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××した扉の向こう側  作者: 星片 廻
第3章.手のひら姫様と期末試験編
28/38

★第28話 真紅な世界、幽霊との約束。

本当はQ組18人だったんですけど、急に2人もキャラが思いついて急遽話にねじねじしました。なので一部過去の話が修正されています。

全部修正(2025/07/16)

まあまあ修正(2025/11/18)


 ◆


[悟川心冶]


 彼岸花の鮮やかな赤色の世界に、それよりも赤黒い姿をした人が目の前に立っていた。異世界に入ってから立て続けに何かが現れて僕の心は多分、憔悴しょうすいしていた。幽霊みたいな姿で、シルエットのように姿に濃影がかかっている。そして多分僕の方を見ている。


「…貴方は、だ、だれですか?」


 上手く言葉が喉から出てこない。汗に水分を持っていかれて、口内は泡が出る程に乾燥している。やっと出た声はとても枯れていた。こんな声が出るのかと自分に驚いた。僕の枯れた声の質問に、赤黒い姿を揺らしながら幽霊は応える。


??「この世界に住んでるただの人間だよ」

「に、人間?」

??「ふふっ。人間に見えない?だよね。しょうがないよ」


 彼は人間と言った。何処が?と疑問に思ったら、すぐに気づかれクスクスと笑われた。だって、シルエットの姿で目や顔の形が分からない人見たことない。いや、実際に能力者でいるかもしれないけど。それに、この人からは心の声が聞こえてこない。僕は人ならどんな人間でも心の声を読める。聞こえてくる。

なのに、彼からは一つの呟きも聞こえてこない。どうしても僕は彼を人と認識できなかった。

 少し恐怖から安心したのか、無意識に強張らせていた肩の荷が下りた。ルナも痛みが引き落ち着いたのか、武器の姿から元の丸い姿に戻り、僕の肩へ一息ついている。


「何で、僕の家の押入れ…クローゼットにこんな世界が」

??「あーそれは、君と僕に若干関わりがあったからかな」

「関わり?一度も会ったことも聞いたこともありませんけど」

??「そうだね。君から見たらそうだ。知らなくて当然」

 

 知らなくて当然。それじゃあ、彼は僕のことを知っているんだ。いつ、どこで、僕のことを?知らない間に、普通じゃない人に自分の個人情報を握られていると思うと鳥肌が立ってくる。


??「えっとね。僕もまさか繋がるとは思わなくて、君が死にかけてたの見て驚いちゃった。君の母親は一切僕と繋がらなかったのに、まさか君にとても反応するとは…」

「…母さん、母さんのことも知ってるんですか!」


 僕は思わず叫んでしまった。彼は急な大声に驚いた。母親のことを知っている人なんてほとんどいない。近所と強い繋がりはお隣さん以外に無かった。今の行方なんて誰も知らない。でも、何故か、この人なら知ってると思ってしまった。


??「知りたい気持ちも分かるけど、迂闊に話せることは無いよ。君の母親についてはあまり知らないし。それに会いたいって思ってるけど、今の弱そうな君には無理だと思うけど」

「…!」

??「弱いと誰も救えないよ。君には強くなれる環境や仲間がいるんだから。また強くなったら、今度は偶然じゃなく、僕が会いに行くよ。そしたら少しずつ僕が知ってることを話してあげる。僕はこの世界から出れないから、引き込む形になるけど」


 赤い幽霊は辺りを見渡す。何かいるのだろうか。彼に諭されて少しだけ冷静になった。確かに、僕は今とても弱い。さっきの化物を自力で倒せなかった。恐怖で足が竦み、体中が絶望で支配された。でも、今その恐怖の対象だった化物は、彼の脚元で犬のように小さくなって縮こまっている。彼の強さが僕とは違うと少しにして、大きな差が垣間見えた。


??「少し波風が荒れてる。帰らせないと不味いかな」

「……」

??「また会うのは嫌かもしれないけど、僕、君と出会えて凄く嬉しいんだ。だから約束しよう」


 のそりと赤い幽霊が僕に近づく。至近距離とも言える場所になると、若干だけど顔の輪郭りんかくが見えてくる。お母さんに少し似てて童顔に見えた。多分気のせいだけど。

 幽霊は僕に約束を迫る。僕が次にそこまで期待していないのに気づいたからかもしれない。凄い察し能力が高い幽霊だ。考えてること全部覗かれている。サトリ…一緒なのかな。


「何を約束するんですか」

??「お互いに利益があるものにしよう。君を怖がらせてしまったし。じゃあ、僕は君がとても困った時とか危険が迫った時に僕が助けるよ。並みの敵なら僕倒せるし」

「はあ」

??「助けるから、だから強くなって?この子の声が無意識に流れ込まない位に。つまりは、強い奴に心で負けないように。で、僕の所に来て成果を見せて?」

「……(注文がちょっと多いかな…)」

??「そしていつかは僕のことを_______」

「!」


 殺して。


 幽霊は笑わない。至極真面目に僕にその約束をお願いしてきた。僕を助けるとヒーローのような利益を確約しておいて、自分は殺されることを願うのはお互いに利益があっても公平とは言えない。彼の言葉にはあまりにも迫真で真剣な感情が籠っていた。僕はその約束を呑む以外の判断が無かった。断ったら殺されるとさえ思ってしまった。


