第48話 第三回大型アップデート
翌日の土曜日。
午前十時過ぎ。
《ファンタズマ・ゲイト》にログイン。
北側の村。
集会場。
「おはようございます!」
「おはよう」
「おはよ~」
「おう」
今日は全員いる。
たると。
ハヤテ。
リンファ。
セリア。
シズク。
マルコ。
ゴウマ。
そして。
俺。
《王虎の牙》。
八人。
「ガウ!」
ハヤテがこっちを見る。
「昨日は残業お疲れ!」
「どうも」
「気合いで倒せたか?」
「倒せなかったよ」
「気合いが足りねえ!」
「仕事だからね」
「ガウ、ちゃんと寝ましたか?」
たるとが心配そうに聞いてくる。
「寝たよ」
「何時ですか?」
「一時くらいかな」
「遅いです!」
「土曜日だから」
「そういう問題じゃありません!」
怒られた。
お母さんみたい。
「それより!」
ハヤテがテーブルを叩く。
「来たぞ!」
「何が?」
「アップデート!」
「ああ」
そういえば。
昨日。
帰ってからログインした時にそんな話をしてた気がする。
疲れてたからあんまり覚えてない。
「今回、すごいみたいですよ!」
たるとも嬉しそう。
「へえ」
メニューを開く。
公式のお知らせ。
《次回大型アップデートのお知らせ》
「…………」
《ファンタズマ・ゲイト》が発売されて。
もうすぐ二ヶ月。
これまでにもアップデートはあった。
第二階層の追加。
ギルド機能。
建築。
生活系。
新しいスキル。
色々増えた。
今回もそんな感じだと思っていた。
「まずこれ見ろ!」
ハヤテが言う。
「第三階層から第十階層まで追加だってよ!」
「…………」
え?
もう一度。
お知らせを見る。
《第三階層~第十階層の追加》
「…………」
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
十。
「八個?」
「八個だ!」
「一気に?」
「一気に!」
「…………」
何してるの?
運営。
「すごいですね!」
たるとが目を輝かせている。
「新しい場所がいっぱいです!」
「いっぱいって量じゃねえだろ」
マルコが呆れている。
「まだ発売して二ヶ月くらいだぞ?」
「運営さん大丈夫かな~」
セリアが言う。
「寝てるのかな~?」
「そこを心配するんだ」
確かに。
八階層を一気に追加。
普通に考えたらすごい量だ。
「これって第十階層まで一気に行けるの?」
俺が聞く。
「いや」
ハヤテが説明を読む。
「今まで通りみたいだな。 階層守護者を倒したら次の階層が解放される」
「じゃあ第二階層を攻略しないと第三階層には行けないんだ」
「そういうことだ!」
「なるほど」
「つまり!」
ハヤテが立ち上がる。
「第二階層に行こうぜ!!」
「アップデートの話を先にしましょう」
シズク。
「はい」
ハヤテが座った。
「他にもかなりありますね」
リンファがお知らせを見ている。
《NPC行動AIの大幅調整》
《クエストシステムの拡張》
NPCが今までよりも色々な行動をするようになるらしい。
さらに。
世界の状況。
NPCとの関係。
プレイヤーの行動。
そういうものによって。
発生するクエストが変化する。
「へえ」
面白そう。
「NPCの人たちがもっと自由に動くってことですか?」
たるとが聞く。
「そうみたいだね」
「すごいです!」
たるとはこういうの好きそう。
というか。
この村に来てからずっとNPCと遊んでるし。
「クエストも増えるみたいですね」
シズクが言う。
「固定されたものだけではなく、状況に応じて発生するものも追加されるようです」
「この前の洞窟みたいなの増えるのかな~」
セリア。
「ありそうだね」
ロウガさんに頼まれて。
東の洞窟に行って。
隠しダンジョンを見つけた。
ああいうのが増えるなら楽しそう。
「次!」
ハヤテが勝手に進める。
《ギルド機能の拡張》
「ギルドクエストだってよ!」
「ギルド単位で受けるクエストみたいですね」
たるとが読む。
「複数人での攻略を推奨する高難易度クエストも追加……」
「やろうぜ!」
「いいですね!」
「お」
たるとが乗った。
「第二階層は?」
「それは後からですね!」
「また行かないやつじゃん」
「行きますよ!」
何回聞いたかな。
これ。
「ギルド倉庫も追加されるみたいよ」
リンファ。
「それは便利そう」
買い出しした物。
素材。
装備。
今はそれぞれが持ってたり、家に置いてたりする。
共有出来るならかなり楽になる。
そして。
「…………!」
たるとの目が見開いた。
嫌な予感。
「どうしたの?」
「建築機能が!」
やっぱり。
《生活・生産・建築コンテンツの追加》
新しい家具。
建築素材。
建築パーツ。
料理。
裁縫。
鍛冶。
錬成。
その他。
色々。
「屋根が増えてます!」
「屋根?」
