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結果

 犯罪歴の有る湯利がイギリスに移住するのではなく問題の無いジョンが日本に移住する。湯利はテロ組織を結成しているわけでも武器を所持しているわけでもない。日本の公安警察が湯利をしっかり監視して入国管理局がジョンの身元を確実に保証すれば問題はない。資料を各当局に提出したアリスは主張した。湯利が国外逃亡する危険性は極めて低い。中村一家とコール一家の信頼を得ている。独善的で攻撃的な思想と言動は収まっている。密偵防止法が無くても湯利の監視を続ければ再犯の危険性は非常に低い。各当局に報告しながら賢市は主張した。


 ジョンと湯利に肩入れする傾向はあるがアリスも賢市も決して無能ではない。湯利は戦闘経験の無い四十歳前のアジア女性。日本ではなかなか拳銃を所持できない。米軍基地への襲撃も偏った政治思想ではなく希死念慮からである。イギリスに対する脅威がなければ湯利を積極的に排除する必要は無い。他に警戒すべき脅威は沢山ある。MI6も移民局も内務省もアリスと賢市の報告をまとめて議会や司法に提出した。議会も司法も日本側が湯利の監視を強化しジョンの身分を保証するならば婚姻を認めるとした。同時に湯利のイギリス入国は制限される。コール夫婦とは基本的にビデオ通話で済ませる。どうしても入国の必要性が有るならばMI6が厳重警戒で監視する。


 公安からの報告を聴いた外務省と入国管理庁は動揺した。イギリス側が条件付きで認めているので無下に断れない。だが湯利は米軍基地を襲撃したテロリストだ。アメリカを刺激したくはない。移住してくるジョンにも抵抗を覚える。邦人や在日外国人と摩擦を起こさずに自活できるのか。日本政府や日本社会を罵倒して問題行動を起こさないのか。外務省も入国管理庁も公安に小言を言うとアメリカの国務省とCIAに打診した。国務省もCIAも既に知っていたし、日本側の打診も予測していた。


 アメリカ側は意外にも湯利とジョンの婚姻を認めた。しかし密偵防止法の無い日本の公安警察による監視だけでは心許ないのでCIAが湯利のスマホとパソコンを定期的にハッキングして監視することを条件にした。


 賢市とアリスは結果を本人達に伝えた。湯利は驚きジョンは喜んだ。ジョンは既に移住の計画を建てていた。前職で知り合った日本人に就職の相談をしたり、どんな料理店が日本人に受け入れられるか分析したり、同人誌やコミケで活躍する日本のオタク仲間に知人を紹介したり模索していた。


 結局、漫画オタクでもある情報技術業界で会社を起ち上げていた日本の知り合いがジョンを従業員として雇った。通訳や未経験の新入社員に基本を教える役として重宝した。ビザ収得にも協力した。湯利も作業所に相談して障碍者雇用に挑戦した。結局はNPO法人に雇われて外国人に竹籠の編み方や日本語を教えることになった。週五日の一日六時間労働。作業所よりも労働量が多くなったが重労働でもない。二年ほど月日が経ってジョンは日本に移住した。


 湯利とジョンは四十歳になってやっと結婚した。中村夫婦と食事しただけで式を挙げなかった。湯利は老い始めた自分に引け目を感じたが、ジョンは笑顔で、

「俺は君を容姿で選んだわけじゃない」

 と、励ました。


 遠目で賢市はニコリと笑みを浮かべる。

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