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Data 13. 磨かれていくチームワーク



Data 13. 磨かれていくチームワーク



Akiアキさん! 捌ききれないなら無理せず後ろに流すんだ!」


「分かりました!」


 鬱蒼と茂る森の中で剣士のAkiさんが、切り株を模したかのような歩く樹木の怪物を塞き止めてくれる。

 敵の動きがゾンビの様に遅いのが幸いし、数が多くても俺たちは後退しながら少しづつ敵を倒している。


 Akiさんが前衛を務め。

 ヒーくんが味方全体へバフを配りながら、同列の後衛を守る。


 そしてMariaマリア

 彼女が作戦の要だ。

 このスプラウトレントという下位の魔物達を、一か所に集めて魔法で一掃する。


 俺はというと……これからの戦いで前衛はAkiさん一人では厳しくなるだろう。

 こんな風に数多の敵を相手にする場合、陽動に回りながらも相手を引き付け、速度を活かし攪乱できる職業。

 即席だが、新たに【盗賊】へと転職していた。

 この世界の冒険者である盗賊は民を守る盗賊、【義賊】と呼ばれ皆から親しまれている。

 そして、民を狙う盗賊は【逆賊】または単純に【山賊】とも呼ばれている。


 すごいな、盗賊に転職したら剣士よりも体が軽いし自由な身のこなしができる。

 敵を引き付けながら、木に登り。

 上から飛び降り短刀を振り下ろす。


「固いな」


 やはり、剣士より攻撃力は低いか。

 盗賊の主な役割は、陽動、攪乱、罠管理。

 そして不意打ち、余裕があれば後衛を守る事。

 役割は一番多い。


 その代わり色々できるし、カタログスペックはそこまで高くないという感じだ。


 連撃を用いて、そのまま一体倒し。

 引き続き陽動を行う。


 俺が盗賊を取ったのにはもう一つ理由がある。

 あの不気味な男と対峙した時、俺は自身の足を動かすことができた。

 そして、冒険者の基礎スキル【速度上昇】がグレードアップした。

 だから俺の足はもしかして、速度スキルと関係しているのではないかという、ただの希薄な推測だ。


「よし、今だ」


「オッケー!」


 あらかじめ着火剤を仕込んだ場所へスプラウトレントを一箇所に集めて、Mariaが黒魔法【種火】を放った。

 周囲へは火が燃え移らないように整備されている。


 NPCからの特別ミッション。

 スプラウトレントの討伐をクリアだ。

 特別ミッションとはデイリーミッションみたいなものだ。


 プレイヤーには一日一善、ほぼ必須なものだ。

 それをすることによって、ポイントを獲得でき新たなアバターやアクセサリー。

 ゲーム内での食べ物、飲み物。

 日常的な物資から課金アイテムのようなものまで、様々なものを交換できる。


 それにしても……。


 パーティーを組んで10日ほど経った。

 俺たちのチームワークもだいぶ様になってきたな。

 魔物大量発生の討伐イベント開始は8月5日と告知された。

 あと3日だけど……俺たちの連携は日に日に良くなっている。

 イベントではかなりの成果が見込めそうだ。


 そしてこの10日間。

 俺は、一人で確かめたいことがあったんだが……。


 皆とハイタッチを交わし、汗をぬぐった。

 俺は、そのまま気になっている事をMariaへと尋ねる。


「Maria、属性魔法はあまり解放されていないのか?」


 彼女が使ったのは属性魔法の【種火】。

 火魔法の最下位魔法であり、黒魔法職なら誰でも使える。

 便利な生活魔法の一種であり中には、民間人でも使える人もいるくらいだ。


 いまのは樹木という敵の種類や、下準備や環境があったから種火を活かせたが。

 本来は戦闘用の魔法ではない。


「うん……情報サイトを見ても条件がぜっんぜん載ってないんだよね~」


「そうなのか」


 このゲーム。

 属性魔法はものすごく珍しいものだという。

 初級でも僅か、中級魔法に関してはほんの一握りの存在しか使えない


 だから、魔力を直接用いる攻撃魔法が黒魔法士の主流だ。

 属性魔法がなくとも、魔法体制の弱い敵にはそれで充分な効果がある。


「私もNight・Casterみたいになりたいなぁ~」


「Mariaさん大丈夫ですわ! Mariaさんならきっとどんな魔法もできますから!」


「Akiちゃん……ギュー!」


 乙女二人がじゃれあっているのを眺め、俺は噂の存在の事を考えていた。


 Night・Caster。

 この夢の世界でおかしな魔術を使う謎の存在。

 その存在はさまざまな属性魔法も使っていたという噂だ。


 現在の魔法使いたちは、属性魔法取得のためにそのNight・Casterに注目しているという。


「とりあえず、村へミッションの報告をしよう」


 依頼完了を知らせるため、俺たちは森を歩きながら村へ帰還していた。


「それよりさ、Akiちゃんって……なんかやってるの? たまにIrukaみたいなすごい動きをするけど……」


「Irukaさんほどではありませんが……私も少々武道を嗜んでおりまして、お恥ずかしいですわ……」


 やはりそうか。

 彼女の冷静沈着な間合い管理。

 隙を見逃さない踏み込みと一撃。

 敵を倒した後、油断を見せない残心の心得。


 動きもそうだが、戦いにおいて大事なものを日々積み重ねているのが分かるような振る舞いだ。

 たまにぎこちないのは、ゲームに慣れていないだけだろう。


「俺は今、武道から離れているから……Akiさんの方が強かったりして」


「そ、そんな! 言いすぎです……」


 ……あれ?


「ちょっとは乙女心考えてよね! もー!」


「Irukaくんほど動ける人なんてそうそういませんよ!」


 俺、褒めたつもりだったんだけどな。



――――――



「トレントを一掃されたか……」


 トレントを討伐されたことに気づいた男は、神聖なる森の広場へと来ていた。

 気配を隠し、トレントを討伐したパーティーの帰りを待ち伏せし、自らの組織へ報告する。


「邪魔をするやつがどうなるか、ちょうどいい見世物だ」


「……」


 彼は眠れる森の守護者を強制的に目覚めさせた。


「やつらを滅ぼせ、グラントレント」



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