★第17話 とんでもデスロードやないかい!!
今回は謎の解説役。一人称視点だと絶対先進むのダレると思った結果です。
完全修正(2025/04/02)→ちょっぴり修正(2025/04/03)
◆
[???解説役]
開幕の言葉と共に、入口へ一斉に4人が走り出す。ここからは第一種目のように観客の所にモニターが支給され、皆々一様にそのモニターでの光景に釘付けになっていた。我が子を見守る親や、特殊科の能力を知りたがる好奇心旺盛な者たちが見つめている。その先は…
傘木「なあ、ホンマに俺の能力もう使ってええんか?何も無いで?」
牛視「この後あるよ…」
傘木「ホンマかいなって、マジやないか!!」
第一走者が外周を始めて数秒、目の前には真っ白な道が続いていた。目線を奥へと送っても白色が続き第二走者は見つからない。他に道は無い。分かれ道は閉鎖され、その一本道が外周のルートだと主張している。また、道を外れれば本来は屋台や人間で溢れかえっているはずが、不気味なほどに何も無い。
Q組の第一走者、傘木唐博・牛視件乃。全員敬称略で。能力は前者が唐傘、後者は未来予知、どちらも妖怪の唐傘お化けと件が元ネタなのだろうか。さて、愛称としては如何程に。
傘木は自身の能力で傘を生み出し、二人で傘を指す。これは牛視による天啓からくる行動だ。スタート直前に受け取った情報では、傘を差していれば良いとお告げとして脳内へ受け取られた。傘木はこの行動に疑問を抱きながらも、牛視を信用し自身が出せる限界の2本を生み出した。
傘木「ここ進まなアカンのか…」
牛視「もちもち…のびのび」
傘木「もちもちって、モチモチの木かなんかか。いや、待てよ。俺らのやるやつの名称忘れるわけないやん!もち…じゃあこれって」
傘木は白色の道を踏む。足と地面の間にぷちゅと軽い音が鳴る。そして足を戻そうと引っ張ると、ねばっとした粘着性が確認できる。簡単に地面から離れたが、足は鈍足になるのは明らかだ。
傘木「ホンマに餅やないか!!」
牛視「行くよ」
盾山「うひゃー気をつけろよ。餅まみれになるから…」
ソール「OK~」
盾山「大丈夫かな…」
牛視は傘を差しつつ、勇猛果敢に前へ進んでいく。一歩一歩を慎重に進む。同じように対戦相手のR組も進んでいく。片方は盾山昭人で、もう一人はソール・レヴィナス。彼らの能力については後程ね。
ねばねばした道は確かに足を遅くする。しかし、止まる訳には行かず。かといって走るわけにもいかず。ただここで有利だったのは牛視だった。彼はクラスで1番背が高く、足の長さもかなりある。足が長い人間は普通の人より大股で歩く。一歩の幅が大きければ、進む距離は長い。しかし、牛視とは真逆で身長の低い傘木は困難を極めていた。足は小刻みに進まなければならない。リズムが狂えば足元をすくわれ、簡単にこけてしまう。より神経を使い進んでいく。傘を差していることが、なおのことストレスとして負荷がかかっていた。
傘木「ひぃ~ひぃ、む、無理やこれ!牛視追いつかへん!」
牛視「唐博君、ほら」
傘木「ホンマ、怪力で背ぇ高いの羨ましいわ…」
傘木は牛視の背中に乗る。わざわざ、戻って来た牛視の背中に感動している。自分が彼のように背が高く無いこと、力持ちで無いことを、羨ましいと思いを呟く。
牛視「僕も、君を羨ましいって思うよ」
傘木「え?なーに言ってんねん。俺はチビでひょろいし、能力だって傘2本出せるだけやし」
牛視「それが、ここで活きるんだ」
傘木「んなアホな…」
信じていなかった。しかし、相方の牛視は真剣な表情だった。自分を卑下する傘木の言動は、良くないものだと、まるで飼い主の行動に飽きれる飼い猫の瞳のように。その糸目から薄っすらと青い目を覗かせて。
牛視「来るよ。しっかり傘広げて持ってて」
傘木「お、おう…」
傘木は疑問に思いつつも、傘を広げる。自分と牛視を覆う程に傘をもっと広げる。一つの屋根のように。
そして、牛視が予想していたことが起きた。受け取った天啓が今まさに起きていた。
釣瓶「な、何か降ってきてね…?」
傘の影があっても、少し離れた空天井を映す白色の餅の道。そこに無数の黒く丸い影が現れる。異様なことが起き始めていると、傘木も一瞬だけ上を見ようと、傘を縮めてしまった。
牛視「戻して!!」
傘木「うえ!!?あ、すまん!!」
牛視「走るよ!!」
牛視は全身全力で走り始めた。餅による粘液性を気にすることも無く、足を大きく上げて走っていく、さながら陸上選手のような素早さと綺麗なフォームは観客もよく見ている。
なにがなんだか状況を飲み込めていない傘木に、気づかせる何かが傘に必着した。
