転生死神、馬にスカウトされる
「おいおい。ひでえなこりゃ。」
そんなことを俺の隣でエドワードが呟く。
俺たちはさっきデカい音がしたところに来てみたわけだが、まあなんともひどい有様だった。どんなもんかというと、小さめの村のような場所に盗賊風の格好をした男たちがそこら中に倒れているのだ。それも頭を砕かれて。なんというか大量殺人の現場を見ているようだ。
「そうだな。っちゅーかこれって何なんだ? やばいモンスターが来たとか?」
俺は目の前に広がる光景を前にして少し引きながらそうエドワードに聞く。
それに対してエドワードは首を振りながら答えた。
「いや、そんなことはないはずだ。ほら、そこの足跡を見てみろ。足跡のサイズが全部人間と同じだろ?」
「それなら人型のモンスターってことは? あれだよあれ。オークとかゴブリンとかいるじゃん。」
「それはないな。ここら辺にはそんな奴ら住んでないし。ここからもう二つくらい離れた町の近くにはそんな奴らが住んでるらしいけど、その町は500キロくらい離れてる移動してきたってこともないだろうからな。」
エドワードはそんなことを言いながら前足で俺の足元を指した。確かに、全部足のサイズが人間だ。
「ってことはこれは全部人間がやったってか? 人同士が争うってのは世界が変われどそれだけは変わらないんだな。」
「全くだ。ワシら馬は一度も争ったことなんてないぞ? そりゃ貴族たちの遊びで足の速さを競わされたりはするけどそれでも結局争ってんのは人間だ。」
そんな風に言いながらエドワードは興味を無くしたように来た道を戻っていく。俺もそれに合わせてエドワードについて行く。俺としてはもう少し調べたいところだったが、俺は町への生き方が分からないから結局ついて行った方が早い。
「それじゃ行くぞ。こんなん見ててもワシが胸糞悪いだけだ。」
エドワードがそんなことを言いながら俺に早く後ろの荷台に乗るように促す。
「分かったよ。俺としては色々気になるがまあ今日は腹も減ってるし町に行くことが優先だな。それじゃ行こうぜ。」
そう言いながら俺はエドワードの荷台に乗る。俺が乗ったのを確認するとエドワードがゆっくりと歩き出した。
やがて、そこの村から出てしばらくすると、よく分からん大きな壁が見えてきた。どこぞの漫画の巨人から町を守るために作られたような壁だ。
「おい。なんじゃありゃ。」
「ああ、ありゃあ大壁門ってんだ。この国ではどんな街にもあんな感じの壁があるぞ? っていうかあーでもしないとモンスターは延々と攻め込んでくるからな。まあ人間にしちゃあ珍しく正しい判断だ。」
エドワードはその大壁門とやらを目を細めながら眺める。その眼には、畏怖とも見える感情が宿っていた。
「へぇ。お前にゃあなんか因縁っぽい奴があるのか?」
「まあな。それもかなり古いやつだな。」
エドワードがそんな曖昧な返しをしながらこっちを向く。「聞かないのか?」とでも言いたげだ。
「聞きはしないさ。なんかめんどくさそうだし、それに思い出したくなかったりもするんだろ?」
「そうか。ありがとよ。」
エドワードはそう短く答えてからまた前を向いた。
それから無言でしばらくエドワードが歩き続けると、またこっちを向いて聞いてきた。
「そういやお前さんはあの町に行ったらなんかすることでもないのか? ないんならワシの御者をやらせてやってもいいんだぞ?」
「いややんねえよ。っちゅーかお前御者なんていらねえだろ? それに俺にはアレがあるんだわ。ほら、アレアレ。」
「アレじゃ分かんねえよ馬鹿野郎。もっと具体的に言えや。」
「いや、アレなんだよ。いい例えが思い浮かばねえ。...そうだ! 使命ってやつだ!」
