2話 謁見の間から
1話、主人公たちの名前を変えました。
これで決定です。フルネームで決まりました。
あと、国の名前も変えました。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
部屋の扉を開けたら、やっぱり髭じーさんがいた。
「よろしいですかな。国王陛下がお待ちでいらっしゃいます。わたくしがご案内させていただきます」
そう言って、、先ほどと同じように会釈してから歩き出す。
黙ったまま、4人で付いて行った。
何度か廊下を曲がり、歩くのに飽きてきたころにたどり着いたのは、だだっ広い広間だった。
奥に一段高い場所があり、そこに派手な金ぴかの椅子が置かれている。
そのたぶん、玉座と呼ばれるものに座っているのは、壮年の男性だった。
父さんよりも若いかな?40代くらいだと思うけど。微妙だな。
「陛下に申し上げます。本日未明、勇者様方の召喚に成功しまして、こちらにおられる4名様方のご来訪が叶いました。これにて、召喚の儀は終了となります。」
「うむ、大儀であった。よくぞ成し遂げたな、ヨーグドルー、そなたの功績には、そなたの望み通り、魔導士団の研究費を上げることで報いよう。よいな」
「は、ありがとう存じます」
そう言って、髭じーさんが深々と頭を下げてから部屋の隅に下がって行った。
広間の中央におれたちだけ4人が注目されながら立っている。
王が立ち上がって、おれたちに手を差し伸べた。
「ようこそ参られた、勇者方よ。余はこの国を統べる王、ラーダイルと申す。この国を、世界を平和に戻すためにご助力をお願いする。そのためにも、まずは王子王女としての待遇を約束しよう。この城、そして今後の行動については、我の弟であり、武の元帥でもあるガリオンから説明させよう。ガリオン」
「は、ここに。兄王陛下」
「あとは任せる。勇者方をご案内せよ」
「は、御意に」
まったくもって、おれら4人のことは無視されて話は進む。名前も聞かれず年も聞かれず、もちろん意志の確認もなく勝手に決められてますよ、ほんとに。
「では、こちらへどうぞ」
さらりと腕を前に伸ばし、金髪のイケメンがおれたちを先導する。王様の弟だそうだけど、若いな。歳が離れてる兄弟なんだな。20代後半くらい?
一度、4人で視線を交わして、そのまま付いて行く。
正直、この貴族?だか騎士?だかが、たくさんいる広間からはさっさと逃げ出したい。他の場所に行きたい。視線が痛いんだよー。
絨毯の上を歩いて開かれているドアを抜け、廊下に出たらすぐ、
「無理に跪け、とかなかったな」ぼそりとマコトが言う。隣りを歩くトモカが返事する。
「そうね、それだけでも良かったかしら。話の展開にはちょっと疑問もあるけど」
トモカのすぐ後ろにミナ。
「なんか厄介払いみたいな感じもありますけど」首を傾げながら、ツインテール揺れる。
「王様って、本物、初めて見たー」これはおれ。マコトの後ろ、ミナの横を歩きながら。
くすり、と3人が笑い、ほこっとする。
「そうね、まあ、話の通りなら、衣食住には困らないみたいだから、それだけは良かったわ」
トモカが締めくくった。
先頭を歩くガリオン、という人は、おれたちの会話に特に何も言わなかった。
この距離だし、内容はともかく、しゃべっているのはわかると思うけど。
また廊下を何度も曲がり、今度は階段を下りて渡り廊下に出た。庭を突っ切るようにその渡り廊下を進むと、大きな館が見えた。
「こちらが成人済みの王子王女用の館になります。館は他にもありまして、こちらは今は誰も使っておりません。ですので、勇者さま方、4人だけで専用の館としてお使いいただけます」
ここまで無言だったガリオンさんが説明してくれた。
「ありがとう、助かります。」愛想笑いとともにトモカが返事をする。
うん、おれも助かる、トモカが返事してくれて。
「中はすでに使えるように整えてあります。従者も用意してありますので、顔合わせをしておきましょう。気に入らなければ、取り替えますので、お気楽にどうぞ」
え、何それコワイ。取り替えるとかって、物みたいに。ひり、と喉震えたが、他の3人は軽く目を見張ったくらいで、特にコワイとは感じていないようだった。どちらかというと、ああ、そう、みたいな呆れた感じが出ている。不満そうというか。
大きなドアが開かれ、中に「どうぞ」と手招きされるままに入る。
ビシッと整列してた人たちが、一斉に頭を下げてきた。
驚いて4人揃って足が止まる。
すかさず間にガリオンさんが立った。そのまま紹介が始まる。
っていうかさ、これ、何人いるの?20人くらい?びびるんですけど!全員、年上みたいだし!
