4話 話の続き、条件とか?共通点は何だろう?
誕生日と出身地が出てきますが、変えるかもしれません。
誕生日はほんとに仮です。
「あとは明日の朝かあ」
「また違う着替えが出てくるのかしらね。この服は随分、ゆったりしてるけど」
「用意してもらえるのは助かりますね。同じ服を着たままって、ちょっと耐えられないですし。」
「そうね。食事も結局、助かってるのよね。今のところ、総じて悪いことはないんだけど・・・こっちの世界に来たことは別として」
来てからは、悪いことは起こっていない。確かに。
しばらく沈黙が続いた。
「そういえば、見たことない制服だったけど、マコト君、どこに住んでたの?」
「俺は神戸だよ。トモカさんは?」
「わたしは仙台。ミナは横浜でしょう?有名よね、私立のお嬢様学園、大学まであるでしょう?」
「正確には横浜よりの東京です。古い学校なので、良くも悪くも有名ですね。嬉しくないですけど」
「そうなんだ。ハルヤ君はどこ?」
「おれは東京だけど、山梨より。中央線沿いだから」
「ふうん、微妙なばらけ方だね。ちなみに誕生日は?」
「おれは5月」
「わたしは11月です」
「俺は6月だよ」
「あたしは9月だから・・・これもばらけてるわね。年も違うし。やってたゲームとかは?何かある?」
「熱中してたのはないなあ。部活メインだったし、俺」
「わたしもゲームはさほど。軽くはやってましたけど・・・」
「おれはけっこうやりこんでたけど、入院してたからさ。けど、この国の名前は聞いたことないし、そもそも勇者4人とかって、設定は無かった気がする。パーティって三人が多かったし。」
「ゲームの線は無しか。あとは何かあるかなあ。思いつかないけど・・・。うーん、特に共通点、なさそうだね。なんでこの4人だったんだろうね?」
「ああ、ほんと、なんだろね、こっちに呼ばれた理由。クラスごととか、家ごととかじゃないし、ってことは、場所じゃない、ってことだろうけど」
何かしら条件があるのでは?とそれぞれ考えてみるが、これといったことは出てこなかった。
「とにかく一人じゃなくて助かりました。少なくともこうして話ができる人がいてくれるだけでほっとします」もう考えるのやめた、と言わんばかりにミナが言う。
「おれも!一人じゃどうしていいか、まったくわからなかったから助かるー」マジです。
「できるだけ協力していこう。まだぜんぜんわかんないしな、こっちのこと」軽く微笑みながらマコトが言う。ほんと良い人だなあ。こればっかだな、おれ。
「気が付いたことやわかったことは報告し合って、できるだけ4人だけで話し合う時間を作りましょ。それが今のところ、一番安全にできることだと思うわ」
「そうだね」
まとめるのはトモカさんで、相槌はマコト、もうすでにこれがパターンな気がする。そして、おれとミナは頷くだけ。
お茶を飲み終わり、クッキーもどきもいつの間にか食べきっていた。そろそろお開きにしようか、とマコトが言い、そうね、とトモカさんが賛同して、なぜかすぐにナミが立って扉の近くに置かれたベルを鳴らした。
間を置かず扉が開き、先ほどの従者の人たちが顔を出して、さらに宰司さんも来ていた。
「お休みになられますか」
「ええ、そうします。」
「明日の朝は、ガリオン様がいらっしゃるそうですので、その前にお食事をお済ませください。日が昇ってから1刻後にお部屋に担当のものが伺います。それでよろしいでしょうか」
「ええ、そのようにお願いします」
受け答えは全部ナミ。なんか慣れてるなあ。お嬢様学校だそうだから、ほんとのお嬢様なのかな?他人にやってもらうことに慣れてるみたい・・・。
会話を聞きながら立ちあがっていたおれとマコトは、そのまま女子二人におやすみ、と言って部屋を出た。サロンって言うんだっけ。
女子二人はおやすみなさい、と返してくれたが、まだそのサロンに残るみたいだった。女子のことはよくわからないから、そのまま放置。考えるだけムダだろう。
先を歩く従者という人たちについて、マコトと並んで歩く。
先ほど案内されたマコトの部屋の奥、寝室には柱付きの大きいベッドの横に、こじんまりしたベッドがもう一つ用意されていた。こちらは柱はなし。うん、普通のシングルベッドだね!セミシングルくらいはあるかな。というか、このベッドが2台あっても、まだ十分に広い部屋って・・・。はあ。うちのマンションの居間よりも、この寝室一つのほうが広いよ・・・。
「お体を洗われますか」
「ああ、はい、風呂には入りたいんですけどあるんですか」
「こちらになります」
ほんとに奥にドアがあり、そこから浴室につながっていた。洗面台があり、その奥に服を脱ぐところがあり、さらにその先に洗面台、シャワー、湯船、とある。すっげー、広いし豪華版!!
