第10話 前編
七大貴族の二人目、ロン・アグタルを殺害した。
ここにはもう用がないため、私達は屋敷の出口へと向かう。
その途中、室内各所から炎が噴き上がった。
揺らめく業火はたちまち屋敷全体を包み込むように焼いていく。
ノルがやれやれとため息を吐いた。
「おいおい、どこの馬鹿がやったんだぁ?」
「変だ。屋敷には消火用の魔道具が設置されているが機能していない」
サリーアが怪訝そうに述べる。
一方、私はこの光景に既視感を覚えていた。
「――まさか」
私は神経を研ぎ澄ませて探知を行う。
燃え盛る屋敷の奥に、不審な反応があった。
それを認識した私は即座に炎の中へ飛び込み、最短距離で現場へと向かう。
「ちょっ、旦那!? おい、どこに行くんだっ!」
後方でノルの声がするが気にしている余裕はない。
進路上の壁を切り崩しながら進むと、そこには三人の黒づくめの男達がいた。
私の家族を殺した張本人である。
三人は駆け付けた私に視線を向けてきた。
「……ほう」
「見つかったか」
「よう、爺さん。よくも俺の首を折ってくれたな」
前に進み出てきた者の気配には覚えがある。
目の前で息子を殺し、そして私自身が殺したはずの男だった。
「なぜ生きている……」
「残念だったな、俺の肉体は死んでも復活できる特別製さ。あんたはまだ一人の仇も取れてないってわけだ。あの時は魔力がないから、俺の演技に騙され――」
得意げな男に跳びかかって影の刃を振り下ろす。
斬撃は男の胸と顔面を深く切り裂くも、動きを止めることは叶わなかった。
驚きながら後ずさった男は、己の傷をそっと撫でる。
与えたばかりの致命傷が、白煙を発しながら塞がっていく。
いとも簡単に回復した男は私に抗議する。
「危ねえな。死んじまうだろうが!」
「再生能力なら、魔力が枯渇するまで殺してやる」
私は床を這うような姿勢から刺突を繰り出した。
それを他の男達が防御する。
私は接触と同時に影と闇の混合物を撒き散らした。
男達はすぐさま飛び退いて射程外へと逃れる。
「……厄介だ」
「この前とはまるで違う。さすが伝説の暗殺者だ」
「お前らちゃんと殺しとけよなー。おかげで計画が滅茶苦茶じゃねえか」
男の一人が腕を振るう。
すると彼らの姿がぐにゃりと歪み出した。
「……カイド・モータル。再会の時を心待ちにしている」
「待てッ」
私は必死に手を伸ばす。
しかし男達に届くことはなく、三人の姿は忽然と消えてしまった。




