39 対策会議
リカバリーを使えてしまったことは置いておこう、今は。
これよりもっと大切なことがありまくりなのだ。
それは何かというと、精神状態が完全回復した二人の男冒険者が森の中で見てきた話しを聞いてしまったからである。
そしてこれから、それに対する対策会議が冒険者ギルドにて始まろうとしていた。
まあ、俺はというとリーナに会いに一度ヒヨコ亭に戻ってきているのだけどね。
「リーナ、ユン、ただいま」
ヒヨコ亭の庭のようなところで遊んでいたリーナとユンにただいまの挨拶をする。
「パパ、おかえりっ!」
俺の声にすぐに気がつくと、抱き着いてきた。
「ナギルさん、おかえりなさいです!」
ユンも俺の方に来ながら、いつもどおり元気よくただいまの挨拶を返してくれる。
「ユン、リーナと遊んでくれてありがとう」
ユンの頭をよしよしする。
あ……リーナにしている癖がユンに出てしまった。
まずいと思いながらも、俺はよしよしを続けてしまう。
「あ、あの……恥ずかしいです……」
気が付けば、ユンは顔を真っ赤にさせていたのだ。
「あ、ごめん!」
やっぱり初めてされるのと中学生くらいの年だと恥ずかしいよな。
「そ、その、嬉しかったから謝らなくて大丈夫ですからねっ!」
「うん、それならよかったよ」
やり取りをそんなしていると、リーナが抱き着いている辺りを強く抱き着かれている感覚を感じてしまう。
「リーナ、ごめんね。よしよし、パパはリーナのこと好きだからね」
少し拗ねてしまっているリーナに対して、俺はよしよししながらそんな言葉をかけてあげるのだった。
「うん。リーナもパパ好きだよ?」
最後の疑問形に、この年での好きっていうのと、上から見るリーナのアングル、ものすごく可愛い。
ちなみに心臓とかはドキドキなんかしないからね?
そんなことを思いながらも俺はよしよしを続けていった。
そこからユンに冒険者ギルドに行かないといけないと事情を話して、リーナの面倒をまた見てもらうことを頼んだのだった。
冒険者ギルドに戻ってきた俺。
すでに始まっていた対策会議は、未だに続いている雰囲気があった。
そこからしばらく時間が経つ。
三十分後。
「そういうわけで、森への偵察をすることがが決まってしまった」
「そうなんですね。なんか大変そうですね」
「まあ、大変というか危険だな」
だよね、凄く危険だよね。
うーん、どうするべきなのだろうか。
森の偵察をするってなるとすごく危ない橋を渡ることになりそうだし、なんなら多くの命がその偵察で奪われなくなることになりそうな気がしてならない。
そうなるとその偵察自体やめさせなければならないと思っている。
そうなるとできることは一つしかあがらないし、俺がどうにかしないといけないことになると思う。
己の強さくらい分かりきっているし、俺がこの中で一番強いってことも分かりきっている。
だからこそ、この力を誰かを守るために使わなければいけないんじゃないかってあの時思うことが出来たと思っている。
異世界にやってきた、俺なりのマイペースで生きて、楽しく生きたい。
それにリーナには寂しい思いを、悲しい思いをさせてはいけない。
どうすればいいかの答えを出した俺は心の中で言葉を口にする。
リーナ、少しだけ危ないことするかもだから、ごめんね。
決して届かぬ声で、言葉ではあるが、想いは伝わったんじゃないかって思った。
それにまあ、ユンにも大変な思いをかけちゃいそうだしね。
「あの、ウイゴーンさん。なんの被害も出さずに偵察をする、そんな方法が俺にはあるんですけど」
「そうなのか?」
俺の言葉に耳を傾けるウイゴーンさん。
覚悟を決めている俺は、ウイゴーンさんの目を見て口を開いた。
「はい、あります。それは、俺が偵察をしに行くっていう方法です。自分で言うのもなんなんですが、俺はこの冒険者ギルドの中で一番強いって思ってます。だからこそ俺が偵察をしに行きますよ」
「うむ。ナツナギくんが言うことには私も賛成だ。だが、本当の意味でこの偵察は危険になるぞ? 無事に帰って来れるか?」
声音から俺のことをすごく心配してきているのが伝わってくる。
だけど、俺はすでに覚悟を決めているし、守りたいんだ。
だから俺は、少しだけ笑顔で、
「絶対無事に帰ってきます。待たせている人もいますしね」
ウイゴーンさんにそう言った。
「そうか。ならその言葉を信じて待とう。無茶はするな、無事に帰ってこい」
「分かりました」
そのやりとりを最後に対策会議は幕を引いたのだった。
そして、俺は偵察をするために王都ギルバデンスを出た。