「こちらに寝間着はすでにご用意しております。湯船は使われますか」
「はい、あれ?使わない人もいるんですか?」
「はい、流すだけでよい、とおっしゃられることもありますので。では、湯船のご用意をいたしますので、しばし居間でお待ちいただけますか」
「あ、いえ、このまま入ります。体洗ってるうちにお湯も溜まるだろうし、寒いわけじゃないから大丈夫です」
「では、タカさまからお入りになられますか。ユウさまは居間でお待ちいただけますか?それとも、ユウさまのお部屋で入られますか?」
「え、おれ?」
これだけ広ければ一緒に入れると思うんだけど、どうしよっか?
「一緒に入る?これだけ広ければ大丈夫だろ?」
「うん、そうする!」マコトから言ってくれて良かった。おれ、この従者の人たちに違うこと言うの、なんか躊躇する。
「それは・・・」困惑した顔でいるのはマコトの従者の人だ。
うーん、別に変なことじゃないと思うんだけど。
マコトの従者の人と、おれの担当だというセリムさんが顔を見合わせる。うん、名前覚えた!
「それでは、わたしが出られてからのことを担当いたします。洗いのお手伝いはお任せしても?」
「そうですね、この広さではそうするしか・・・」
「あの、ちょっと待ってください、俺は一人で大丈夫ですし、先に使い方を教えてもらえれば!ハ・・じゃなかった、ユウもそうだよな?」
「う、うん」
「手伝い要らないよな?」
「うん!」思いっきり首を上下に振った。
「ですが・・・」
「大丈夫です。ちゃんと教わった通りに使いますから。壊しません。なのでまずは使い方を教えてもらえますか」
そうして、魔道具、というのだそうだ、水とかお湯とかの出し方、止め方を教わり、石鹸と布を渡され、従者の二人を浴室から追い出して、ほっと息を吐いた。
あー、びっくりした!
それはマコトも同じだったらしく、
「なんかビックリしたな・・・。どれだけ子どもだと思われてんのかな・・・」
いやそれはちょっと違うと思うけど。
「えーっと、貴族とか王族とかの扱いだからじゃないの?別に子どもだと思われたわけじゃないと思うけど」
「そう?そんなもん?」
「うんたぶん・・・」確証はないけど・・・。
「まあ、とにかく、風呂はいろっか」ほんとに疲れた、って様子のマコトに、おれも賛同してさっさと服を脱ぎ出した。
お風呂は気持ち良かったです。サクッと入ってサクッと出ました。なんとなく、外であの二人が待ってると思うと、長風呂はできなかった。マコトと二人で、魔道具について良くできてるよな~と感心したことを話したくらいで、湯船には長くはいなかった。それでも、、湯船につかった時にどれだけ緊張してたんだ、と思うくらい肩の力は抜けていった。あったまれたし、入って良かった。入れて嬉しい。ここは素直に喜んでおこう、うん。
棚に乗っているタオルは十分に柔らかいものだった。ほい、とマコトが取ってくれた。礼を言って受け取り、体を拭いて、棚の下にある籠に入れる。用意されていた服は浴衣?作務衣?のような形の腰下までの上着と幅広のうすい長ズボン。下着はない。・・・ないんだー・・・。
ちなみにどちらも生成り地で色はついていない。と思ったら、その下にもう一枚、上着が用意されていた。こちらは明るい青色で裾が長く膝下まである。寒くはないけど、下着が無くてなんとなく心細いので、この上着も着た。マコトの上着は深い紺色で、黒に近い。他は同じ。
浴室を出たら、先ほどの二人がいて、
「窓際のお席にお水のご用意がございます」と言って案内された。
寝室の窓際に丸テーブルとイスがあり、外を眺められるようになっている。そこにグラスが二人分、用意されていた。
座ってから部屋の反対側を見ると、そちらは廊下側になるからか、窓はなく、クローゼットが置かれている。何が入ってるのかなーとぼうっと見てたら、声をかけられた。
「あちらのクローゼットには、今はまだ何も入れてございません。今後、お好みのものを入れてまいりますので、お気に入りのものがございましたら、ご遠慮なくおっしゃってくださいませ」
