第37話 その感想は
私とレティは、部活動を終えて、家に帰って来ていた。
今回の部活動では、クッキーを作った。そのクッキーは、持ち帰ってある。
「それで、俺になんの用だ?」
「さあ、レティ」
「……ええ」
私とレティは、お兄様の元に来ていた。
それは、お兄様に私達が作ったものを食べてもらうためである。
私は、レティに促して、持って帰ってきたクッキーの箱を出す。
「今日は、お兄様に部活で作ったクッキーを食べてもらいたくて……」
「ほう?」
私の言葉に、お兄様は表情を変えた。
その表情は、興味を持ったという風に見える。
「お、お兄様、お姉様の前に、私の食べてください」
「何? お前が作ったのか?」
レティが作ったと聞いて、お兄様は驚いていた。
基本的に、レティは面倒くさがり屋なので、クッキーを作ったのは、お兄様にとっては意外なことだったのだろう。
「あ、はい……見栄えは悪いですが、味だけは普通くらいにはなっていますから、安心してください」
「……それは、安心できるのか?」
「あ、安心できるんです」
レティは、かなり緊張しているようだ。
そんなレティとは対照的に、お兄様は楽しそうである。恐らく、レティがクッキーを作ってくれたことが、嬉しいのだろう。
レティは、クッキーの箱を開け、お兄様に渡した。すると。お兄様はその中から、一つのクッキーを取り出す。
「ほう? これをお前が作ったのか?」
「は、はい…」
「……頑張ったな」
「い、いえ……」
お兄様は、レティに対して笑みを見せる。
それを見たレティも、嬉しそうだ。
レティのクッキーは、通常よりも少し形が悪い。これは作る途中で、少し失敗したからだ。
しかし、レティはそれにもめげずに、完成させた。それは、レティの努力の結晶である。
「ふむ……」
お兄様は、クッキーを口の中に運んだ。
レティのクッキーは、私も食べたが、味的にはまったく問題なかった。そのため、お兄様もおいしいと思ってくれるだろう。
お兄様は、すぐに食べ終わり、レティの方に目を向ける。
「悪くないできだ」
「は、はい……」
「うまいと言っておこう」
「なっ……!」
お兄様の言葉に、レティは喜んだ。
その顔も、赤くなっている。こういうレティは、なんだか珍しい。
「……そ、それなら、私はもう大丈夫なので、お姉様の方を食べてください。それでは、後はお二人で!」
「え?」
「何?」
そこで、レティは自身の箱を持って、部屋から出ていった。
どうやら、気恥ずかしさなどが限界を迎えてしまったようだ。
「あいつは、一体どうしたんだ……」
「た、多分、恥ずかしかっただけだと思いますよ?」
レティの行動には、お兄様も流石に困惑していた。
基本的に、レティがこういう風に逃げるのは、あまりないことのため、それも仕方ないだろう。
それに、今日のお兄様は、レティを褒めただけだ。それで逃げられるのは、お兄様も少し辛いだろう。
こうして、私とお兄様だけが取り残されることになってしまった。なんだか、少し緊張してしまう。
お兄様は、私のことも褒めてくれるのだろうか。一人になると、そんな不安が襲ってきたのだ。
「そ、それでは、お兄様、私の方も食べてもらえますか?」
「ああ……」
私は、お兄様にクッキーの箱を渡す。
すると、お兄様はクッキーを一つ取り出し、口の中に運んでいく。
「ふむ……」
食べ終わった後、お兄様は私を見つめてくる。
その視線は、少し恐ろしいものだった。
一体、何を思ったのか、早く言ってもらいたい。
「流石だな、ルリア……お前は、昔から料理が得意だったが、やはりうまい」
「あ、ありがとうございます、お兄様……」
お兄様は、私に対して笑顔を向けてくれる。
どうやら、きちんとおいしいと思ってもらえたようだ。
そのことに、私は安心する。
「どうやら、お前達は順調に家庭科部の活動ができているようだな?」
「はい。トルカもティアナさんも優しいので、レティも気に入っているみたいです」
「そうか。それは、何よりだ。ルリア、お前はどうなんだ?」
「私も、かなり楽しめています」
「そうか……」
私の言葉に、お兄様は嬉しそうに笑ってくれた。
その笑顔は、私にとってとても嬉しいものである。
こうして、私とレティは、お兄様にクッキーを食べておいしいと言ってもらえるのだった。