??「忘れないでね」


 また優しい声。僕は赤黒い幽霊と約束を結んだ。結ばれた。次会う時まで強くなれとこの約束に思いを込められて。そして最後に彼は言葉を残した。


??「君はこの先の未来、嫌なこととかいっぱいあるかもしれない。でも、逃げないでね。例え、開けた扉の向こう側に見たくない地獄が広がっていたとしても。目を逸らさないで、前を向いて進んでね」


 僕のこの先を忠告して幽霊と黒色の化物はどこかへと歩いていく。目の瞬きを2、3回した後、僕の視界にはいつもの部屋が映っていた。点滅して赤の世界から床の木の色に、移り変わった。赤黒い彼が微笑んでいた優しい声が耳に残っている。頭が追い付かない。僕はへたり込んで自分の部屋の床に仰向けで寝転がる。


 無意識だったけど僕の鼻から少しだけ血が流れてる。ルナは僕の腹の上で気弱に寝込んでいる。


「一体何だったんだろ…あれ」


 精神を使いすぎたのか、僕は体の疲れがどっと溢れて眠気が襲ってきた。後のことは起きてから整理しよう。気を抜かないと苦しさが残るから今は寝よう。

 僕は睡魔すいまに身を任せ、床に寝転がって眠りに落ちた。約束は必ず憶えておこう…きっと役に立つから。僕を強くしてくれるから。


 ・

 ・

 ・


 僕が起きたのは父さんに揺さぶられた時だった。


悟川父「心!大丈夫!!?」

「あ、ろ、父さん」


 父さん凄い青い顔してる。そりゃあ、自分の子供が床で鼻血出して寝てたら怖いよね。悲しませてしまったことに僕は罪悪感でさいなまれる。


悟川父「もう!帰ってきたら、本当…もう…」

「心配かけてごめん。ちょっと変な夢を見てただけ」

悟川父「夢?もう、鼻血止めて寝ないようにどっか散歩でもしてなさい」

「うんそうする」


 僕は部屋を出て気分転換に外へ散歩に出かけた。あの幽霊も彼岸花の世界も、父さんには言えなかった。ただ様子見で家に戻ったらこんな目にあったなんて言えるもんじゃなかった。



 ◇



[悟川父]


 息子の心が部屋で倒れていた。久しぶりに僕を気遣って家に帰ると、メールが着てウキウキで帰ったらこうなっていた。叫びそうだったけどそこは事件にまで急に発展はさせれないから、とりあえず開いた口を手で塞いで揺さぶったらちゃんと目を覚ました。良かった。癒唯ゆいに続いて息子までいなくなるのは耐えられないから本当に良かった。


「夢、ちょっと変な夢か」


 夢だとして鼻血を流して倒れるように寝てみる夢だったら、だいぶ危険なものだと思うんだけども。

 晩御飯の準備をする為に1階へ下がる。リビングの写真立てには僕たち家族3人の写真が飾られてる。皆で笑顔を浮かべて楽しそうに写真に写ってる。


「癒唯も見たことあるって言ってたっけ」


 心が生まれる少し前、癒唯が変な夢を見たと泣きついてきたことがあった。昔から感情表現豊かで底抜けに明るい彼女が、初めて出会った時以来に憔悴した顔で相談してきたからかよく憶えている。その夢が心と同じものなのかは分からない。

 そして心が生まれてからもっと辛そうな顔をする頻度が増えた。夢にずっと苦しんで、食事が通らないこともあった。病院へ行っても精神的な何かとしか言われなかった。確実に癒唯の精神をすり減らし、一応静養するためにと、彼女は家を離れてしまった。本当の意図がどうなのかは僕には分からない。


癒唯「多分、家の呪いかもしれない」

「呪い?」

癒唯「うん。私の所ね、子供が生まれるごとに段々と寿命が減っていくの。私本当は20で死ぬはずだったんだって。お母さんが生きてって願ったからこうして生き延びてるの」

「そう…だったんだ」

癒唯「ごめんね。こういうの全然言わなくて。初めて会った時にやっぱ言ってれば」

「いや、話すのにも勇気とか必要だから。あの時は無理して言わなくてよかったよ」


「君は心にも願ったの?」

癒唯「勿論。私と同じ能力で生まれたからには願わないなんて選択肢は無かった。だって助けなかったらあのこはきっと10も超せないと思うから」

心冶「…ZZZ」


癒唯「家の呪いを解く方法、探してみようかしら」

「手伝う…」

癒唯「それは嬉しいけど、敬一には心を物理的に守ってほしいから」


 ・

 ・

 ・


癒唯「敬一あのね、私_____。大丈夫。絶対帰ってくるから」


 確証もない約束に、僕はまだ依存してる。もうそろそろ、癒唯の約束を心にも伝えよう。


悟川ごかわ敬一けいいち:男・39歳・178cm・9月22日生まれ

【能力】無し

主人公の父親。ちょっと気弱で優しい穏やかな人。怒るのはあまり得意ではない。母親が自分達からいなくなるのは了承していた。癒唯がどういった経歴でどういった家系なのかは存じ上げないが、初めて会った時に助けなければ!と正義感が働きそのままゴールインした。体育祭はずっと死にかけていた。息子が怪我をあまり気にしないタイプだとしても、内心びくびくしていた。

【好物】きつねうどん・水族館(癒唯とのデートの思い出)・家族


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