引きつりながらも一応、笑顔ではい、と答えたけど、ああ、心臓に悪いなー。なんかこう、離れてくれないかな・・。
「もっともこちらはタカさまのものですので、ユウさまのものは、ユウさまのお部屋にお持ちいたしますが」
ああ、そうでしたね、ここはマコトの部屋でした、うん。それでおれの部屋は別にあるんだよね、隣りだけどね。
「あとはもう大丈夫です。寝るだけですから。明日の朝、寝坊してたら、起こしてもらえますか」
「はい、かしこまりました。ご朝食の半刻前には、お声かけさせていただきます」
「よろしくお願いします」
「それでは、おやすみなさいませ」
「あ、はい、おやすみなさい」
「ユウさま、おやすみなさいませ」これはおれの従者だというセリムさん。
「うん、はい、おやすみなさい」
従者二人は深々と一礼して、ドアから出て行った。
はーーーっと、マコトと同時にため息をついていた。
自然と目が合って、くすっとお互いに笑う。
「やっと解放されたな。ずっと落ち着かなくて」
「うん、おれも」
「マコトの担当の人、なんていうんだっけ?」
「ああ、確かキルタ、って名前だったと思う。
「ふーん、面白い名前~。」
「そうだな、ちょっと日本人ポイけどぽくないっていう・・・微妙な感じするな」
タ、が太とかだったら、日本人にもいそうだけど。でもキルタはないよなー。
「そうだ、ベッド、大きい方、ハルヤが使う?」
「え、なんで?ここマコトの部屋だし体だってマコトのほうが大きいんだし。マコトでしょ」
「あ~うん、なんかでかすぎて落ち着けなさそうでさ」
肩に手を当てて解しながら、目線を大きい柱付きのベッドに向ける。
「そっかー。でも、それだったらおれもそうだよ。」
またくすくすと二人で目を見合わせて笑った。
「ハルヤは寝相はいいほう?」
「うーん、どうかな。友達んちに泊まった時、別に悪いとは言われなかったけど。」
「そうなんだ。とりあえず、今夜は一緒に寝る?・・・ありえないとは思うけど、夜中に一人だけ、どっちかだけ連れて行かれるとかは、ないと思うけど。念のため」
「うん、・・・そうする。やっぱちょっとまだ、不安かな。眠れるかどうかわかんないし」
「ああ、それは俺も、眠れるかどうかわかんないと思ってた。でもずっと座っててもさ。体は休めたほうが良いと思うし。ひとまずの危険はなさそうなんだよな。表面上は」
「ん、そんな感じ。危ないとは思ってないけど、けど、まだ完全に安全じゃないというか、安心できるほどわかってないっていうか・・・」
「うん、そうだな」
少なくとも今までに会った人たちは悪い感じはしない。礼儀正しいし、こちらの言うことも聞いてくれてる。ただ、足元が不安定な感じがするのだ。どこに立っているのかわからなくて、どこか現実味がなくて浮遊感があって、落ち着かない。馴染みがない世界で迷子になってて、ほんとに途方に暮れているのだ、精一杯の虚勢を張って、普段通りに見せかけているだけで。
ふっと震えが来た。どうしていいかわからない。こんなに心細くなったことはない。進路で悩むって言っても、所詮は日本の中での地元での話だし、こんなイキナリわけわかんない別世界なんて・・・・想定外もいいところだ。
「もう寝ようか。ひとまず体は休めておこう」そう言ってマコトが立ち上がる。ぽんと頭を撫でられて驚いた。下に沈んでいた視線を上げてマコトを見上げる。
「明日になれば、もっといろんなことがわかるだろうし、4人で相談すれば何とかなるよ」にこり。
「うん・・」ほっとした。少なくとも一人じゃない。
小さいほうのベッドから上掛け布団と枕を移動させて、それぞれに布団を被って横になる。
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
・・・眠れないとは思うけど、目は瞑っていよう。暗闇の中なら、視線で周囲を見張るよりも物音に耳を澄ませていたほうが、変化に気づきやすい、はずだ。
そう思って静けさの中、自分とマコトの息遣いを聞きながら、身を丸めた。
恋愛系は、まだ何もないですよー。次も何もないです。
この二人は進展遅い・・・。
次回は4人の勇者特性の予定です。