それはモチィと餅のような効果音を上げて。
傘木「も、もちい!?、て!?周りなんか餅降ってきてるやんけ!!!!!」
空から無数の餅が降ってきた。傘木はすぐさま傘を広げる。これを牛視は予知していたんだと、呆気にとられた顔をしながら、牛視におんぶされ餅の道を進んだ。
牛視の能力。それは未来予知。未来で起きる出来事を断片的に知ることができるもの。ただし意識的に受け取れるものではない。傘木の能力。それは傘の操作。主に守備の行動をとり、攻撃から身を護る。どんな傘でも操ることが可能で、自分で傘を生成することも可能。しかし生み出せるのは2本のみ。
傘木「これ予知しとったんか…」
牛視「うん。それに役立ったよ、唐博君の傘」
傘木「え、ああ、そんな…」
牛視「誰かを守れるその力、ちゃんと生かせば凄いんだから」
傘木「でへへ、褒められると嬉しいなあ。バトン離さなんようにしとくわ。皆で最後まで行きたいし」
傘木・牛視ペアの走りに絶対的な差をつかれないよう、R組のペアも猛追する。
盾山の能力、それは盾。自分を中心に360度青白いバリアを張ることが可能。部分的に張ることも、大きさや長さも操作可能。ソール能力、それはソーラービーム。太陽の光を集め、一直線に煌めくビームを放つ。盾山が頭上を守るバリアを張り、ソールが餅の道をビームで焼き道を進んでいく。焼けば粘着の白い道は漕げ落ち、ただの道が出来上がっていた。
盾山「遅れたら殺される…!」
ソール「そんなことアイツするの?」
盾山「しそうじゃん!あんなに怖い顔!」
ソール「キにしすぎだって~」
R組もQ組も、餅の道を乗り越え、先へと進んでいった。
◆
第2走者待機上にて、Q組の河野凛童と小神雷子は、いずれ来る牛視・傘木のペアを待っていた。河野は異様に落ち着いており、対照的に小神は心臓の高鳴りを抑えようと手で服を掴んでいた。
小神「いつの間に、そんな大きなリュック持ってたの?」
小神は河野に尋ねる。何故なら、彼女の体を2,3倍は上回るリュックを軽々と背負っているからだ。
河野「まあ、あたし工芸工作同好会入ってるからさ~。仲間に事前に預かってもらってたんね」
小神「同好会に入ってたの!?(一応この学校に部活・同好会あるけども…部活は私達原則禁止だけども)」
河野「あ、来た」
河野は遠くを指さす。必死に走りながら、次の走者へとバトンを受け渡す為にと、牛視と傘木がやってきた。次に走るのは自分達だと、小神は武者震いをする。
小神「ひょえ~…できるのかな…」
河野「できるよ。なにせ、あたしの得意が活きるからね」
牛視「遅くなった~」
河野「想像より速かったんね。んじゃ、次はあたしたちに任せるんね」
傘木「…よ、よろしくな…」
小神「うん」
傘木からバトンを受け取り、自分達の出番が訪れる。実は河野・小神は自分達が走る障害の内容は知らない。来るときにネタバレにならないようにと誘導係のAIに見えないよう絶妙な感じで移動をさせられた。彼女たちにはまだ自分達に襲い掛かるものを知らなかった。いや、片方は既に予想がついており攻略も考えていた。
小神「え、ええ!?この上を走るの!?」
河野「思ってた通りやんね」
驚愕と予想通り、反応は様々。50mも続く大きな水槽。その上を走っていくもの。本来、学校に用意されている水泳用プールは25m。それの2倍もある長さは圧巻とも言える。
第2走者の走る障害。それは名の通り水泳競争。この学校は外周とは思えないほどの長さを走らされる。この障害リレーもグラウンドを外周というのはあくまでもイメージで、本当はグラウンドの右側出入り口スタートから、長い長いグラウンドから離れたところまで走らされ左側の出口で帰ってくるもの。既に何人かこの競争は外周の域を超えてないかと察している人がいるだろう。
因幡「おっしゃ、行くぜ行くぜーー!!!」
村紗「ひゃっほーい!!」
立山・ソールペアが遅れながらもバトンを渡し、因幡・村紗ペアが走っていた。因幡槌兎、能力は因幡の白兎。兎の能力により、驚異的な脚力を持つ。彼の脚により村紗は背中に背負われ、ただ猪突猛進の如くプールの上を一直線に走っていった。
小神「は、はや!もう、水の上走ってるよ!!?」
河野「流石は因幡の白兎やんね。雷ちー、あたしらも行くよ。乗って!」
小神「え、これに!?」
小神は驚き戸惑いながらも、時間と次の走者のことを考え、その大きなリュックにしがみつく。河野は数回ストレッチをすると水の中に飛び込んだ。
河野「(スイッチON)」
小神「!」
