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公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。  作者: 木山楽斗
本編

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第45話 走っていく者

 私とレティは、部活が終わった後、学園内を歩いていた。

 今日も、部活は裁縫を行った。


「レティも、すっかり部活に慣れてきたね?」

「うぐっ……いや、まあ、確かに今日は違和感も抱かず、部活に行ってしまいましたけど……」


 後から気づいたことだが、レティは今日、部活に何も言わずに来ていた。

 あれだけ最初は、嫌がっていたのに、今はもう部活の虜である。

 そのことが、私は嬉しかった。レティが、少しでも学園を楽しいと思ってくれるのは、本当に喜ばしいことだ。


「トルカやティアナさんのおかげかな?」

「ああ、確かにそれはありますね。ティアナさんは、対等な地位で私よりも年上ですし、トルカさんはお姉様の妹として見てくれているおかげで、非常にフレンドリーに接してくれます。いつも気を遣われる私としては、こちらの方が楽ですね」

「公爵家の人間に対して、そういう風に接してくれる人は少ないからね」


 レティが家庭科部を好んでいるのは、トルカやティアナさんのおかげである。

 二人は、レティを公爵家として、扱っていない。対等な一人の人間として、接しているのだ。

 それは、レティにとっては嬉しいことだろう。普段は、年上の人間にまで気を遣われているため、その態度が逆にありがたいのだ。


「それに、二人には下心というものがありませんからね」

「下心?」

「ええ、大抵の人は、私達に媚を売るような感じで話しかけてきますよね? そういうのはうんざりですから」

「まあ、それはそうかもしれないけど……」


 さらに、トルカやティアナさんは、私達に話しかけてくる人達の一部にいるような媚を売るような言動がないのが、レティには刺さったらしい。

 確かに、私達の地位故に、そういう人達はいる。レティは、そういう人達のことを、かなり嫌っているようだ。


「おや……」

「うん?」


 そこで、私達は、同時に声をあげた。

 なぜなら、私達の前方の廊下を、見知った人物らしき人が走っていったからである。


「あれは、プリネさん?」

「そのようですね……」


 それは、プリネさんだ。

 一瞬の出来事だったため、よく顔は見えていないが、恐らく間違いないだろう。

 私とレティは、プリネさんが走っていった廊下まで行き、確認しようとする。


「いないね……」

「はい……」


 しかし、既にそこには誰もいなかった。

 階段の近くなので、そこから移動したのかもしれない。


「なんだか、少し心配ですね……」

「うん……プリネさん、悲しそうな顔をしていたよね」

「はい。恐らく、泣いていたんじゃないでしょうか?」


 私達が、ここまでしてプリネさんを確認しようとしたのには、そのような理由があった。

 プリネさんは、悲しそうな顔をしていたのだ。レティの言う通り、泣いていたように思わる。

 なんだか、少し心配だ。


「そもそも、こんな時間にここにいることも、おかしいですよね?」

「うん……でも、別の部活を見学していたとかなら、一応辻褄が合うよね?」

「確かに、それもありますが、見学して泣いてというのは、少々違和感がありませんか?」

「うん……まあ、違和感はあるね」


 そもそも、プリネさんがこの時間に学園にいるというのも、違和感があった。

 別の部活を見学していたというなら、納得はできるが、それで泣いて帰るのもおかしいだろう。

 どこの部活も、平民や貴族に関わらず、部員を欲しているはずだ。そんな中で、見学者を泣いて帰すなど、考えにくい。


「それなら、何かあったということなのかな?」

「ええ、そう考えられますね……」

「だから、部活に来られなかった?」

「……誰かに、呼び出されて、今まで話していたから、来られなかったという考えができますね」

「うん……」


 色々なことから、私とレティは、そのようなことを考えていた。

 プリネさんが、誰かに呼び出されて、家庭科部に来られず、今泣いて帰っている。そういう風に考えると、納得できてしまうのだ。


「最も、これは推測に過ぎませんから、断定はできませんがね」

「うん、でも、一応見に行ってみない? もしかしたら、その原因が走ってきた方向にあるかもしれないし……」

「ええ、そうした方がいいでしょう」


 とりあえず、私達はプリネさんが走ってきた方向に向かうことにした。

 もしかしたら、プリネさんを呼び出した人がまだいるかもしれない。そうでなくても、プリネさんが泣いて走らなければならなかった原因が、わかる可能性もある。


「まあ、特に理由もない可能性もありますね。例えば、勉強していて遅くなって、なんだか泣きたくなったとか」

「むしろ、そういうものだったらいいな。誰かに何かをされたりとかは、悲しいし……」

「……そうですね」


 こうして、私とレティは、プリネさんが走ってきた方向に向かうのだった。

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