第46話 怪しい人達
私とレティは、部活が終わり、学園内を歩いていた。
そこで、泣きながら走っていくプリネさんを見かけたのだ。
そのことをおかしく思った私達だったが、プリネさんはどこかに行ってしまった。そのため、とりあえず彼女が走ってきた方向に、手がかりがないか探すことにしたのである。
という訳で、私達はプリネさんが走ってきた方を歩いていた。
プリネさんが泣いていた原因が、人に呼び出されたといったことなら、誰かがいるはずである。
何も残っていない可能性はあるが、とりあえず確認しておきたいのだ。
「こっちは、教室の方ですね?」
「うん、そうだね」
歩いている内に、私達は教室の方まで来ていた。
そこは、普段から私達がいる場所だ。だが、だからこそ何かあってもおかしくはない。
ここまで来るまでに、何かあった様子はなかった。この辺りは、どうだろうか。
「あら? レティ様に、ルリア様?」
「え?」
「おや……」
そう思っていて歩いていると、私達の教室から数名の女生徒が現れた。
彼女達は、貴族である。しかも、私のことをあまりよく思っていないような人達だ。そのため、あまり会いたくないような人達である。
「こちらに、何か用があるのですか?」
「もう放課後ですのに、教室に?」
「あ、はい。少し、忘れ物をしたので」
「あら? そうなのですね」
彼女達の質問に、レティが答えてくれた。
というよりも、レティが話しかけているという感じなので、私が答える場面ではない。
「それでは、私達はこれで、失礼します」
「はい」
それだけ言って、女生徒達は去っていった。
なんだか、少し慌ただしいように思える。それは、気のせいだろうか。
「……なんだか、怪しいですね?」
「うん……」
その違和感は、レティも感じていたようだ。
公爵令嬢であるレティに対して、緊張していたというのはあるかもしれない。だが、それだけではない気がする。
というよりも、先程のプリネさんと彼女達の様子が、関係あるのではないかと思えてならないのだ。
「そもそも、この時間に教室から出てきたあの人達の方が、違和感がありますよね? 私達にだけ聞いて、自分達は何も言いませんし」
「確かに、そうだね」
そもそも、この時間にここに残っているのもおかしいことだった。
部活などで遅くなって、教室に戻って来ることは、もちろんあるだろう。だが、あの人数で集まっているのは、中々違和感がある。
そして、私達にはどうして教室にと聞いてきたのに、自分達は話さない。その態度も、何かおかしい気がする。
「でも、あの人達にプリネさんを恨む理由があるのかな?」
「……もしかしたら、部活に関することかもしれません」
「部活?」
「ええ、私やティアナさんがいる部活を、彼女が見学したことが気に入らないとかではないでしょうか?」
私の疑問に、レティはそう答えてくれた。
確かに、そういう理由で、誰かに何かを言う貴族もいる気がする。地位や権力といったものに、貴族の人達は敏感なのだ。
大方、自分達と同じクラスにいる公爵令嬢であるレティと、プリネさんが近づくことを懸念しているといったところか。
それは、納得できることだろう。
「お前達、何をしているんだ?」
「え?」
「げ……」
そんなことを話している私達の耳に、ある声が聞こえてきた。
それは、お兄様の声である。ここは学園なので、お兄様がいてもまったくおかしくはない。
私とレティは、ゆっくりとお兄様の方を振り返る。
「お、お兄様……」
「こんにちは……」
「……何かあったのだな?」
私とレティの様子に、お兄様はすぐに気づいたようだ。私達が、何かあってここにいるということに。
長い年月をともに過ごしてきたため、私もレティもお兄様に隠しごとができないのだ。
「お兄様、確かに私達はあることで悩んでいます。ただ、まだ確証はないことなのです」
「確証がなくても構わない。お前達の身に危機が迫っているというなら、この俺も対策してやる」
私の言葉に、お兄様はそう言ってくれる。
その言葉は、とても嬉しいものだった。お兄様にこのように言ってもらえるなど、感動で震えてしまいそうだ。
ただ、その認識には少し間違いがある。
「あ、別に私やお姉様に危機があるという訳ではないんですけど……」
「ほう?」
そう思った私が訂正する前に、レティが指摘してくれた。
今回は、私達に何かあるという訳ではないのだ。
「まあいい。とにかく、話は聞かせてもらう。ただ、ここではまずい。帰ってから、俺の元に来るがいい」
「あ、はい」
「わ、わかしました」
その言葉を受けても、お兄様の気は変わらなかった。私達のことではなくても、お兄様は変わらないのだ。
だが、仕事中のため、ここでは話し合えないようだ。また、家でお兄様の元に行くことになるらしい。
こうして、私達はお兄様に相談することになるのだった。