白髪の人に深々と頭を下げられてもさあ~!!
おれの内心などおかまい無しにガリオンさんの声が響く。
「こちらが館全般の指図をする宰司です。」
「宰司のコンドルと申します。館内のこと、またお出かけになる際に必要なことは、お気軽にお申し付けくださいませ」一歩前に出た白髪の男性が言う。お年寄り?
「よろしくお願いします」これは律儀にマコトが言う。
「侍女頭はこちらです」コンドルさんと同じように一歩前に出た女性は、
「コンドル殿とともに館内のことを差配しております、マルセと申します。姫様方お二方のお世話が主になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
うわ!姫様呼ばわりだよ!!さすがにこれには二人の女子はくすぐったそうに困ったような顔をした。二人そろって返事する。
「よろしく」軽く頭を下げたのはトモカ、
「よろしくお願いします」とにこりと微笑みかけたのはミナ。
マルセさんはなかなか恰幅のいい人だ。いかにもデキルおばさん、という感じ。
「そうそう、みなさまの呼び名はどのように?教えていただきたいのですが」これはガリオンさん。
あー、聞かれたか、そうだよな。ここまでは言わないでなんとかなったけど、っていうか、正面から突っ込まれなかっただけだけど、あれ、つまり、どーでもいいって扱いだった?ん? ともあれ顔合わせの場で名前を言わないわけにはいかないよな。
「俺はタカです。」
「あたしはセリと」
「わたしはメイと言います。」
「おれはユウです。」
それぞれ苗字の初め2文字を告げた。これで乗り切れるかなー?
それから、4人それぞれの専属担当の侍従と侍女を紹介された。
おれの担当だという人は、明るい緑の髪に青い目の色だった。うん、ファンタジーだ・・・。
年はおれよりは上かな?でもあまり変わらない感じがするけど、見た目で判断して大丈夫かな~。違うかも。後で聞いてみよう、機会があれば。
「セリムと申します、どうぞよろしくお願いいたします。」一歩前に出て言う。
「よろしく」ぺこり、と小さく頭を下げて返した。
「では、わたしはこれで。今日はもう夕刻ですから、あとはゆっくりお休みください。突然のことですし、お疲れでしょう。明日朝に、今後のことは改めてご説明に伺います。」
淀みなく一礼して、さっさとガリオンさんは帰っていった。自然とそれを見送る形になり、ドアが閉まって、はっとする。
「では、みなさまのお部屋にご案内いたします。部屋着はお部屋にご用意してございますので、そちらでお着替えくださいませ。ご夕食の用意が整い次第、お知らせいたします」
そんなわけで、4人そろって侍女頭だというマルセさんに連れられて階段を上がった。
2階は男子の部屋、3階が女子の部屋だそうで、2階の踊り場で二人ずつに別れる。
しっかり目線を合わせて「じゃあ、また後で」と言って、女子二人はマルセさんとともに階段を上っていく。
少し見送ってから、今度は担当の侍従さん?に案内される。
どうやら隣同士の部屋みたいだけど、今、離れるのはちょっと心配だ。
「一緒の部屋じゃダメかな?」マコトが聞いてくれた。良かった。
困惑したようにマコト担当の人が返事する。
「ダメ、ということはありませんが・・・お二方とも成人されていらっしゃいますよね?でしたら、別々の個室をお使いになるのが、王族としては当然だと思うのですが・・・」
「うん、まあ、それはそうなんだろうけど。今日だけ一緒じゃダメかな。俺の部屋でいい?」これはマコトがおれに向かって言った。
「いいよ。お任せします」おれのが年下だし。どう言えば、どうすればいいのかもよくわかんないし。
「じゃあ、彼の着替えを持ってきてくれるかな、同じ部屋で着替えるから。」
にこり。やっぱりマコトはコミュ力高いと思う。
「かしこまりました」納得はしてないみたいだけど、言われた通りにおれの担当さんが動き出した。
マコトの担当さんは、ドアを開けたまま、おれたちが中に入るのを待っている。
中はさわやかな感じの明るい緑色にまとめられた、いかにもな高そうな家具のある部屋だった。