「使命って普通に重要なことじゃねえかよ。お前そんな大事なことをアレとか言ってると罰当たるぞ?」
エドワードは今度は呆れたように俺にそう言った。そしてその後残念そうに息を吐きながら続ける。
「そんならまあお前の使命をがんばれ。だが、もしその使命を果たしたりその使命に心が折れでもしたら、ワシのところに来いや。お前と話したのは短時間だけだがそれでもお前とは気が合いそうなんだわ。」
「馬に気が合いそうとか言われると結構微妙な気分になるんだがまあ覚えておいてやるよ。」
「おう、ありがとよ。」
俺の答えに満足したように頷いたエドワードは再び前を向いて歩き続けた。
「おい。着いたぞ。」
少しウトウトしだしていた俺にそうエドワードから声が掛かってきた。
気付けば、周りの音も風が通り抜け音からかなり騒がしい音に変わっている。
「ついたって、どこに? 町か?」
「そうだよ。それ以外に何があるってんだよ。」
エドワードはまたもや呆れたように俺にそう言う俺はそれを聞いて荷台の扉を開けた。
「へぇ。」
俺はその扉の向こうの光景を見て、思わず声を漏らした。
そこには、中世の街並みのような景色が広がっていたからだ。建物は基本レンガ造りだし、屋根は全部レンガの瓦だ。だが、道行く人々は異世界って感じがするような格好だ。たった今エルフっぽい人が荷台の横を通り過ぎたし、道の向こう側にはどっかの漫画のような大剣を背負っている人もいる。
「そうかい。それじゃありがとな。」
俺はそうエドワードに礼を言ってから町に歩き出そうとした。すると、エドワードが口で俺の服の襟首を噛んで止めた。
「なんだよ。まだなんかあんのか?」
「まあそんなこと言うなって。それよりこれを持ってきな。これは、この前えらく美人な剣闘士が持ってた帽子なんだがそいつはこの帽子を忘れていってな。」
そう言いながらエドワードは器用に口で荷台から一つの帽子をくわえて俺の頭に被せた。
「まあこりゃ選別ってやつだかなり上等なもんらしいから使わなくても持つだけ持っとけ。」
「へえ。そりゃありがてえ。お前最初は生意気な馬だと思ったんだがいいとこあるじゃんか。」
「うるさい。それより早く行けよ。そしてさっさと使命を早く終わらせて来い。」
「おうよ。お前には言われたくないけどありがとな。」
俺はそう再びエドワードに礼を述べると、エドワードに背を向けながら歩き出した。
それと同時に、後ろから声が掛かってきた。
「おいそこのあんた! そこの鎌担いでる兄ちゃん! ...いや違う、あんたは呼んでない。あんたが担いでるのはカマだ。っていうかなんでそんなん担いでんだよ。」
俺はその声をした方を向くと、そこには蛍光色の男三人衆がいた。そいつらはかなり焦っているらしく、体中汗はだらだら、服も乱れまくりだ。
そしてその三人衆の奴らのうち緑色をしたやつが俺に向かって言った。
「あんた、結構強いな? 特にその鎌、ここらじゃ全然見れないような代物だ。それであんた、頼みたいことがあるんだ。」
「んだよお前。人に向かってズケズケと図々しいな。」
「す、すまない。で、その頼みってやつなんだが...。」
俺の文句を見事に流したその緑は、一拍置くと口を開いた。
「あんたに助けてもらいたい女がいるんだ。」
どうも、ドスパラリンチョです。
まあね、今回も眠くて眠くてかなりひっちゃかめっちゃかになってるかもしれないっすわ。
サリ裏で配信やってる人のところに遊びに行ってただけなんだがなあ。
それじゃあ内容の解説、行ってみよう!
今回は、サリエット編とは違ってかなりまったりした感じになっております。
そして、やっと次回で康弘編終わるかもねって感じでっせ。
それじゃ、今日はここらへんで終わります。
読んでくれた方、ありがとうございました!




