことも考えておくべきだったな」

 

 そう、私は自分の意思を優先した。早い者勝ちと言われたらそれまでだが、後から接触してきたのは私。ならば彼女のあずかり知らないところでそういった行動を起こすのは少しズルい。

 

 だから私は彼に時間を与えた。どのみち彼はすぐに答えは出せないだろう。彼女のことを考えてしまうだろうからね。彼の口から聞いたか聞いてないのかは分からないが、自分の口でしっかりと打ち明けるつもりだ。それが私のけじめだから。

閲覧ありがとうございます!


少し過去の話を明かしてみました。フリーだったのはそういう理由があったからです。

次回は二人が対峙します。


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です!

次回もよろしくお願いします!


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