中央に大きなソファ、三人掛けと一人掛けが二つ、ローテーブルを挟んで置かれている。
窓際には一人用のしっかりした背もたれの大きな椅子が、高い丸テーブルと一緒にあった。
右側には扉があって、
「あちらが着替えの間と寝室になります。お召し物は着替えの間にご用意してありますので、お着替えはこちらで」
そう言われて扉をくぐると、カーテンで仕切られた小さな部屋に出た。奥のカーテンの向こうが寝室らしい。大きな天蓋付きのベッドが見えた。
「お手伝いいたします」え、何、と思った時には、マコトの前に立ってブレザーのボタンを外し始めていた。
慌ててばっと両手でブレザーを抑えて、
「いやいいです!自分でできます!着替えは自分でします!」
大声でマコトが言う。うん、そりゃそうだ。ボタン外されるって、幼稚園児か。
「さようでございますか?こちらの服と勇者様方の服では仕様が違うようですが・・・。わかりにくいところがありましたら、お呼びください。わたしはカーテンの向こうで待機しております」
そう言って、居間?の扉とカーテンの間に立って、カーテンを閉めた。
はー・・・っとマコトが大きくため息をついた。うん、そうなるよね、この流れだと。
「ユウさまの服をお持ちしました。中に入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
マコトがブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけた所で声がかかった。返事はマコト任せ。
「失礼いたします」
カーテンが開いて、先ほどのおれの担当だという、緑の髪の人が服を持っていた。
色違いだけど、マコト用だという服と同じ形だ。
「こちらになります」
「うん、ありがとう」普通に礼を言って受け取った。
「お手伝いはいかがなさいますか?」
「マ・・じゃなかった、タカと同じで一人で着替えられるからいいよ。手伝いは要らない」
「かしこまりました。それでは、待機しておりますので、何かありましたらお声かけくださいませ。」
さらっと出て行ってくれた。ちょっと緊張してた俺は、あまりにあっさりしていて拍子抜けした感じ。まあ、楽で良かったけど。でも、待つんだ、ふううん・・・。
ズボンは普通だけど、ファスナーはないんだろう。金属のボタンとホックになっている。
下着はゆったりめの長袖で、袖口は二重になっている。着物みたいに前合わせで、横で紐で止める感じで、色は生成り。
上着は紺色で半袖だった。学ランぽい立て襟で前は引っかけるホックで止める。帯のような、やわらかい長い布もあった。
マコトはさっさと着替え終わっていた。帯も上手く着けている。おれは帯が収まらなくてなんとなく変な感じ。やりにくいなーと焦っていたら、マコトが助けてくれた。良かった。
「上手いねー。ありがとう」
「ゆかたの帯に近いから。よく弟や妹たちに着せてたからさ」
「へえ、兄弟いるんだ。お兄ちゃん?」
「そう、五人兄弟の一番上」にこっとおれに笑いかけてくる。
あー、なんか誇らしそう。嬉しそう。仲良いんだろうな。いいなあ、兄弟。おれ、一人っ子だし。
そう思いながら、これまで着ていた服をハンガーにかける。マコトはおれの様子を見てから、
「着替え終わりましたよ」待っている二人に声をかけた。
カーテンがさっと引かれて、
「はい、では、こちらへどうぞ。これまでお召しになっていた服は、手入れさせていただきますが、よろしいですか?」
「え、ああ、いや、このまま置いといてもらえれば・・・。異世界の服だし、手入れの仕方はわからないでしょう?」
「拝見しましたところ、形は多少、違うようですが、わたくしどもでも手入れはできるかと」
「ああ、まあ、そうかもですが、今日はこのままにしておいてもらえますか」
「かしこまりました」
勝手に触られるのは嫌だな、と思っていたので、マコトが断ってくれて助かった。女子二人はどうしたかな。
「窓際のお席にお茶をご用意いたしました、こちらへどうぞ」
え、いつの間に?早いな!
