2 作戦決行だ。
朝の光がまぶしい。
目を閉じていても明るい赤色の視界。
「お姉ちゃーん。リイナお姉ちゃんー」
僕は重い瞼を、そんな僕を呼ぶ妹の声で開けると、妹の顔がすぐ近くにあった。
「おはよう、ミイナ、もう朝?」
僕が目をこすりながら上半身を起こし、妹に問いかける。
「いや、アニー来てないでしょ?私が勝手に起こしに来ただけだよ!」
右手の人差し指をたてて笑顔で答えるのは妹のミイナ。
本名をミレイナ・リールマール・アスカットシャイン。
ピンクブロンドの長い髪とエメラルドのように輝く緑の瞳を持った今年で17になる、僕の妹。
容姿端麗、そしてとても強く、国の困りごとを解決するすごい妹なのだが、玉にキズなのが…
「お姉ちゃん愛してる、寝顔もかわいかったよお姉ちゃん。」
このシスターコンプレックスだ。
ミイナが7歳のころから今の状態なのだがバッサリと断っているにも関わらず、妹は僕を慕いすぎている。
ドアがノックされ、メイド服に身を包んだアニーが入ってくる。
アニー。僕の侍女で教育係を兼役するすごい侍女で身長は172と、とても高身長で
黒髪のショートにに凛とした姿勢。蒼い深海のような大きく、でもどこか刺すような視線の瞳が特徴の美人さん。
僕、本名は長く一緒にいるけど知らないんだけどね。
「リレイナ様、ミレイナ様。朝食は済まされましたか。とにかく今すぐ食え。」
途中からカンペを投げ捨てたようなしゃべり方をした中性的な低い声のアニー、これがアニーだ。安心した。うんうん。
「アニー、なんで私がお姉ちゃんの部屋にいるってわかったの!?」
ミイナがアニーに驚いて尋ねれば
「十中八九お前はここにいるだろうが…シスコンめっ!」
と、ぶっきらぼうに返ってくる返事。
アニーはもともと僕とミイナの親友で、就職先に迷っていたから、
「ここに来ない?」と僕が誘い、来てもらったのだ。
アニーが廊下から朝ごはんを運んでくる。
「今日のアニー飯は?」
僕が聞くと
「国民からもらってしまった野菜、肉、卵を使った飯だ。たんと味わえや」
アニーが一段下にある凹の形をした机の上にコトリと、プレートを置いてくれる。
「全く、研究資料は片付けろとあれほど…!」
アニーに何か言われた気がするけど僕は聞こえないふりをして。
僕は後ろに本棚がたくさんあるベッドから出て、アニー飯を食べながら物思いにふけった。
ここはアスカットシャイン連合王国の中心の小国、リールマール。
山々に囲まれたリールマールの北に位置する城に僕らは四人で住んでいる。
エルフの30歳のミイナと同じ配色と言っちゃ悪いが肩までの髪を真ん中で分けたエーデイス父上。
あと、アニー、僕、ミイナの四人。
母上は僕が小さい頃に亡くなったんだって、魔物に襲われて…でも母上は凄腕の冒険者だった。
後れを取るとなると…。
そしてリールマールの中央であり連合王国の中心にも位置する大きな大樹。
それを中心に白が一個入るだろう大きさの円の堀があり、バリアが縦に貼ってあってまるで別の世界への入り口のようにも思える。
僕はあれのもとにいつか行ってみたい。
父上には何かとはぐらかされるが、絶対あそこには何かがあると僕は思っている。
「そういえばお姉ちゃんってさ、左目髪の毛で隠してるけど邪魔じゃないの?」
突如として降ってきたミイナの言葉に僕は今聞くの?と驚いた。
僕はなぜかオッドアイで母上譲りの金髪に母上譲りの青い瞳が左に、父上譲りの緑の瞳が右にある。
別に深い意味はなかったのだが…
「…趣味?」
「趣味なのかよ、なにか封印されてたりは…あるわけないか」
すっとぼけた僕の言葉に中二病心を少しだけ見せたアニー。
実は今日、誰にも話してはいないが大樹のもとへ向かう予定だ。
母の冒険者時代の服を借りて、コッソリと出かける予定だ。
アニーに食器を返してもらい、部屋から出て行ったアニーを見送り、ミイナにコッソリと話しかける。
「例の…出来てる?」
「出来てるよ」
はたから見れば怪しい会話だろうが、見ている人なんていないから大丈夫だろう。
ミイナが持ってきたのは一本の鉄の銃。さびていたがミイナに何とかしてもらった母の遺品だ。
そして僕が使えるように改造してもらった。
どうして装備を整えるのかって?
それは…魔物に対抗するためだ。
少し前から活発に目撃される魔物。
それらは僕らを襲う。
遥か古代の文献にはそういったものが周期的に起きていると…
そして魔物も攻撃するだけじゃなく、からめ手。状態異常と名付けられたものを付与したり。
ミイナはそれに対抗できる武器を作ったりする資格を持っている。
しかし素材が足りないとかなんとか嘆いていた。
僕も薬を作ったり魔法を研究するのが趣味だから素材が足りないのはよくわかる。
僕はカバンに作った薬と少しお金を入れて、僕はミイナを部屋の外に出し、壁の方で着替え始めた。
多少ややこしいがズボンにつける謎のスカートみたいになる布。
露出を少なくしたいのか多くしたいのかわからないが黒いタイツ。
肩だしの袖。
謎の胸あたりを覆う二つにわかれた布。
でもすべてが僕にぴったりなサイズであった。
そしてコッソリと裏口から出ようとしたときに
「リレイナ」
男性の声が背後から聞こえてきた。
「あ、エーデイス父上…」
僕がぎこちなく後ろを振りむき、手に持っていた銃を髪と背の間に持ち隠す。
しかしバレているだろう。ごまかせやしない…っ!
「…どこに?」
「えっ?僕どういうことかわかんないです」
苦し紛れすぎて汗が滝のようだ。
脱水を起こす前に去ってくれ…!
「大樹…か?これでもう8回目だぞ今月」
そう、実は何回も行こうとしては止められを繰り返している。
だけど今日は
「だから大樹あたりは危険だと…」
「じゃあ危険なら、強かったら行ってもいいんだよね?」
「は?」
「じゃあミイナ!アニー!行こう!」
僕がどこかに向けて叫ぶと左右からアニーとミイナが出てくる。
どちらも戦闘ができるような服。
ミイナは肩だしだがズボンではなくスカートがそのままで、鳥を思わせるような服。
そして髪を高くに結い、謎の浮く円盤を髪留めの周りに浮かしたファッションで。
背中には重たそうなハンマーが装備されている服装。
アニーは長いタイトなズボンに足から膝まで、手から肘までだけ鎧を着て、軽くシャツの上に固そうなカーディガンのようなものを着ている。
「やっとか、第一王女様よ」
「よし、大樹作戦開始だっ!」
大樹作戦、それは
脱兎のごとく逃げ出して南に国を抜けておなじ連合王国の国、クロスネニアに行って連合国をすべて回ってこっそりと大樹にまた行く作戦。
ミイナだけに話したつもりだったがアニーも聞いていたらしく、危ないから私もついていこうと
魔法で速度のバフをかけて僕らは城を抜け出した。