「見てください!」
たるとが見せてくる。
「この屋根かわいくないですか!?」
「うん」
「こっちも!」
「うん」
「窓も増えてます!」
「そうだね」
「扉も!」
「たると」
「はい?」
「まだアップデートの話してるから」
「…………」
「あ」
戻ってきた。
「裁縫もかなり増えるみたいね」
リンファが楽しそうに言う。
「新しい糸もあるみたい」
「また作るの?」
「もちろん」
「錬成も増えるんだね~」
セリア。
「魔法関係あるかな~」
「危ない実験はやめてくださいね」
「まだ何もしてないよ~」
シズク。
早い。
「フィールドにも変更がある」
ゴウマが言った。
《フィールド環境・生態系システムの拡張》
天候。
時間。
魔物の生息域。
行動。
色々なものが今まで以上に変化するらしい。
「魔物が移動するのか?」
マルコ。
「そう書いてあるな」
ゴウマが頷く。
「縄張りも変化するらしい」
「へえ」
面白そう。
いつも同じ場所に同じ魔物がいるわけじゃなくなる。
狩り方も変わるのかな。
「…………」
それにしても。
多い。
新しい階層。
NPC。
クエスト。
ギルド。
生活。
建築。
フィールド。
本当に何があったんだろう。
「運営、本気だな!」
ハヤテは楽しそう。
「本気っていうか……」
マルコが呟く。
「これ全部一回のアップデートでやるのか?」
「そうみたいだね」
「すげえな」
うん。
すごい。
そして。
「あ」
シズクが声を出した。
「まだあります」
「まだあんの!?」
マルコが驚く。
「一番下です」
見る。
《新システム》
その下。
《ギルドランキング》
「…………」
ギルドランキング?
「なんでしょうか?」
たるとが首を傾げる。
「ギルドの順位じゃねえか!?」
ハヤテ。
嬉しそう。
すごく。
嬉しそう。
嫌な予感がする。
説明を読む。
《ギルドランキング》
ギルド同士による。
チーム対抗戦。
専用フィールドで戦い。
勝敗に応じてランキングが変動。
参加は任意。
「対人戦か」
ゴウマ。
「みたいだね」
「面白そうじゃねえか!」
ハヤテ。
やっぱり。
「人数は?」
マルコが聞く。
「えっと……」
たるとが読む。
「五人一組みたいです」
五人。
俺たちは八人。
「三人余るね」
「交代で出ればいい!」
ハヤテ。
もう出る気だ。
「勝敗条件は相手チームの全滅」
シズクが続ける。
「決闘システムを利用するみたいですね」
なるほど。
決闘のチーム版か。
魔法石がダメージを肩代わり。
壊れたら脱落。
最後まで残った方が勝ち。
単純。
「やろうぜ!」
ハヤテが立ち上がる。
「嫌だよ」
「まだ何も言ってねえだろ!」
「言ったじゃん」
「ランキング戦やろうぜ!」
「ほら」
「なんでだよ!」
「だって」
俺たち。
まだ。
「第二階層にも行ってないじゃん」
「関係ねえ!」
あると思う。
「でも楽しそうですね!」
たると。
「え?」
やるの?
「みんなで戦うんですよね?」
「そうだけど」
「一回くらいやってみたいですね!」
「よし!」
ハヤテが拳を握る。
「たると分かってる!」
「一位を目指すんですか?」
「もちろん!」
「それはいいです!」
「なんで!?」
たるとは笑う。
「順位は別にいいじゃないですか」
「よくねえ!」
「みんなで楽しく遊べればいいです!」
「一位になったらもっと楽しいだろ!」
「そうでしょうか?」
「そうだ!」
「私は別に興味ないわね」
リンファ。
「私も~」
セリア。
「私も順位には興味ありません」
シズク。
「俺も特には」
ゴウマ。
「俺も」
マルコ。
ハヤテが俺を見る。
「ガウ!」
「興味ない」
「なんでだよ!!」
七対一。
「お前ら!」
ハヤテがテーブルを叩く。
「ギルドランキングだぞ!?」
「うん」
「最強のギルドを決めるんだぞ!?」
「うん」
「燃えないのか!?」
「別に」
「燃えろよ!!」
うるさい。
でも。
チーム戦か。
一回くらいなら面白いかもしれない。
「じゃあ!」
ハヤテが言う。
「アップデート来たらランキング戦な!」
「第二階層は?」
「…………」
止まった。
「ハヤテ?」
たるとが首を傾げる。
「…………ランキング戦の後!」
「また後回しじゃん」
「行くって!!」
笑い声。
《ファンタズマ・ゲイト》が発売されてもうすぐ二ヶ月。
世界は一気に広がるらしい。
第三階層。
第四階層。
第五階層。
第六階層。
第七階層。
第八階層。
第九階層。
第十階層。
最強のギルドを決める。
ギルドランキングまで始まる。
「絶対一位取ろうぜ!」
「だから目指さないって」
「なんでだよ!」
そんな俺たちは今日も第一階層にいた。
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