第三十五話
神々しく輝くクリスタルの上。
その輝きを損なわない様。
まるで王冠の様に白銀の建物が鎮座していた。
最上階は彼ら四天王。
その下は枢機卿。
次に各隊長。
そこから下に他の部隊で階をわけている。
たまにその順番で、血の気のあるお話合いがある。
外面は良い集団。
敢えて一番下に教皇。
皆の顔を見れるから、それに楽だろう、と学校の先生の様な発言。
その一つ。
少し離れた所にある建物へと向かう。
温室となっている研究施設。
下の帝都の方が広大ではあるが、こちらも立派。
禁止、要注意、触るな危険等唯一外観が削がれる看板をその草花の間の至る所ところに点在。
その奥。
扉を開ける。途端ツンとした薬品の匂いが立ち込める薄暗い中。若干酔ってふらふらしながら入る紫蘭を引きずりながら「ぺぺー? いるぅ?」と、アルフェルドが研究員の一人を呼んだ。
「ふぁい」ともっと奥から返答。「結果だよね? 出てるヨォ」とピンクのハイライトのかかった茶髪。
しかし髪の梳いていないのかボサボサ。
白衣を萌え袖にした女の子が書類の山と薬棚やビンの中にいた。奥のボードにはこの場に不釣り合いの民族風の写真に二人して映っていた。
彼女の眼鏡の奥。
水色の瞳は虚だったが、彼らを見てぺぺ━━ペペ・アルカツァルコが待ってましたと目を輝かせて、解説し始めた。
「これ、魔石のお薬……お察しの通りね。
といっても、粗悪。やっっすい家畜化した魔物の物を使ってるみたい。
多分、生活水用のすぐ手に入れられるヤツ」
と、的確に指摘。
「でも、変身の魔石もいれてあげてるみたい。あと別のも……。
多分オーガのかもね。あとは……詳しくはもう少し調べるから待って。
魔石自体多分どっかから仕入れたか、弱った鬼人を無理矢理かなあ。他も気になるものはあるけど……下の結果次第」と、矢継ぎ早に説明していく。
「ありがと、ぺぺ。
これ、キャンディー……ここの紫蘭様からだけどね」と、いつの間にか購入していたらしいお土産を渡し解析を済ませたペペを労うアルフェルド。
「へぇ〜。ししょーが?」
「そ。お兄ちゃんのおかげ」
「むぐ」
当の本人は拘束されていて、お礼を言うつもりだったぺぺは奥の方にいた紫蘭本人を見て「……ぅわ」と若干ドン引き。しかしちゃんと御礼は伝えるが水天ではなく「あ、氷天さま、あざ」と、皮肉混じりで呼ぶ。
紫蘭がさっさと解放しろと言う風にアルフェルドに伝える。
「何か言いたい事あるのかしら?」と、アルフェルドが呟きながら、やっと全ての拘束を解いた。
「はぁーーー」と、拘束解除された事と皮肉を言われた紫蘭がため息ついた。そして懐から小袋を取り出す。
「これ、ミゼーアが配っていた薬だ」
一切不機嫌を隠さず懐から出した。
アルフェルドはそれを聞いて紫蘭の肩を叩く。枷をつけたのはおまえだと言わんばかりに目で訴え睨むもアルフェルドはスルーしていく。
「アンタこれ!!!」
「言おうとしたのだがな」
「これも多分同じものじゃない?」と唇を舐め、「調べてみるけど」と、ぺぺ。
「まだ隠してる事ないわよね?」
「な、ないっ」と、ぷいっと顔を背けた。絶対ミゼーアは俺が助ける、とあとは心に秘めておく。
(これはあるけど言いたくないのかしら? それなら、聖女様似のあの女の子関連ね……。あそこまで執着するのなら、そんなに似てるのかしら? 警邏の人たちも上からあの子を監視、保護してくれと言われてたみたいだし……。
その『上』がどこなのか、誰なのかそこだけ聞けばよかったわ。
始末は着けるでしょうし、サポートだけでもしようかしら?)
と、紫蘭が思っている事を察したアルフェルド。
「そ、ならいいわ」と手枷も解いた。
紫蘭は手をにぎにぎして「もういいのか」と聞く。
「聖女様しか嫌なんでしょ?してほしいならしましょうか?」
「いや、次はミゼーアにお願いする。悪くなさそうだ」
「ホント……、変態鳥ですよね、氷天様」と、機器を使いながらイジる。
「ほんとよー手枷までしたから……うきうきよ?」
「言っておくが良い。ミゼーアになら、何されても構わん。
犬になれというならなる。悪にもなろう」
「なって」
「鳥にはなったわね」
と、ぺぺとアルフェルドがいじる。
紫蘭はただミゼーアのことしか見ていないようでただただ願望だけをうっとり垂れ流していく。だから彼らのそれに面倒だとしか思っていないようで「聞いていたか? おまえはミゼーアじゃない」と、目頭を押さえて「おまえたちは面倒くさい」と逃げる様に出ていく紫蘭。
それを見届けてから無言で事を見ていたアスラが、
「あんたら本当にすげーよ」
「あら、アスラちゃんも中々よ?」
「えええ!?」