言われるままに、マコトと一緒に窓際の席に向かい合わせで座る。
ふかふかでいい感じの椅子。
お茶、と言っていたが、見た目はカップ&ソーサーに入っていて、紅茶みたいだ。
飲んでも大丈夫かな?実際には何なんだろう?
「って、え!?うわっっっ!!」
イキナリ視界に何か出た!
「あ、ユウも見えた?出てきた?これ、この紅茶の名前だよね?」
マコトに問いかけられて、ええ!?と慌てているのにホッとする。
「うん、マコトにも何か見えた?」あ、マコトって言っちゃった。人前では名字で、って言われてたのに。
「ああ、見えた。これ、いわゆる鑑定、ってやつ?よくわかんないけど、毒はない、って書いてあるから飲んでも大丈夫そうだね。あと、苦いって書いてあるけど」
実はここに至るまで、出されたお茶も水も飲んでいない。喉は乾いていたが、なんとなく怖さのほうが先だって、何も飲まずにいたのだ。それはマコトも女子二人も同じ。
「さすがにそろそろ喉も限界だし、お腹も空いてるし、飲んでみようか」
「う、うん」
「あ、おれが先に飲むから。ユウは後からでいいよ」
「うん、あのさ、コレ飲んだら帰れなくなるとか、ないよね。ほら、その世界のものを食べると、元の世界に帰れないとかさ」
よくあるファンタジー系の設定ですが。いや神話系のかな。焦りつつマコトに心配していることを言ってみた。返事のしようがないことだとわかっていても、言わずにはいられなくて。
「ああ、そうゆう心配もあるのか。みんな良く知ってるなあ」
のほほんとマコトが返す。いや、そのマコトの言い方にずっとほっとしてますよ、おれ。助かってるほんと気持ち的に。たっぷりと。知識があるとかどうかより、そっちのがデカいと思う。だって知識あっても役に立たないし、今。だって判断できないし。と思ったら、視界に出ました。
≪世界属性に変化なし≫
ええと。これって。
「・・・大丈夫みたいだな。便利だなー、この機能。疑問を口にすると、その答えを出してくれるのかな」
今度のセリフには返事はなかった。
「物に限る、ってことかな?まあ、いいや。大丈夫そうだから、飲むよ」
おれはただ見ていた。
「うん、ちょっと苦いけど飲める範囲。大丈夫」
聞いてほっとして、おれも飲んでみた。うん、苦いけど飲める範囲。砂糖もミルクもないけど。
そのままゆっくりとお茶を飲み干して、何も話さずに座っていた。
なぜなら、部屋の隅に、ドアの近くにあの担当だという二人の人たち、侍従だという人たちが立っていたから。
何を話して良くて、何を話したらマズイのか、ちょっとまだわかりにくい。
なら黙ってるのが一番だろう。マコトも二人のことを気にしてるみたいで、ちらちら視線が二人のほうに泳ぐ。うん、いたたまれないよね、一般庶民の日本人としては。これがファミレスとかなら、音楽もかかってるし他の人もいるし、別に店員さんが突っ立ってても気にしないけど。割と広い・・・六畳の三倍か四倍くらいある広い部屋の中に、たった四人、しかもおれたちは座ってて、あっちの二人は立ってるのって、なんかいたたまれない。どうしていいのか、ほんとわかんない。
