表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護神  作者: 大甘財閥
3/3

第3話

 ある時、『叔父さん』という男の人がこの家に来た。


 ママさんの弟だという。


 髪の毛もぼさぼさで、髭は伸び放題だ。


 うす汚れてんなあと思ったら、何とかという『霊験あらたかな』山に行って、お札をもらってきたという。


 この男は俺を見るなり首を傾げた。


「あれ、もうお札なくてもよかったかな?」


 よくわからねえが、こいつの目は俺と同じものが見えるような気がする。


「やだ……正広、何よ」


「姉さんは僕が霊感あるの知ってるだろう。あそこの出窓、実は霊の通り道になってるんだよ。だからこのお札、もらいにいってきたんだ」


 霊験あらたかなお寺で、特別に『ご祈祷』してもらったものだそうだ。


 この叔父さんの話だと、あの黒いヤツは彷徨っている死んだ人の魂らしい。


「あのこ時々、窓に向かって『やんのかステップ』するのよ。パパが面白がって動画に撮ってたんだけど、それってもしかして……」


「こいつには見えてたんだろうな」


 叔父さんは俺の尻をぽんぽんと叩いた。


「ふーちゃんの具合はどう? 今日は学校行ってんの?」


「ええ。最近は全然熱を出さなくなったのよ」


「あの子もうちの血筋を濃く引いてんだろうな。霊を寄せつけやすい体質なんだと思う」


 ママさんちの家系は代々『霊感』が強いそうで、そういうものが見えたり、感じたりする人がたまにいるんだそうだ。


 それで、『霊』寄せつけやすい二葉ちゃんはよく熱を出していたんじゃないかと、この叔父さんはいう。


 ちなみにママさんはまったくないそうだ。


「でもこいつが来てくれたお陰で色々防衛してくれてるんだろうな。大した守護神だ」


 頭を撫でようとした叔父さんの手をすり抜け、俺はソファの背もたれを降りて玄関へと向かった。


「二葉ちゃん、帰ってきたみたいね」

 後ろでママさんがくすっと笑うのが聞こえた。


 玄関先で少し待つとチャイムが鳴って、ママさんが鍵を開ける。


「ただいま! ママ、ヒロシ。あれ? まー君、来たの?」


「おかえりなさい、二葉ちゃん」

「おかえり、ふーちゃん」


 二葉ちゃんは俺をもふってから、『まー君』と呼んだ叔父さんに抱きついた。


「でも、『ヒロシ』って誰」


 ママさんと二葉ちゃんは俺を見る。

 つられて叔父さんも目線を下げる。


「ここんちは『野原』だけど、何で主人公じゃなくてお父さんの名前にしたの?」

 叔父さんは言ってから笑い出した。


「だって、呼びやすいんだもん」

 そう言って、二葉ちゃんは俺を抱き上げた。


 後で知ったが、某『長寿アニメ番組』の家族と同じ名前とのことだ。


「足、臭いのかな」

 叔父さんが俺の前足を取り、くんくん嗅ぐ。


「ああ、肉球いい匂い」


 二葉ちゃんはくすくす笑い、何やってんのよ、とママさんは呆れたように言うが笑っていた。


 パパさんが帰ってきてから今日は『すき焼き』というお鍋を囲んで、俺は缶に入っているちょっといい味のする飯をもらった。



   ☆

 俺は猫。


 名前はヒロシ。


 義理を大事にする男。


 今は野原家の飼い猫だ。


 もう野良じゃない。


 お札のお陰で、黒いヤツは来なくなった。


 俺ものんびりすることができる。


 今は、二葉ちゃんのピアノがどんどん上手くなっていくのを聞くのが好きだ。


 モーツァルトはいいな。


 聞いてて楽しくなる。


 そして、もう一つの楽しみは『ち○ーる』だ。


 だから、パパさんが動画や写真をあげやすいように色んなポーズをとってやるのさ。


 生徒さんが増えるようにな。


                   おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