元王子の話
久しぶりの連載です。テーマは『癒し』。
1人の青年が山の中を1人歩いていた。
彼が此処に来たのは全くの偶然だった。
青年はこの国の第二王子だった。
本来ならば兄である王太子を支え国を一緒に盛り上げて行こう、と思っていた。
兄が自分の婚約者とベッドで一緒にいる姿を見ていなければ……。
王太子を尊敬していたし婚約者を愛していた第二王子にとっては相当ショックな出来事だったし十分な裏切りである。
第二王子は自ら王子の身分を放棄し王都を出て行った。
とにかく人に会いたくない、1人でひっそりと暮らしたい。
なんなら自分の死に場所を探していた。
そして彷徨いやって来たのはとある山の中だった。
王都を出て何日経ったかわからない。
ふと思えばろくに食事もしてこなかった。
意識してしまえば途端にお腹が空いてきた。
頭もフラフラで足取りも悪い。
草木をかき分け進むと突然開けた場所が出てきた。
(これは……、村か?)
第二王子はフラフラな足でなんとか村まで歩いた。
しかし、人の気配はしないし建物は所々滅びている。
(こんな所に村があったなんて……、地図には載っていないぞ)
一応、この国について学習はしている、しかし細かい所まではわかっていなかった。
もしかしたら未開拓の場所なのかもしれない。
とりあえず第二王子はとある空き家に入り大の字になり寝転んだ。
(なんか……、久しぶりに板の上で寝てるなぁ)
小鳥の声とかそやそやと吹く風が気持ち良かった。
ただ、それでもお腹はすく。
とりあえず食べ物を探す為に村の周辺を探し始めた。
そこである臭いがした。
村の外れに行ってみると地底からプクプクと水が湧いていた。
第二王子は触ってみた。
「熱っ!? ……これはもしかして温泉か?」
地底から湧き出していたのは温泉だった。
しかもちょうど良い湯加減だった。
第二王子は服を脱ぎ温泉に入った。
「はぁ〜、気持ちいい〜……」
温泉の気持ち良さに第二王子はほっとする。
それと同時に既に人が入れるぐらいの手入れがされている温泉がある、という事はやっぱり人が住んでいた事を確信する。
多分、住めなくなった事情があり出て行ったんだろう。
だったら此処に住んでも良いんじゃないか?
よし、此処を自分の理想郷にしよう。
第二王子はそう誓った。
これが後に知る人ぞ知る『いやしのさと』と呼ばれる隠れ里の始まりである。
第二王子は自分と同じ様な境遇の人々がこれからやってくる事をこの時、知る由もなかった……。