そんなこんなで暗くなっていく窓の外を眺めていたら、突然、近くで声がした。
「おかわりはいかがですか?」
「ああ、お願いします」マコトは気づいていたみたいで、躊躇なく返事していた。
おれはちょっとびっくりして、焦ったまま、うわーどうしよう、となっている。
いやコレ、心臓に悪いよ・・・。いつ傍に来たのか、ぜんぜんわからなかった。
「ユウはどうする?」
「っあ、おれもお願いします」
「かしこまりました」
マコトが振ってくれたので、おれも返事をした。喉が渇いてて、苦くてももう少し飲みたい。
「ありがとう。あとはもう大丈夫ですから、部屋から出て行ってもらって大丈夫です」
大丈夫を二回繰り返してる。マコトもいっぱいいっぱいかな。それなら、おれが困っててもおかしくないよな。冷静に対応してるマコトを見ると、自分だけができてない感じがして、ちょっと落ち込みそうだったから。
「・・・それはご命令ですか?部屋の外で待機、というご命令でしたら、承りますが、わたしたちは専属侍従ですので、お傍を離れるのは、仕事上よろしくないのですが・・・」
「え!?あ、ああ、そうですか・・・。部屋の外で待機、ってつまり、扉の外に立ってる、ってことですか?」
「はい、そうです。取次も役目の一つですので、部屋に控えるか廊下に控えるかが、必要なことになります」
えーーーっと。これはやっぱりちょっと、わけわかんないー。はあ。世話されるのって、それはそれで大変なんだ。ずっと一緒にいるとかって、気が休まらないよ・・・。
「・・・そうですか。それなら、部屋の中に居てもらっていいです。もうすぐ夕食なんですよね?」
「はい、ご用意ができ次第、知らせが参ります」
「わかりました」
マコトはそこで会話を終わりにした。おれはもう、マコトに任せっきりで、話す気力はなかった。ああ、年を何歳かって聞こうと思ってたけど、なんかもういいや。今の話を聞いて、なんか疲れた。
「すみません、思い出したんですけど、夜、寝る時って、二人とも別の部屋ですか?」しばらくしてからマコトが口を開いた。
「はい、それぞれに寝室のご用意がございます」
「それ、一緒の部屋にできませんか?今から変えるのは大変だと思うんですけど、ベッド動かすとかは。
でも別にベッド無くても布団だけもらえれば、おれは寝れるんで。布団だけ動かして、用意してもらえますか?」
「は、しかし、それでは」従者二人が顔を見合わせる。
「いいんです、おれは大丈夫なんで。お二人が叱られないように、おれが我儘言った、ってことで、お願いできませんか?」
すげー、マコトさん、たたみかけてる!けど、そうだよな。夜の間にどっかに連れ去られたり連れ込まれたりで、変なところとか状況とかになってたら、とかあったら、それは嫌だ。できるだけ一緒にいること、ってさっき四人で決めたんだし。さすがに女子二人と同じ部屋、っていうのは抵抗あるけど、もしかしたら命がかかってるかもしれないから、ここは頑張って同じ部屋にしてもらわないと!!
「おれも大丈夫!!だから、同じ部屋にしてください!」言えたー!