河野は水に飛び込んですぐリュックにつけていたスイッチを押した。すると、リュックサックは小神を落とさないように形を変え、あっという間に2人乗り用のボートに変形した。
河野「どう?あたしが作ったどこでも可変式リュック」
小神「一瞬でボートになってる!これ漕いでいくの?」
河野「え?違うよ。ここばかりはあたしの能力でやらせてもらうんね」
××『流石ですね…河野さん』
河野は下がって水槽の壁に足をつける。水泳では足を壁につけ勢いをつければスタートが良くなる。進みは速く、力を抑える距離が増える。
河野「後ろから押すから、飛んでかないように捕まってね」
小神「う、うん…」
河野「いっくよー!!」
河野は勢いよく足を壁から離し、じたばたと足を動かし始めた。
小神「いやあああ!速い速い速いよおおおおお!!!!!」
河野「あたしの水泳能力なめたらダメんね!!」
河野の能力は水中で地上と同じことができるようなもの。水中に入ると体が変化し、耳にえらと穴ができ、水中で呼吸が可能になる。水と酸素を吸い、余分な水は穴から排出される。また足や腕にもえらが出現し、水泳能力が向上する。それに伴い身体能力も強化される。唯一の弱点は地上では能力が使えないこと。河野の能力によって、ただの足のじたばたは最早モーターと化していた。
因幡「やっべ!凄い速さで追いかけてきてるじゃん!」
村紗「ボート…舟じゃん」
村紗はポケットから何やら柄杓を取り出す。すうっと水を取り、柄杓には水が満杯に入っている。
村紗「因幡、ちょっとだけ下がって。6歩くらい」
因幡「え、いいけど…」
因幡は言われた通りに6歩ほど後ろに下がる。そうしていると、物凄い速さで来るボートに丁度横に並ぶ。村紗はえいっと、柄杓に入れていた水をボートに投げ送った。たかが柄杓一杯の水、しかもボートに向かって投げ送っただけ。ボートには数滴の水たまりを作るだけ。
村紗「いいよ、先進んで」
因幡「あいよ」
小神「何しに来たんだろ…って!!?わあああ!!!」
河野「忘れてた!!」
すると急にその水たまりを中心にボートが沈み始めた。河野はすかさずボートから別のスイッチを押し、落ちてきた小神を抱えて顔を地上に出す。ボートはまた姿を変えおんぶ紐のように、二人にくっついた。
小神「び、びっくりした…」
河野「忘れてた忘れてた。あの村紗って人は船を沈める能力だったんね」
小神「そうなんだ…よく知ってるね…」
河野「色々情報を仕入れてるんね。さ、そんなことより仕切り直し。ここで差ができたら負けちゃうんね。あたしL組の連中と戦ってみたいし」
小神「うん。私も最後の戦いやってみたい」
河野は小神を背中に乗せ、自力で泳ぎ始めた。揺れない安定した泳ぎ、先ほどまでと違って速くても吹き飛ばされるほどではなくなった。
村紗幽水の能力は、浮沈を操る能力。特別製のあの柄杓に水を入れ、舟に投げ込めば数滴でその舟を沈めることができる。また柄杓で舟に接触すれば、沈んでいる船を浮かせることもできる。舟の大きさによって沈めるのに必要な水は変わるが、それでも人を簡単に海の中へ溺れさせる驚異的な能力の一つとなろう。
因幡「ほい一番!バトン渡すぜ」
村紗「あとはよろしくなー」
御祓「任せてください!!この私目が必ずR組を1位へと導きます!」
白喰「おー!」
先にR組のペアが第3走者に辿り着く。そのやりとりは、明るく決して暗い言葉が飛び交わない雰囲気だった。
鳥羽「ねえねえ」
水速「手を繋ごうとか言うなよ。気色悪い」
鳥羽「そこまで言う?そうじゃなくて、R組って結構雰囲気良いんだね」
水速「アイツがいないからだろ」
鳥羽「アイツってあのアイツ?」
水速「……」
鳥羽「あの人怖いよね。前に鳩使ったけどみんな怖がってた」
水速「ストーカーかよ…」
鳥羽「蛇に睨まれたって感じ。蛇睨み!」
水速「蛇の能力者のせいだろ。R組にいるし…」
鳥羽「違うよ。彼に睨まれただけさ。なのに、蛇を怖がってる」
水速「蛇…か」
傘木唐博:男・15歳・159cm・6月11日生まれ・【一人称】俺・出身地:大阪
【能力】:傘を操るなどの能力(自力で2本生成可能・基本は防御で反射で戦うタイプ)
ツッコミ役で元気・快活な性格。大阪弁話者だが、作者は関西出身ではないので苦労している。背が低いのがコンプレックスで、自己評価は低い。牛視とは高校入学して一番に仲良くなった親友であり相棒。
【好物】たこ焼き・イカ焼き・ゲーム・寝ること
▼良かったら「評価・ブクマ・いいね」してくださると小説活動の励みになります。とっても嬉しいのでお願いします。