「・・・・わかりました。では、ご用意して参ります。」
すっごいイヤそうな間があったけど、そんな返事をして二人が動き出した。良かった。これで何とかなりそう。
「女子二人も上手く行ってるといいけど」ぽつり、とマコトに向けて言ってみた。おれから話しかけるのは緊張するなあ。
「・・大丈夫じゃないかな。あの二人はすごいしっかりしてる感じだし。」苦笑気味にマコトが言った。
ああ、うん、そうは思うけど。要らぬ心配かなー。どっちも頭良さそうだもんな。度胸もあったし、特に年上のトモカさんは。
「紅茶、飲み終わった?」
「うん」
「そっか、じゃあ、あとは夕飯、待つだけだな。たぶん、そこで女子二人に会えるだろうし」
穏やかにそう言って、マコトは背もたれに体を預けた。
ずっと緊張の連続で、今だってまだ、ほんとに全部安心できてるわけじゃないけど。
ちょっと休みたくなる気持ちはわかる。
ちょうど従者二人もいなくなったし。
おれも背もたれに寄りかかって、ごく自然に深呼吸した。
サイド国王・・・王と国の事情
「さてヨーグドルー、あの四人はどうだ?使い物になりそうか?」
キラキラと飾りのたくさんついている椅子に座っている王が問う。逆にほとんど装飾のない椅子に座っている問われた方は、軽く目礼してから話し出した。
「は、なかなかに賢い、目端の利く方々かと。正式な名乗りは、はぐらかせられましたし。特にあの、髪の短い女性は利発なようですな。」
「ほう。魔力や適性はどうだ?」
「魔力量は申し分ないでしょう。ガリオン殿の3倍はお持ちかと」
「なに!?そんなにか!!」
「はい。ただ、適性はわかりにくいですな。実際に魔法を試してみませんと」
「そなたが観てもわからぬか」
「はい。おそらく複数、もしくは全属性だと思われますが、その中でも特にどれが、というのは、実践でしか確認できぬかと」
「うむ。。。」
顎に手をやり、考え込む王。
しばらく無言の間があり、
「手間がかかっても確実に明らかにせねばな。女神の託宣があったとは言え、我らが呼び出したとは言え、無能者を養う余裕は、今の我が国にはない。情けないことにな」やや自嘲ぎみに王が言う。
「して、ガリオン、そなたの見立てはどうか?」
「武術は修めていない、と思われます。ただ、姿勢は良いですから、体を動かすことは、何かしら、していたのではないかと思います。これから鍛えるとして、魔獣退治が出来るようになるには、最低でも3ヶ月の特訓は必要でしょう。」
「3ヶ月か。長いな。」
「それでもギリギリかと思われます。ただ、魔法の才があれば、使いこなすことができれば、訓練期間は短縮できるかと。」
「そうだな。期待はあまりしないほうが良いのだろうが、できれば、一月ほどで使い物になると助かる」
「できる限りのことはいたします。ただ、どうも彼らは、、、顔つきが甘い。あれは守られて育った者たちでしょう。生き死にの場面に立ち会ったことが無いような、、、」
「ああ、それはワシも感じ申した。発想は良いし実行力もあるようじゃが、どうも何かが抜けておる気がしてな。おそらくそれが、生死の境目を知っているか否かの、覚悟の違いじゃろうな」
「なるほど。それは確かに我らとは違う世界の者たちだな」
王が納得いったように、呟いた。
「魔獣もおらず、戦もないのであれば、・・・それは理想郷よの」
どこか寂寥感を漂わせ、王は俯く。やわらかな物言いだった。しばらく部屋に沈黙が落ちる。
とん、と指で肘掛けを叩き、顔を上げた王は、厳しい声音で話し出した。
「だが、いずれにせよ、彼らには働いてもらわねばならぬ。その前に教育と指導が必要だろうが。」
そこで言葉を切り、視線が沈む。内に入って思い巡らせている王を、二人の腹心は静かに見つめて待った。王の決断を。
「一月だ」
強い覇気とともに、王が発する。
「一月は最高の教育と待遇を与えよう。それで見込みがあるとわかれば良し、無ければ棄てる。」
非情であろうとも、線引きは必要なのだ。
「一月後に、再びそなたらに問う。それまでは、最善を尽くせ」
臣下であり、武と魔法の最高位である二人は立ち上がって深々と王に礼をする。
「御意のままに」
王の決断を受け入れた。
宰司さんの名前はまだ仮なのです。イマイチ落ち着かなくて。
四人の呼び名は、仲間内ではこれから変わります。
名前ネタの話は何回かあると思います。
それでは、読んでくださってありがとうございました。